心臓リハビリで行うストレッチとは?
〜安全に体を動かすための大切な準備〜
「心臓リハビリでは、なぜ最初にストレッチをするの?」
「普通のストレッチと何が違うの?」
心臓リハビリを始めたばかりの患者さんや、新人理学療法士からよく聞かれる質問です。
ストレッチは単に体を柔らかくするためではありません。安全に運動を行い、心臓への負担を減らすための重要な準備運動でもあります。
この記事では、心臓リハビリでストレッチを行う目的や方法、注意点についてわかりやすく解説します。
心臓リハビリでストレッチを行う目的
心臓リハビリでは、ウォーキングや自転車エルゴメーターなどの有酸素運動の前後にストレッチを行うことが一般的です。
主な目的は次の5つです。
① 筋肉や関節を動かしやすくする
長時間安静にしていたり、手術後は体が硬くなりやすくなります。
筋肉や関節が硬いまま運動を始めると、
動きにくい
疲れやすい
転倒しやすい
などのリスクがあります。
ストレッチで体をほぐすことで、スムーズに運動へ移行できます。
② 心臓への急激な負担を減らす
急に運動を始めると、
心拍数
血圧
心筋酸素消費量
が急激に上昇します。
特に心臓病の患者さんでは、この急激な変化が胸痛や不整脈を引き起こすことがあります。
ストレッチを行いながら徐々に体を温めることで、心臓もゆっくり運動モードへ切り替わります。
③ ケガの予防
柔軟性が低い状態では、
肉離れ
関節痛
腰痛
肩痛
などが起こりやすくなります。
特に高齢者では、小さなケガが活動量低下につながるため予防が重要です。
④ 正しい姿勢で運動しやすくなる
胸や股関節、ふくらはぎが硬いと、
猫背
小股歩行
前かがみ姿勢
になりやすくなります。
姿勢が悪いと運動効率が低下し、余計なエネルギーを使ってしまいます。
⑤ リラックス効果
ストレッチには副交感神経を優位にし、
緊張を和らげる
呼吸を整える
不安を軽減する
効果も期待できます。
初めて運動を行う患者さんにとっては、心と体を落ち着かせる時間にもなります。
心臓リハビリでよく行うストレッチ
首・肩
首の横をゆっくり伸ばす
肩を回す
肩甲骨を寄せる運動

胸(胸筋)
胸を開くように腕を後ろへ引くストレッチ。
心臓手術後は猫背になりやすいため、とても重要です。
※胸骨正中切開術後は医師の指示に従って行います。
背中
背中を丸めたり伸ばしたりして胸郭の動きを改善します。
呼吸がしやすくなります。

股関節
太ももの前
太ももの裏
お尻
歩行や階段動作に重要な筋肉です。

ふくらはぎ
壁に手をつき、アキレス腱を伸ばすストレッチ。
歩き始めを楽にし、転倒予防にもつながります。
足首
足首を回す運動やつま先の上下運動。
血液循環改善やむくみ予防にも役立ちます。

心臓リハビリでのストレッチのポイント
反動をつけない
勢いよく伸ばすと筋肉を傷める可能性があります。
ゆっくり気持ちいい程度で伸ばします。
呼吸を止めない
力むと血圧が上昇します。
「自然な呼吸」を続けながら行いましょう。
痛みが出るほど伸ばさない
「少し伸びて気持ちいい」
この程度が理想です。
痛みを我慢する必要はありません。
長時間行いすぎない
一般的には
15〜30秒程度
伸ばすことが推奨されています。
手術後の患者さんで注意すること
心臓手術後は通常より慎重に行います。
例えば、
胸骨正中切開術
CABG
弁膜症手術
では胸骨保護が必要です。
術後早期は
腕を大きく開く
強く引っ張る
ようなストレッチは避けます。
病院ごとのプロトコールに従い、安全に進めることが大切です。
新人PTが覚えておきたいポイント
ストレッチを「柔軟性改善だけ」と考えてしまう新人は少なくありません。
しかし心臓リハビリでは、
安全に運動を始める
心臓への負担を減らす
呼吸を整える
ケガを予防する
患者さんの緊張をほぐす
という重要な役割があります。
患者さん一人ひとりの病態や術式、運動能力に合わせて内容を調整することが大切です。
まとめ
心臓リハビリにおけるストレッチは、単なる準備運動ではありません。
運動を安全に始めるための「ウォーミングアップ」であり、運動後には体を落ち着かせる「クールダウン」としても重要な役割を担っています。
ストレッチを丁寧に行うことで、心拍数や血圧の急激な変化を抑え、筋肉や関節の動きを改善し、より安全で効果的な運動療法につながります。
患者さんは「痛くない範囲で、呼吸を止めずに、ゆっくり行う」ことを意識しましょう。
新人PTは「なぜこのストレッチを行うのか」を理解した上で実施・指導することで、患者さんに安心感を与え、より質の高い心臓リハビリを提供できるようになります。
