心臓リハビリの有酸素運動とは?
~安全に体力を取り戻すための基本~
「心臓が悪いのに運動して大丈夫なの?」
心臓リハビリを始める患者さんから最も多く聞かれる質問です。
昔は心臓病になると安静が第一と考えられていました。しかし現在では、適切な有酸素運動は薬物療法と並ぶ重要な治療の一つとされています。
有酸素運動を継続することで、体力や心肺機能の向上だけでなく、再入院や死亡率の低下、生活の質(QOL)の改善にもつながることが分かっています。
今回は、新人PTや患者さん向けに、心臓リハビリで行う有酸素運動について「種類」「時間」「頻度」「強度」の4つに分けて解説します。
有酸素運動の種類
心臓リハビリでは、患者さんの病状や体力に合わせて運動を選択します。
入院中
病棟歩行
トレッドミル
自転車エルゴメーター
階段昇降
屋外歩行(退院前評価)
急性期は安全性を最優先に、軽い運動から段階的に進めていきます。
退院後
ウォーキング
自転車
エアロバイク
水中歩行
軽いジョギング(医師の許可がある場合)
退院後は、自宅でも継続しやすい運動を選ぶことが大切です。
有酸素運動の時間
運動時間は体力や病状に合わせて徐々に延長します。
入院中
5~10分程度から開始し、状態が安定すれば20~30分程度まで延長します。
退院後
1回30~60分程度が目安です。
運動前後には5~10分程度のウォーミングアップ・クールダウンを行い、急激な心拍数や血圧の変化を防ぎます。
有酸素運動の頻度
運動は継続することが最も重要です。
入院中
状態が安定していれば週5~7日程度実施します。
退院後
週3~5回以上を目標とし、可能であれば毎日身体を動かす習慣をつけることが理想です。
有酸素運動の強度
心臓リハビリでは「頑張り過ぎない運動」が基本です。
入院中
Borgスケール11~13(楽~ややきつい)
会話ができる程度の息切れ
CPXを実施している場合はAT心拍数を参考に運動処方
運動中は血圧、心拍数、SpO₂、自覚症状を確認しながら安全に進めます。
退院後
Borgスケール11~13を維持
最大心拍数の50~70%程度
CPXを実施している場合はAT心拍数を目安にする
「少し物足りない」と感じる程度の運動を継続することが、安全で効果的な運動療法につながります。
運動を中止すべき症状
運動中に以下の症状がみられた場合は、すぐに運動を中止し、医療スタッフまたは主治医へ相談しましょう。
胸痛
強い息切れ
めまい・ふらつき
冷や汗
強い動悸
失神しそうな感覚
強い疲労感
無理をすることは、心臓への負担を増やしてしまうため注意が必要です。
新人PTが押さえておきたいポイント
有酸素運動は「運動を行うこと」が目的ではなく、安全に運動を継続し、身体機能や生活の質を改善することが目的です。そのため、新人PTは運動量だけではなく、患者さんの全身状態を総合的に評価しながら介入することが重要です。
① 運動前の評価を必ず行う
運動を開始する前に、以下の項目を確認しましょう。
バイタルサイン(血圧・心拍数・SpO₂・体温)
胸痛や息切れの有無
浮腫や体重増加など心不全増悪の兆候
疲労感や睡眠状況
心電図モニターや検査データ(必要に応じて)
運動前の評価で異常があれば、無理に運動を実施せず、医師や看護師へ相談することも大切です。
② 運動中は自覚症状を重視する
血圧や心拍数だけではなく、患者さんの訴えをよく聞きましょう。
「胸が痛くないか」
「息苦しくないか」
「めまいはないか」
「疲れ過ぎていないか」
Borgスケール11~13程度を目安に、「少しきつい」と感じる程度の運動強度を維持します。
③ 運動後まで評価する
運動が終わった後も評価は続きます。
心拍数が適切に回復しているか
血圧が安定しているか
息切れが改善しているか
強い疲労感が残っていないか
運動後の回復状況は、次回の運動処方を考えるうえで重要な情報になります。
④ 「できる運動」ではなく「安全に続けられる運動」を選ぶ
新人PTは「もっと歩けそう」「もう少し負荷を上げよう」と考えがちですが、心臓リハビリでは安全性が最優先です。
患者さんの病態や回復状況に合わせて、少し物足りないくらいの運動を継続することが、長期的には最も効果的な運動療法につながります。
⑤ 多職種との連携を大切にする
心臓リハビリは理学療法士だけで行うものではありません。
医師
看護師
薬剤師
管理栄養士
臨床検査技師
など、多職種と情報共有しながら介入することで、より安全で質の高いリハビリを提供できます。
まとめ
心臓リハビリの有酸素運動は、「種類」「時間」「頻度」「強度」を患者さん一人ひとりの状態に合わせて調整することが大切です。
入院中は安全性を最優先に運動を開始し、退院後は生活の中で継続できる運動習慣を身につけることが目標になります。
「頑張る運動」ではなく、「続けられる運動」を意識することが、再入院予防や健康寿命の延伸につながります。
