心筋梗塞後の運動療法
〜安全に“動く”ことが回復を早める〜
心筋梗塞は「安静にしていればいい」という時代から、「適切に運動することで予後を改善する」時代に変わっています。
ここでは、臨床でも使えるレベルで、心筋梗塞後の運動療法について整理します。
■ なぜ運動療法が必要なのか?
心筋梗塞後は、心機能の低下だけでなく、活動量の低下による全身の機能低下が問題になります。
運動療法の主な目的は以下です:
心機能の改善(心拍出量の向上)
再発予防(動脈硬化進行の抑制)
運動耐容能の向上
不安や抑うつの軽減
生命予後の改善(これが最も重要)
👉 特に「再発率と死亡率を下げる」というエビデンスが強いのがポイントです。
■ 運動療法のフェーズ(心臓リハビリの流れ)
① 急性期(発症〜入院中)
目的:廃用予防・安全な離床
ベッド上 → 端座位 → 立位 → 歩行へ段階的に進行
強度目安:RPE:11〜13(楽〜ややきつい)、心拍数:安静時+20bpm程度
注意ポイント
胸痛・息切れ・不整脈の出現
血圧低下(収縮期BP 90mmHg以下など)
ST変化
👉 「症状が出ない範囲で少しずつ」が基本
② 回復期(退院後〜数ヶ月)
目的:運動耐容能の改善・日常生活への復帰
有酸素運動が中心(歩行・自転車など)
頻度:週3〜5回
時間:20〜60分
強度設定
AT(嫌気性代謝閾値)レベル
RPE:11〜13
心拍数:カルボーネン法 or AT心拍
👉 CPXがあればベストだが、現場ではRPEが現実的
③ 維持期(長期管理)
目的:再発予防・生活習慣改善
有酸素運動+軽い筋トレ
継続が最重要
具体例
1日30分のウォーキング
スクワットなどの低負荷レジスタンス
👉 「やめないこと」が最大の治療
■ 運動処方の具体的ポイント
・FITT原則
Frequency(頻度):週3〜5回
Intensity(強度):中等度(RPE11〜13)
Time(時間):20〜60分
Type(種類):有酸素運動中心
・中止基準(重要)
以下が出たら即中止:
胸痛・圧迫感
強い息切れ
めまい・失神
心拍数の異常上昇
血圧の異常変動
新たな不整脈
👉 「無理させない判断」がPTとして重要
■ 運動療法の注意点
発症早期は過負荷に注意
心不全併発例はより慎重に
β遮断薬使用で心拍数は参考になりにくい
糖尿病・高血圧など合併症の管理も重要
■ 現場でのポイント(PT視点)
「怖くて動けない患者」が多い → 安心感の提供が重要
数値だけでなく“症状”をしっかり見る
小さな成功体験を積ませる
退院後の生活を見据えた指導
👉 運動療法は“身体機能”だけでなく“行動変容”がゴール
■ まとめ
心筋梗塞後の運動療法は、
段階的に進めること
安全性を最優先すること
継続できる内容にすること
が重要です。
そして最も大事なのは、
👉 「適切に動くことが、再発を防ぎ命を守る」
という認識を患者さんと共有することです。
次回は"狭心症"に対する運動療法について解説していきます。
