肺気腫とは?原因・症状・治療・リハビリまでわかりやすく解説
「肺気腫」と聞くと、「肺が悪くなる病気」というイメージを持つ方は多いかもしれません。しかし、肺気腫は単なる肺炎や風邪とは違い、一度壊れた肺が元には戻らない慢性的な病気です。
近年では高齢化に伴い患者さんも増えており、呼吸リハビリテーションが生活の質(QOL)を維持するために非常に重要になっています。
今回は、新人理学療法士や患者さん向けに、肺気腫について詳しくわかりやすく解説します。
肺気腫とは?
肺気腫とは、肺の中にある**肺胞(はいほう)**という小さな袋が壊れてしまう病気です。
肺胞は酸素を体に取り込み、二酸化炭素を外へ出す役割があります。
正常な肺では、小さな肺胞が無数に集まることで広い表面積を作り、効率よくガス交換を行っています。
しかし肺気腫では
・肺胞の壁が壊れる
・小さな肺胞が大きな袋になる
・ガス交換できる面積が減る
ため、酸素を十分に取り込めなくなります。
さらに、肺の弾力も失われるため、息を吐き出すことが苦手になります。
COPDとの違い
よく混同されますが、
**COPD(慢性閉塞性肺疾患)**は病名全体を指します。
COPDの中には
・肺気腫
・慢性気管支炎
があります。
つまり、
肺気腫はCOPDの代表的な病態の一つです。
実際には両方の特徴を持っている患者さんも多くいます。
原因
最も多い原因は喫煙です。
長年タバコを吸うことで、肺胞が少しずつ破壊されます。
その他には
・受動喫煙
・大気汚染
・粉じん
・化学物質
・まれに遺伝(α1アンチトリプシン欠乏症)
などがあります。
喫煙歴が長い人ほど発症リスクは高くなります。
どんな症状が出る?
初期はほとんど症状がありません。
そのため気付かないまま進行していることも少なくありません。
進行すると
・坂道で息切れする
・階段がつらい
・咳
・痰
・運動すると苦しい
・呼吸が速くなる
・体重が減る
などが現れます。
さらに重症になると
・着替え
・食事
・会話
だけでも息切れすることがあります。
肺では何が起きている?
肺気腫では
肺胞が壊れる
↓
肺の弾力がなくなる
↓
息を吐ききれない
↓
肺に空気が残る
↓
新しい空気が入りにくい
という悪循環になります。
これを**肺の過膨張(Air Trapping)**と呼びます。
そのため、
「吸えない」のではなく
「吐けないために吸えない」
という状態になります。
樽状胸郭とは?
肺気腫が進行すると、
胸が大きく膨らんだような形になります。
これを
樽状胸郭(Barrel Chest)
と呼びます。
肺に空気が溜まった状態が続くため、胸郭が広がったままになることが原因です。
口すぼめ呼吸が大切な理由
肺気腫では息を勢いよく吐くと、細い気道が途中で潰れやすくなります。
そこで役立つのが
口すぼめ呼吸
です。
口をすぼめてゆっくり吐くことで
・気道が潰れにくい
・息を最後まで吐ける
・息苦しさが軽減する
という効果があります。
呼吸リハビリでは最も重要な呼吸方法の一つです。
治療
残念ながら、
壊れた肺胞は元には戻りません。
そのため治療の目的は
「進行を遅らせること」
になります。
主な治療は
・禁煙
・吸入薬
・ワクチン接種
・呼吸リハビリ
・運動療法
・栄養管理
・在宅酸素療法(HOT)
などです。
呼吸リハビリの役割
呼吸リハビリは
「肺を治す」
ためではありません。
残っている肺を最大限に使いながら生活しやすくすること
が目的です。
具体的には
・口すぼめ呼吸
・呼吸筋トレーニング
・有酸素運動
・筋力トレーニング
・日常生活動作指導
・息切れ時の対処法
などを行います。
なぜ運動が必要なの?
息苦しいからと運動を避けると
筋力が低下
↓
さらに息切れ
↓
もっと動かなくなる
という悪循環になります。
適切な運動を続けることで
・歩ける距離が伸びる
・息切れが軽くなる
・疲れにくくなる
・入院予防
などが期待できます。
理学療法士が評価するポイント
新人PTが確認したい項目は
呼吸数
SpO₂
呼吸パターン
胸郭の動き
呼吸補助筋の使用
息切れ(mMRC・Borg)
歩行能力(6分間歩行試験など)
ADL
栄養状態
握力・下肢筋力
だけではありません。
運動中のSpO₂低下や息切れの程度を確認し、安全に運動を進めることも重要です。
日常生活で気を付けたいこと
肺気腫では日常生活の工夫も大切です。
例えば
・無理に急がない
・動作中も呼吸を止めない
・息を吐きながら動く
・重い物を一度に運ばない
・感染予防を行う
・禁煙を継続する
これだけでも息切れを軽減できる場合があります。
まとめ
肺気腫は肺胞が壊れ、息を吐きにくくなる慢性疾患です。
一度壊れた肺は元に戻りませんが、
禁煙
薬物療法
呼吸リハビリ
運動療法
を継続することで、息切れを軽減し、生活の質を維持することは十分可能です。
理学療法士は運動療法だけでなく、呼吸方法や生活指導まで含めて患者さんを支える重要な役割を担っています。
肺気腫は「治らない病気」ではありますが、「適切な治療とリハビリで付き合っていける病気」でもあります。正しい知識を身につけ、少しでも快適な生活を目指していきましょう。
