TAVI後の心臓リハビリ
〜低侵襲治療のその先へ。“生活を取り戻す”ためのリハビリ〜
高齢化に伴い、大動脈弁狭窄症(AS)の患者さんは増加しています。
その治療として近年広く行われているのが、TAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)です。
TAVIは開胸を行わず、カテーテルで人工弁を留置する低侵襲治療であり、高齢者や開心術リスクの高い患者さんにも適応されるようになっています。術後回復が比較的早いことも特徴ですが、一方で「治療後すぐ元通りに生活できる」とは限りません。
実際には、術前から活動量低下やフレイルを抱えている患者さんも多く、TAVI後には心機能だけでなく身体機能や生活機能の回復を目的とした心臓リハビリテーションが重要になります。
TAVI患者の特徴
TAVIの対象となる患者さんは高齢であることが多く、
フレイル
サルコペニア
低栄養
多疾患併存
などを抱えているケースも少なくありません。
長期間の大動脈弁狭窄によって活動量が低下し、筋力や持久力が落ちていることも多く、「息切れは改善したのに歩けない」という状況もみられます。
そのため、TAVI後のリハビリでは単に循環動態をみるだけでなく、“どれだけ生活動作を取り戻せるか”という視点が非常に重要になります。
TAVI後に注意したいポイント
TAVIは低侵襲とはいえ、術後には注意すべき点があります。
特に重要なのが伝導障害です。
TAVI後には房室ブロックや左脚ブロックが出現することがあり、症例によってはペースメーカー植込みが必要となります。運動時には心拍応答や血圧変化、自覚症状を丁寧に確認する必要があります。
また、大腿動脈アプローチで行われることが多いため、穿刺部の出血や血腫、疼痛にも注意が必要です。術後早期は歩行時のふらつきや疼痛の影響も確認しながら、安全に離床を進めていきます。
術後早期リハビリ
全身状態が安定していれば、TAVI後は比較的早期から離床を進めることができます。
ベッド上運動から開始し、座位、立位、歩行へと段階的に進めていきます。開胸術後と比較すると回復は早い傾向にありますが、高齢患者ではわずかな安静期間でも筋力低下が進行しやすいため、早期介入が重要です。
一方で、過度な負荷は避けなければなりません。
血圧低下
不整脈
息切れ
疲労感
などを確認しながら、その日の体調に応じて運動量を調整します。
運動療法のポイント
TAVI後の運動療法では、有酸素運動に加えて筋力トレーニングも重要になります。
歩行やエルゴメーターを用いた有酸素運動では、Borg scale11〜13程度を目安にしながら、血圧反応や症状を確認して進めます。高齢患者では「追い込みすぎない」ことも大切です。
また、下肢筋力低下やバランス能力低下を伴うことも多いため、
立ち上がり練習
スクワット
バランス練習
などを取り入れ、転倒予防やADL改善につなげていきます。
TAVI後は“心肺機能改善”だけでなく、“生活機能改善”を意識した運動療法が求められます。
評価の視点
TAVI後は心機能のみではなく、包括的に評価することが重要です。
6分間歩行試験や歩行速度、握力、SPPBなどを用いて身体機能を確認し、ADLやフレイルの程度も評価します。特に高齢患者では、わずかな身体機能低下が生活自立度に大きく影響するため、細かな変化を捉えることが大切です。
さらに、栄養状態や認知機能、退院後の生活環境まで含めて評価する必要があります。
多職種連携の重要性
TAVI患者では多職種連携が非常に重要です。
医師、看護師、理学療法士だけでなく、管理栄養士や薬剤師、ソーシャルワーカーなどと連携しながら、再入院予防や在宅生活支援を行います。
特に高齢患者では、「退院すること」がゴールではなく、“退院後も安全に生活できること”が重要になります。
まとめ
TAVIは高齢重症大動脈弁狭窄症患者に対する低侵襲治療として大きく普及しています。
しかし、術後には身体機能低下やフレイルが残存することも多く、心臓リハビリテーションの役割は非常に大きいものとなっています。
安全な早期離床に加え、有酸素運動や筋力トレーニングを通して活動量やADLの改善を図り、その人らしい生活を取り戻す支援を行うことが大切です。
TAVI後の心リハでは、“心臓だけを診る”のではなく、“生活全体を支える”視点が求められます。
次回は"CABG(冠動脈バイパス術)後の心臓リハビリ"についてまとめていきます。
