ST上昇とST低下を理解する ~心電図で読み取る心筋虚血のサイン~(新人PT・患者向け)
ST上昇・ST低下
心電図を見ているとよく出てくる ST変化。
ST上昇やST低下は、心筋虚血や心筋障害を示唆する可能性があり、臨床では非常に重要な所見です。
しかし
「なぜSTが上がるのか?」
「低下は何を意味するのか?」
ここを理解すると、心電図の解釈がぐっと深まります。
ST部分とは
まずST部分の復習です。
ST部分とは
QRS波の終わり(J point)からT波の始まりまでの部分 を指します。
この時間は
心室が脱分極し終わり、再分極が始まるまでの時間 です。
正常では
STはほぼ等電位線(基線)上にある のが特徴です。

つまり
STがズレている=何か異常が起きている
ということになります。
ST上昇(ST elevation)
特徴
特徴はST部分が基線より上に持ち上がる所見です。
臨床で最も重要なのは
急性心筋梗塞(STEMI)です。

主な原因は
● 急性心筋梗塞(STEMI)
● 冠攣縮性狭心症
● 心膜炎
● 早期再分極
● 左脚ブロック
● 心室瘤
特に臨床で注意すべきなのは
急性心筋梗塞
です。
なぜSTが上昇するのか
急性心筋梗塞では冠動脈が完全閉塞 します。
すると心筋が強い虚血状態 になります。
このとき傷害電流(injury current)
が発生し、ST部分が上昇します。
つまりST上昇は貫壁性虚血(transmural ischemia)
を示唆します。

ST低下(ST depression)
ST部分が基線より下がる状態です。
これは "心筋虚血のサイン" としてよく見られます。
主な原因
● 労作性狭心症
● 非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)
● ジギタリス効果
● 左室肥大
● 右脚ブロック
● 貧血や頻脈
などが原因になります。
なぜSTが低下するのか
ST低下は
心内膜側の虚血(subendocardial ischemia)で起こることが多いです。
冠動脈の部分的な血流低下によって心筋の内側が虚血になります。
その結果"ST低下"として現れます。

ST上昇とST低下の違い
簡単にまとめると
● ST上昇
→ 貫壁性虚血
→ 冠動脈完全閉塞
→ STEMIの可能性
● ST低下
→ 心内膜虚血
→ 冠血流低下
→ 狭心症やNSTEMI
心リハ・臨床で重要なポイント
運動療法やモニター中ではST低下を見ることが多いです。
特に注意すべきなのは
・運動中のST低下
・1mm以上の水平型 / 下行型低下
・胸部症状の出現
このような場合は虚血の可能性があるため
運動負荷の中止や評価が必要になります。
まとめ
ST変化は心筋の状態を反映する重要なサインです。
ポイントはこの2つです。
● ST上昇
→ 貫壁性虚血
→ STEMIの可能性
● ST低下
→ 心内膜虚血
→ 狭心症 / NSTEMI
STを理解すると虚血の深さや重症度までイメージできるようになります。
心電図を読むときはSTが基線からズレていないかを必ず確認する習慣をつけると良いでしょう。
次回はペースメーカーについて解説していきます。
