CABG後の心臓リハビリ(新人PT・患者向け)
〜手術後の回復を支える“もうひとつの治療”〜
冠動脈バイパス術(CABG)は、狭くなった冠動脈の先に新たな血流の通り道を作る手術です。重症の狭心症や心筋梗塞、複雑病変を持つ冠動脈疾患に対して行われ、症状改善や予後改善が期待されます。
ただ、CABGは「血流を改善する治療」であり、体力や筋力、日常生活能力まで自動的に回復するわけではありません。
そこで重要になるのが、術後の"心臓リハビリテーション"です。
心リハでは、身体機能の回復だけでなく、再発予防や生活習慣改善まで含めた包括的なサポートを行います。
CABG後に起こりやすい問題
CABG後の患者さんは、手術侵襲や安静の影響によってさまざまな身体変化を起こします。
代表的なのは、
体力低下
呼吸機能低下
筋力低下
術後疼痛
不整脈
活動量低下
などです。
特に開胸手術では胸骨正中切開を伴うことが多く、胸部痛によって深呼吸や咳を避けてしまう患者さんも少なくありません。その結果、痰が溜まりやすくなり、無気肺や肺炎につながることがあります。
そのためCABG後は、できるだけ早期から呼吸練習や離床を進めていきます。
術後早期のリハビリ
術後早期は、まず呼吸状態の改善と離床が中心になります。
深呼吸や排痰練習を行いながら、ベッド上運動、端坐位、立位、歩行へと段階的に進めていきます。
早期離床は、肺合併症予防だけでなく、廃用症候群やADL低下の予防にも重要です。
また、CABG後は心房細動などの術後不整脈が比較的多くみられるため、運動時には心拍数や血圧、自覚症状を確認しながら慎重に進めます。
動悸や胸部症状、血圧低下、強い息切れなどがある場合は、運動負荷を調整する必要があります。
胸骨正中切開後の注意点
CABGでは胸骨を切開しているため、術後しばらくは胸骨保護が必要になります。
一般的には術後3ヶ月程度、胸骨癒合を考慮しながら生活指導を行います。
たとえば、
両手で強く身体を支える
重い物を持つ
急激に体をひねる
といった動作には注意が必要です。
ただし近年では、必要以上に動作を制限しすぎないことも重要とされています。疼痛や創部状態を確認しながら、安全に日常生活を拡大していくことが大切です。
回復期の運動療法
状態が安定してくると、有酸素運動を中心とした運動療法を行います。
歩行や自転車エルゴメータなどを用い、Borg scale 11〜13程度を目安に運動を進めることが多く、症状や血圧反応をみながら調整します。
また、CABG後は筋力低下も起こりやすいため、病状が安定していればレジスタンストレーニングも取り入れていきます。
筋力トレーニングは単に筋力を戻すだけでなく、
ADL改善
QOL向上
フレイル予防
にもつながります。
CABG後こそ“再発予防”が重要
CABGを受けると、「もう治った」と感じる患者さんも少なくありません。
しかし、CABGは動脈硬化そのものを治す治療ではありません。
そのため、退院後も再狭窄や新規病変を防ぐために、
運動習慣
食事管理
禁煙
服薬継続
などが非常に重要になります。
心臓リハビリでは、運動療法だけでなく、疾患教育や生活指導、心理面へのサポートまで含めて介入していきます。
まとめ
CABG後の心臓リハビリでは、呼吸機能改善や早期離床、運動療法を通して、安全な身体機能回復を目指します。
さらに、退院後の生活習慣改善や再発予防も重要な目的のひとつです。
CABGはゴールではなく、新しい生活のスタートです。
術後の心リハは、その後の人生をより長く、より良いものにするための大切な治療といえます。
次回より疾患については一旦離れ、臨床で疑問に思ったことや大切なことをお伝えしていけたらと思っています。
