カテコラミン製剤投与中の心臓リハビリ
新人PTが知っておきたい安全な介入方法と注意点
カテコラミン製剤が投与されている患者さんを担当すると、
「リハビリをしても大丈夫?」
「歩かせていいの?」
「どこまで負荷をかけていい?」
と悩む新人PTは少なくありません。
実際には、カテコラミン投与中=リハビリ禁止ではありません。
現在の急性期医療では、全身状態を評価しながら早期離床を進めることが推奨されています。
一方で、循環動態が不安定な患者さんも多いため、「できるかどうか」ではなく「安全にできるかどうか」を判断することが重要です。
今回は、カテコラミン投与中のリハビリで新人PTが押さえておきたいポイントを解説します。
なぜカテコラミン投与中でもリハビリを行うの?
急性心不全や術後患者では、長期間ベッド上で安静にすると、
筋力低下
廃用症候群
起立性低血圧
ADL低下
退院後の生活機能低下
につながります。
そのため、循環動態が安定していれば、できるだけ早期から離床を進めることが重要です。
ただし、薬によって血圧や心拍数が維持されている状態であるため、「薬が入っているから大丈夫」と考えるのではなく、「薬が必要な状態」であることを忘れてはいけません。
リハビリ開始前に必ず確認すること
介入前には、以下の情報を確認します。
① カテコラミンの種類
ドブタミン
ドパミン
ノルアドレナリン
アドレナリン
どの薬を使用しているかによって、循環動態への影響が異なります。
② 投与量
新人PTが特に見るべきなのは、
「量」よりも推移です。
例えば、
昨日より減量している
数時間変化なく安定
朝から増量された
では意味が大きく違います。
特に、
増量が必要になっている患者は循環が不安定である可能性が高く、慎重な判断が必要です。
③ バイタルサイン
血圧
心拍数
SpO₂
呼吸数
体温
だけではなく、
尿量
意識レベル
呼吸苦
浮腫
冷汗
なども重要な情報になります。
④ 心電図モニター
新しい不整脈
PVC増加
VT
ST変化
がないか確認します。
リハビリの進め方
Step1 ベッド上運動
循環が安定していれば、
まずは
足関節運動
ROM運動
深呼吸
軽い筋収縮運動
から開始します。
ここで症状が出るようであれば離床は延期します。
Step2 ベッドアップ・端座位
まず確認するのは
血圧低下がないかです。
端座位で
めまい
冷汗
顔面蒼白
血圧低下
があれば中止を検討します。
端座位保持が5〜10分安定すれば次の段階へ進みます。
Step3 立位
立位では、
心拍数
血圧
呼吸状態
を継続して観察します。
ノルアドレナリン投与中では急激な体位変換で循環変動が起こりやすいため、ゆっくり立位へ移行します。
Step4 歩行
歩行開始前には
自覚症状
バイタル
モニター
を再確認します。
最初は病室内歩行や数メートル程度から開始し、
状態が安定していれば病棟歩行へ進めます。
ガイドラインからみたカテコラミン投与中のリハビリ
日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会の**「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年改訂版)」**では、カテコラミン投与中であることだけを理由にリハビリを禁止するとは記載されていません。
重要なのは、循環動態が安定しているかどうかを総合的に評価することです。
・リハビリ開始を検討できる状態
以下の項目を満たしている場合は、医師・看護師と連携しながら離床を検討します。
血圧が大きく変動していない
心拍数が安定している
重篤な不整脈がない
呼吸状態が安定している
SpO₂が保たれている
カテコラミン投与量が維持または減量傾向である
新たな胸痛や心筋虚血所見がない
意識レベルが安定している
特に重要なのは、投与量そのものよりも「増量中か、維持中か、減量中か」という推移です。
増量が必要な患者は循環動態が不安定である可能性が高く、積極的な離床は慎重に判断します。
ICU早期離床の考え方
近年はICU-AW(集中治療後筋力低下)の予防を目的として、循環が安定していればカテコラミン投与中でも早期離床が推奨されています。
ただし、以下のような状態では離床を延期または中止することが推奨されます。
カテコラミンが急速に増量されている
平均血圧(MAP)が65 mmHg未満、または維持できない
重篤な不整脈が持続している
急性冠症候群で胸痛や虚血症状が持続している
呼吸状態が急速に悪化している
ショック状態が持続している
リハビリ中止基準
ガイドラインでは、運動中に以下の変化がみられた場合は、運動の中止や医師への報告を検討します。
収縮期血圧が20 mmHg以上低下する
著しい血圧上昇(例:収縮期血圧220 mmHg以上、拡張期血圧120 mmHg以上)
新たな胸痛や虚血症状
重篤な不整脈の出現
強い呼吸困難(Borgスケール17以上を目安)
SpO₂が90%未満、または運動前から4%以上低下
めまい、失神前症状、冷汗、顔面蒼白
医療スタッフが危険と判断した場合
リハビリ中に必ず観察するポイント
リハビリ中は、数値だけでなく患者さんの様子をよく観察します。
確認する項目は、
血圧
心拍数
SpO₂
呼吸数
息切れ
Borgスケール
顔色
冷汗
胸痛
動悸
めまい
心電図モニター
疲労感
特に、
「いつもと違う」
という変化を見逃さないことが重要です。
リハビリ中に必ず観察するポイント
リハビリ中は、数値だけでなく患者さんの様子をよく観察します。
確認する項目は、
血圧
心拍数
SpO₂
呼吸数
息切れ
Borgスケール
顔色
冷汗
胸痛
動悸
めまい
心電図モニター
疲労感
特に、
「いつもと違う」
という変化を見逃さないことが重要です。
まとめ
カテコラミン製剤投与中でも、全身状態が安定していればリハビリは十分実施可能です。
重要なのは、薬剤名だけで判断するのではなく、投与量の推移・循環動態・症状・心電図変化を総合的に評価することです。
新人PTは「この薬だから危険」と考えるのではなく、「この患者さんは今どの程度安定しているのか」を常に考えながら介入する習慣を身につけましょう。それが、安全で質の高い心臓リハビリにつながります。
※補足
『2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン』では、カテコラミン投与量による一律の可否基準は示されていません。投与量の数値目安は、ICU早期離床に関する国内外のプロトコールや専門施設の運用を参考にしているものであり、施設ごとの基準に従う必要があります。
