大動脈解離(stanford B型)に対する心臓リハビリ
■ はじめに
大動脈解離(Stanford B型)は、上行大動脈を含まない解離であり、急性期は保存的治療が基本となることが多い疾患です。
しかし、「安静=安全」と思われがちですが、過度な安静は廃用やADL低下を招きます。
そこで重要になるのが
“血圧管理を前提とした安全なリハビリテーション”です。
■ 病態のポイント(復習)
大動脈内膜の亀裂 → 偽腔形成
血圧・心拍上昇により解離進展リスクあり
特に問題となるのは
→ せん断応力(shear stress)
👉 つまり
「血圧を上げないこと」が最優先
■ リハビリの目的
廃用予防
呼吸機能維持
ADLの早期回復
再発・増悪予防
■ リハビリ開始の条件
主治医の許可が前提ですが、一般的には
血圧コントロール良好(収縮期100〜120mmHg程度)
痛みがコントロールされている
解離の進展なし(画像評価)
合併症なし(臓器虚血など)
■ 急性期リハビリ(ベッド上〜離床初期)
● 基本方針
👉 とにかく血圧を上げない
● 実施内容
呼吸練習(深呼吸・排痰)
関節可動域訓練(自動〜軽介助)
ベッド上での体位変換
端座位 → 立位 → 歩行(段階的)
● 注意点
動作時の血圧上昇に注意
疼痛は血圧上昇の原因 → 事前評価必須
バルサルバ禁止(息こらえNG)
■ 運動強度の設定
ここが一番重要です。
● 指標
Borg scale:9〜11(かなり楽〜楽)
心拍数:安静+20bpm以内目安
収縮期血圧:120mmHg未満を意識
👉 通常の心リハよりもかなり低強度
■ 回復期〜慢性期リハビリ
● 有酸素運動
歩行・エルゴメーター
低〜中強度(ただし上限は厳しめ)
● レジスタンストレーニング
原則:軽負荷のみ
等尺性収縮は避ける
息こらえ禁止
👉 重い負荷はNG(血圧急上昇)
■ 禁忌・注意事項
❌ 避けるべき動作
いきむ動作(排便時含む)
重い物を持つ
急激な体動
高強度運動
⚠️ モニタリング
血圧(最重要)
心拍数
胸背部痛の再発
神経症状(虚血)
👉 症状が出たら即中止
■ 退院後の生活指導
● 血圧管理
目標:収縮期120mmHg未満
内服アドヒアランス重要
● 運動
軽い有酸素運動は推奨
「会話ができる強度」
● NG行動
筋トレ高負荷
激しいスポーツ
急激な寒暖差(血圧変動)
■ PTとしての関わりのコツ
「やりすぎない勇気」が重要
バイタル変動の“予測力”が鍵
患者教育(息こらえ・生活指導)が予後を左右
👉 心リハというより
“血圧マネジメントを伴う運動療法”
■ まとめ
Stanford B型は保存療法+慎重なリハが基本
最重要は血圧コントロール
運動強度は通常より低めに設定
急性期から段階的に離床
生活指導が再発予防のカギ
次回は大動脈解離術後の心臓リハビリについて解説していきます。
