心不全に対する運動療法
〜安全に、そして確実に機能を引き上げるために〜
心不全患者に対する運動療法は、かつては「安静」が中心でした。
しかし現在では、適切な運動は予後改善に寄与する重要な治療の一つとされています。
本記事では、臨床で使える視点に絞って整理します。
■ なぜ運動療法が必要なのか
心不全患者では、心機能だけでなく以下の問題が生じます。
骨格筋量の低下(サルコペニア)
筋代謝異常(酸化能力低下)
末梢循環不全
運動耐容能の低下(peak VO₂低下)
つまり本質は
👉 「全身の運動器・代謝の病気」でもある
運動療法の目的は
運動耐容能の改善
QOL向上
再入院予防
生命予後の改善
です。
■ 適応と禁忌
●適応
慢性心不全(安定期)
急性増悪後で状態が安定した患者
●禁忌(運動中止・延期)
急性心不全増悪
不安定狭心症
重度不整脈(コントロール不良)
重度大動脈弁狭窄
安静時症状の悪化(呼吸困難・浮腫など)
👉「安定しているかどうかの見極め」が最重要
■ 運動処方の基本
① 有酸素運動
中心となる介入
強度:Borg scale 11〜13(ややきつい)、peak VO₂の40〜60%
時間:20〜60分
頻度:週3〜5回
例)
歩行
エルゴメーター
② レジスタンストレーニング
筋力低下がある症例には重要
強度:1RMの30〜50%
回数:10〜15回 × 1〜3セット
頻度:週2〜3回
👉 有酸素運動との併用が効果的
③ 呼吸筋トレーニング
吸気筋力低下がある患者に有効
呼吸困難の軽減が期待できる
■ 強度設定のポイント
臨床では以下を組み合わせて判断
Borg scale(主観的運動強度 楽だ〜ややきつい程度)
心拍数(HR)
血圧(BP)
症状(息切れ・倦怠感)
注意すべきサイン
息切れの急激な増悪
胸痛
めまい・失神前症状
SpO₂低下
👉 出現時は即中止
■ 心不全特有の注意点
① 心拍応答が鈍い
β遮断薬の影響で
→ HRだけに頼らずBorg重視
② 体液管理が重要
体重増加(2kg/数日)
浮腫
呼吸状態
👉 日々の変化を評価して運動量を調整
③ 過負荷は逆効果
やりすぎると
心負荷増大
増悪リスク
👉 「少し物足りない」くらいが適切
■ 実際の臨床での流れ
① バイタル・症状チェック
② 当日の状態評価(体重・浮腫など)
③ 軽めのウォームアップ
④ 有酸素運動(主軸)
⑤ 必要に応じて筋トレ
⑥ クールダウン
👉 “その日の状態で調整する”のが心不全リハの本質
■ まとめ
心不全の運動療法は
単なる体力向上ではなく
予後を左右する治療そのもの
重要なのは
安全性の確保
個別性
継続性
そして何より
👉 「無理させないけど、止めない」バランスとなっています。
今回から理学療法士としての運動療法について臨床経験などからまとめています。
次回は"心筋梗塞"の運動療法について解説していきます。
