心不全患者におけるフレイル・サルコペニアとは?
~新人理学療法士・患者さん向けにわかりやすく解説~
はじめに
高齢化が進む中で、心不全患者さんのリハビリにおいて「フレイル」と「サルコペニア」は非常に重要なキーワードとなっています。
近年では、心不全そのものだけでなく、フレイルやサルコペニアの有無が再入院や死亡率に大きく関わることが明らかになっています。
心臓リハビリテーションでは、心機能だけでなく身体機能や栄養状態も評価しながら介入することが重要です。
フレイルとは?
フレイル(Frailty)とは、「健康な状態」と「要介護状態」の中間に位置する脆弱な状態を指します。
加齢に伴い身体機能や認知機能、社会的機能が低下し、ストレスに対する抵抗力が低下した状態です。
しかし、適切な運動や栄養介入により改善できる可能性がある点が特徴です。
フレイルの診断基準
最も有名なのはFriedらの診断基準です。
以下の5項目中3項目以上でフレイルと判定します。
①体重減少
過去1年間で4.5kg以上、または体重の5%以上減少
②疲労感
「何をするにも面倒」「疲れやすい」と感じる
③身体活動量低下
外出や運動習慣が減少
④歩行速度低下
通常歩行速度
1.0m/秒未満
⑤握力低下
男性:28kg未満
女性:18kg未満
判定
0項目:健常
1~2項目:プレフレイル
3項目以上:フレイル
サルコペニアとは?
サルコペニアとは、
加齢や疾患によって骨格筋量と筋力が低下した状態
を指します。
筋肉が減るだけではなく、
筋力低下
身体機能低下
ADL低下
を伴うことが特徴です。
サルコペニアの原因
一次性サルコペニア
加齢によるもの
二次性サルコペニア
心不全
COPD
がん
糖尿病
長期臥床
低栄養
などが原因となります。
特に心不全患者では慢性炎症や活動量低下によりサルコペニアを生じやすいことが知られています。
サルコペニア診断基準
アジアサルコペニアワーキンググループ(AWGS2019)が広く使用されています。
Step1:筋力評価
握力
男性:28kg未満
女性:18kg未満
Step2:身体機能評価
通常歩行速度
1.0m/秒未満
または
5回椅子立ち上がりテスト
12秒以上
Step3:筋肉量評価
BIAまたはDXAを使用
骨格筋指数(SMI)
男性:7.0kg/m²未満
女性:5.7kg/m²未満
判定
サルコペニア
筋力低下+筋肉量低下
または
身体機能低下+筋肉量低下
重症サルコペニア
筋力低下
身体機能低下
筋肉量低下
すべて満たす
心不全とフレイルの関係
心不全患者の約40~50%がフレイルを有すると報告されています。
心不全になると、
息切れ
疲労感
活動量低下
食欲低下
が出現しやすくなります。
その結果、
身体機能低下
↓
活動量低下
↓
筋力低下
↓
フレイル進行
という悪循環に陥ります。
これを「フレイルサイクル」と呼びます。
心不全とサルコペニアの関係
心不全患者では以下の機序で筋肉量が減少します。
慢性炎症
TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカイン増加
神経体液性因子の活性化
交感神経やRAA系の活性化
低栄養
食欲低下や腸管浮腫
身体活動量低下
運動不足による廃用
その結果、
骨格筋萎縮
運動耐容能低下
ADL低下
が進行します。
フレイル・サルコペニアが予後に与える影響
近年の研究では、
フレイルやサルコペニアは心不全患者の重要な予後予測因子であることが示されています。
フレイル患者
全死亡率上昇
心不全再入院増加
ADL低下
QOL低下
サルコペニア患者
運動耐容能低下
入院期間延長
再入院率増加
死亡率増加
特に握力や歩行速度は予後予測因子として有用であり、日常診療でも簡便に評価できます。
理学療法士が行うべき介入
①有酸素運動
歩行
自転車エルゴメータ
週3~5回
②レジスタンストレーニング
下肢筋力強化が中心
スクワット
椅子立ち上がり
レッグプレス
40~80%1RM程度
週2~3回
③栄養管理
十分なエネルギー摂取
タンパク質摂取目標
1.2~1.5g/kg/日
管理栄養士との連携が重要です。
④身体活動量向上
散歩
家事
階段昇降
など日常活動量を増やします。
まとめ
フレイルは「要介護予備軍」、サルコペニアは「筋肉量・筋力の低下した状態」を指します。
心不全患者では非常に高頻度に合併し、再入院や死亡率の上昇に関与します。
理学療法士は心機能だけでなく、
握力
歩行速度
椅子立ち上がり
筋肉量
栄養状態
を評価し、運動療法と栄養管理を組み合わせた包括的な介入を行うことが重要です。
フレイル・サルコペニアは早期発見と適切な介入によって改善が期待できるため、心臓リハビリテーションにおいて積極的な評価と介入が求められます。
