EVAR・TEVAR後の心臓リハビリ
低侵襲治療のその先に必要な“安全な回復”とは
大動脈瘤や大動脈解離に対する治療として、近年は"EVAR(腹部大動脈ステントグラフト内挿術)やTEVAR(胸部大動脈ステントグラフト内挿術)"が広く行われています。
開胸・開腹を伴わない低侵襲な治療であり、高齢者やハイリスク患者にも適応しやすい点が大きな特徴です。
しかし、「低侵襲=術後管理が簡単」というわけではありません。
術後には全身状態の変化や循環器合併症への配慮が必要であり、心臓リハビリテーションの視点を取り入れた段階的な回復支援が重要です。
今回は、EVAR・TEVAR後における心臓リハビリの考え方を整理します。
EVAR・TEVARとは?
EVAR:Endovascular Aneurysm Repair
→ 主に腹部大動脈瘤に対する血管内治療TEVAR:Thoracic Endovascular Aortic Repair
→ 主に胸部大動脈瘤・大動脈解離に対する血管内治療
いずれも大腿動脈などからカテーテルを挿入し、ステントグラフトを留置して病変部を内側から補強します。
術後の回復は比較的早い一方で、循環動態や血圧管理には引き続き注意が必要です。
術後リハビリの目的
EVAR・TEVAR後の心臓リハビリの主な目的は以下の通りです。
廃用症候群の予防
呼吸・循環機能の回復
ADLの早期自立
術後合併症の予防
安全な身体活動レベルの再獲得
再発・再治療予防のための生活指導
低侵襲手術でも、安静による筋力低下や活動量低下は起こります。
そのため、早期離床と段階的運動療法が重要です。
術後急性期のポイント
1. バイタル・循環動態の安定確認
特に重要なのは血圧管理です。
急激な血圧上昇は、ステントグラフトへの負荷やエンドリークのリスクにつながる可能性があります。
そのため、運動中も過度な血圧上昇を避ける必要があります。
確認項目
収縮期血圧の変動
心拍数の上昇幅
SpO₂
胸背部痛・腹痛の有無
下肢の冷感やしびれ
めまい・倦怠感
2. 穿刺部の観察
大腿動脈からのアプローチが多いため、以下を確認します。
出血・血腫
疼痛
腫脹
感染兆候
特に歩行開始時には再出血のリスクを考慮し、慎重に進めます。
3. 神経・脊髄虚血症状の確認(特にTEVAR)
TEVARではまれに脊髄虚血を生じることがあります。
下肢脱力
感覚障害
排尿障害
こうした症状があれば即時対応が必要です。
運動療法の進め方
術後1〜2日目
ベッド上運動
座位保持
立位練習
まずは循環反応を確認しながら離床を進めます。
術後2〜4日目
病棟内歩行
トイレ歩行
軽い階段練習(必要に応じて)
自覚症状や血圧変動を見ながら活動量を増やします。
退院前
6分間歩行や歩行耐久性評価
自宅生活を想定した動作確認
運動・生活指導
退院後も活動量を落としすぎないように支援します。
運動時の注意点
EVAR・TEVAR後は高強度運動やいきみ動作を避けることが重要です。
避けたい動作
重い物を持つ
強い筋トレ
息こらえ(バルサルバ)
急激な動作
これらは血圧を急上昇させる可能性があります。
推奨される運動
ウォーキング
軽い自転車運動
ストレッチ
日常生活レベルの持久活動
目安は"楽〜ややきつい(Borg11〜13)"程度です。
退院後の生活指導
再発予防には生活習慣管理が不可欠です。
血圧コントロール
禁煙
体重管理
定期画像検査の継続
服薬遵守
特にステントグラフト治療後は、長期的な画像フォローが必要です。
症状がなくても受診継続を促すことが重要です。
まとめ
EVAR・TEVARは低侵襲である一方、術後には血圧管理や合併症予防を意識したリハビリが必要です。
重要なのは、
早期離床
循環動態の安定確認
血圧上昇を避けた運動療法
退院後の生活習慣改善
術後の回復を支えるだけでなく、その後の再発予防まで見据えることが、心臓リハビリの役割です。
“治療して終わり”ではなく、“安全に生活へ戻るまで”を支える視点が求められます。
次回は、"弁膜症手術後に対する心臓リハビリ"について解説していきます。
