COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは?
〜息切れと上手に付き合うために知っておきたい病気〜
「少し歩いただけで息が切れる」
「階段を上るのがつらい」
「年齢のせいだから仕方ない」
そう思っている方の中には、**COPD(慢性閉塞性肺疾患)**という病気が隠れていることがあります。
COPDは日本に約500万人以上いると推定されていますが、実際に診断・治療を受けている人は一部とされ、多くの人が気づかずに生活しています。
今回は、新人理学療法士や患者さん向けに、COPDについてわかりやすく解説します。
COPDとは?
COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)は、日本語で慢性閉塞性肺疾患と呼ばれます。
主に長年の喫煙などによって肺が傷つき、空気の通り道(気道)が狭くなったり、肺胞が壊れたりする病気です。
特徴は
息が吐きにくい
息切れが徐々に進行する
完全には元に戻らない
という点です。
「治らない病気」ではありますが、適切な治療やリハビリによって症状の進行を遅らせ、生活の質を保つことができます。
COPDはどんな病気?
COPDは大きく2つの変化が起こっています。
① 気道が狭くなる(慢性気管支炎)
気道に炎症が起こり
痰が増える
咳が続く
空気の通り道が狭くなる
ため、空気がスムーズに流れません。
② 肺胞が壊れる(肺気腫)
肺胞は酸素と二酸化炭素を交換する場所です。
しかしCOPDでは
肺胞の壁が壊れる
肺がゴムのような弾力を失う
息を吐き切れない
状態になります。
その結果、
肺に空気が残ったままになり、新しい空気を吸い込みにくくなります。
なぜ息切れするの?
正常な肺では
吸う
↓
十分に吐く
↓
また吸う
という流れです。
しかしCOPDでは
吸う
↓
十分に吐けない
↓
肺に空気が残る
↓
さらに吸いづらくなる
という悪循環になります。
これを**エアトラッピング(Air trapping)や肺の過膨張(Hyperinflation)**といいます。
この状態になると、呼吸筋が働きにくくなり、少し動いただけでも強い息切れを感じます。
COPDの主な原因
最も多い原因は
喫煙
です。
日本では約90%が喫煙歴と関係するといわれています。
そのほか
受動喫煙
大気汚染
粉じん
化学物質
遺伝(α1アンチトリプシン欠損症)
なども原因になります。
主な症状
COPDでは徐々に症状が進行します。
初期
朝の咳
痰が増える
進行すると
歩くと息切れ
階段がつらい
着替えでも苦しい
疲れやすい
さらに進行すると
安静でも息苦しい
酸素療法が必要になることもあります。
増悪(急に悪くなる状態)
COPDでは
風邪
インフルエンザ
肺炎
などをきっかけに急激に悪化することがあります。
これを
COPD急性増悪
と呼びます。
症状は
息切れが急に悪化
咳が増える
痰が増える
痰の色が黄色や緑になる
発熱
などです。
増悪を繰り返すほど肺機能は低下しやすいため、早めの受診が重要です。
COPDの検査
最も重要なのは
スパイロメトリー(呼吸機能検査)
です。
特に
FEV1/FVC(1秒率)
が70%未満でCOPDが疑われます。
その他
胸部レントゲン
CT
血液検査
酸素飽和度(SpO₂)
動脈血ガス
なども行われます。
COPDの治療
COPD治療で最も重要なのは
禁煙
です。
禁煙だけでも病気の進行を大きく抑えることができます。
薬物療法
主に吸入薬を使用します。
代表的には
LAMA
LABA
ICS(必要時)
があります。
吸入方法が間違っていると十分な効果が得られないため、指導が重要です。
ワクチン
感染予防も重要です。
インフルエンザ
肺炎球菌
新型コロナ
などのワクチン接種が推奨されます。
在宅酸素療法(HOT)
酸素不足が強い場合には
在宅酸素療法が導入されます。
酸素は苦しさを減らすだけでなく、生存率の改善にもつながることがあります。
呼吸リハビリテーションとは?
COPDでは薬だけでは十分ではありません。
そこで重要なのが
呼吸リハビリテーション
です。
目的は
息切れを減らす
運動能力を高める
ADLを改善する
増悪を予防する
QOLを向上させる
ことです。
理学療法で行うこと
有酸素運動
代表例
歩行
エルゴメーター
トレッドミル
運動を続けることで
息切れ軽減
持久力向上
筋力低下予防
が期待できます。
筋力トレーニング
COPDでは脚の筋肉が低下しやすくなります。
そのため
スクワット
レッグプレス
椅子立ち上がり
などが有効です。
呼吸練習
代表的なのが
口すぼめ呼吸
ゆっくり口をすぼめて息を吐くことで
空気が吐きやすくなる
呼吸が楽になる
過膨張を軽減できる
ことがあります。
腹式呼吸
横隔膜を効率よく使う呼吸法です。
ただし、COPD患者さん全員に適しているわけではなく、呼吸パターンや症状に応じて選択することが大切です。
新人PTが評価で見るポイント
COPD患者さんでは以下を確認しましょう。
呼吸数
SpO₂
呼吸パターン
胸郭の動き
呼吸補助筋の使用
Borgスケール
歩行能力
6分間歩行試験(6MWT)
握力
下肢筋力
栄養状態
ADL
増悪歴
また、運動中はSpO₂だけでなく、息切れの程度(Borgスケール)や自覚症状も合わせて評価することが重要です。
COPD患者さんへの生活指導
毎日の生活で意識したいことは
禁煙を続ける
毎日少しずつ運動する
感染予防を徹底する
栄養をしっかり摂る
息切れが強くなったら早めに受診する
ことです。
「苦しいから動かない」のではなく、無理のない範囲で体を動かし続けることが、身体機能の維持や生活の質の向上につながります。
まとめ
COPDは、喫煙などが原因で肺に慢性的な障害が起こり、息切れや咳、痰が続く病気です。一度傷ついた肺を元に戻すことは難しいですが、禁煙・適切な吸入治療・呼吸リハビリテーションによって症状の進行を抑え、日常生活をより快適に送ることができます。
理学療法士は、運動療法や呼吸指導だけでなく、患者さんが「動ける自信」を取り戻せるよう支援する重要な役割を担っています。COPDは薬だけで管理する病気ではなく、運動や生活習慣の改善を組み合わせることで、長く自分らしい生活を続けられる可能性が高まります。
