【まとめ版】お米の価格が上がった今、米農家として伝えたいこと
こんにちわ。約40haの米農家をしているそらまめです😊
最近「お米の価格が高くなった」というニュースをよく見かけます。
SNSを見ていると、農家ではない方が、憶測や一部の情報だけをもとに「真実っぽく」発信しているのをよく目にするようになりました。
「農家って儲かってるんでしょ?」という声や、事実と違う内容が拡散されているのを見ると、正直もやもやする気持ちになります。
価格が上がるまでにどれだけ厳しい状況が続いていたか。
今起きていることが、どんな構造で成り立っているのか。
そして、私たちが本当はどんな未来を願っているのか…。
このnoteでは、価格が上がる前の苦しみや、今起きていること、そして私が米農家として思っていることを、できるだけ分かりやすく、正直に綴ってみようと思います。
※一個人としての実感や考えを正直に書いています。いろんな立場の見方があると思うので、「へ〜そうなんだ」と気楽に読んでもらえたらうれしいです。
■ 価格が上がるまでの、長く苦しい道のり
正直、ここ数年は赤字覚悟で米作りを続けていた農家も多いと思います。
肥料や農薬、燃料、機械の部品や資材……
どれもこれも毎年のように値上がりして、経費は増える一方でした。それに対して米の出荷価格は、何年もほとんど変わらず、むしろ下がっていました。
それでも私たちが米作りをやめずに続けてきたのは、「この土地を守りたい」「米作りが好き」「次の世代につなげたい」という思いがあったからです。
でも、現実は簡単ではありません。離農する農家も年々増えていて、うちのように規模が大きいところには、「もう田んぼできないから、代わりに作ってくれないか」と頼まれることが本当に多い…。
断るわけにもいかず、年々忙しくなっていくのに、収入がそれに比例して増えるわけでもない。気持ちと現実のバランスに悩むこともあります。
だからこそ、今こうして価格が上がっていること自体には、正直少しホッとしている面もあります。
ただ、その背景には複雑な要因がいくつも絡んでいて、決して手放しで喜べる状況ではありません。
米価が上がりすぎれば、今度は消費者の米離れが進むリスクもある。
だからこそ、できるだけ早く、生産者にとっても消費者にとっても納得できる“適正価格”に落ち着いてほしいというのが、今の私の一番の願いです☝️
■ 「作況指数101」でも、不作だった理由
「去年のお米は作況指数101だったのに、なぜ価格が上がるの?」と疑問に思う人も多いかもしれません。SNSでもこの話題をよく見かけます。
でも、米農家としての私の実感で言うと、実際には“豊作”とは言いがたい年でした。(もちろん、地域によって感じ方には差があると思います。)
まず前提として、「作況指数」とは主食用米の収穫量の平年比(=例年と比べてどれくらい獲れたか)を示す数字です。
ただしこの中には、実際にスーパーなどで売られる白米だけでなく、
加工用米(せんべいや米粉など)
飼料用米(家畜のエサに使われる)
米粉用・備蓄米 など
といった、食卓に直接のぼらないお米も含まれています。
さらに、2023年は——
猛暑の影響で「登熟不良」が多発
粒が小さい・軽い・白く濁った米(シラタ)が増加
品質基準を満たさない“くず米”が大量に発生
地域によっては収穫量そのものが大きく減少
こうした影響により、実際に“食用として市場に流通するお米の量”は明らかに減ったというのが現場の実感です。
つまり、作況指数が100を超えていたとしても、
それだけで「十分な量の食べられるお米がある」とは限りません。
ちなみに我が家の場合、食用米の収量は前年より約3割減。くず米ばかりが増え、これだけ米価が高騰しているにも関わらず、収入は前年比マイナスという結果になりました😂
そもそも価格が上がっているのは、
“一等米”などのごく一部の高品質な米だけ。
品質の基準に満たないくず米や二等米は、価格が据え置き、もしくは逆に下がっている場合もあります。
だから、収量が減って品質も落ちた年ほど、農家の収入は大きく減ってしまうのです。
■ 備蓄米の放出は、誰のためになっているのか?
価格高騰への対策として、国は「備蓄米の放出」を実施しました。ニュースでもたびたび報じられ、「安くお米が買えた」という声も一部では聞こえてきます。
でも、ふとこの備蓄米の放出は、一体誰のためになっているんだろう?と考えてしまいます。
たしかに、ごくわずかでも安いお米が手に入った人がいるかもしれません。
でも、それは全国民のうちのほんの一部にすぎません。
数量も限られ、購入ルートも限られ、本当に困っている人のもとに届いていない可能性すらあります。
農家側から見ても、価格が下がるプレッシャーだけがかかり、私たちの負担が軽くなることはありません。
(新農水大臣は「備蓄米の放出は農家には影響ない」といった発言をされていたけど、正直、現場で作っている立場からするとそうは思えない😂)
つまり、備蓄米の放出は、国民全体の支えにもなっていないし、農家の支えにもなっていない。「やっている感」だけが残るこの政策に対して、**何のための放出だったのか?**という根本的な疑問が私にはあります。
そもそも備蓄米は、災害時など“いざという時”のためのものだったはず。
それをこういった形で全て(かどうかはまだ分かりませんが)使ってしまうことに、いざという時に本当に足りるのか?という不安も感じています。
(令和の米騒動が災害だと言えばそうなのかもしれませんが、無限放出にはあまりにもリスクが高すぎる気が…)
■ 米農家は「儲けたい」のではなく、「持続したい」だけ
SNSなどでは「農家が儲けようとしてるから価格が上がる」といった声も見かけます。そのたびに悲しい気持ちになります😢
でも私たち米農家は、豪邸に住みたいとか、贅沢したいとか、そんなことを望んでいるわけじゃありません。
ただ、真面目に働いても赤字にならないくらいの対価がほしいだけ。
私たちのような比較的大規模な農家でも、米だけで大人6人・子ども5人(現在妊娠中なので、もうすぐ6人になります)が暮らしていけるかというと、正直それは厳しいです。
両親2人はすでに年金を受け取っていますが、それでも米だけの収入では家計を支えきれないのが現実です。
会社経営や株、土地など、他にも収入源があるからなんとか成り立っているだけで、決して余裕があるわけではありません。
ましてや、小規模農家の多くは、米の出荷だけでは生活が成り立たず、赤字覚悟で続けているのが現実です。
■ 米農家の多くが赤字経営の現実
農林水産省の2020年農業センサスによれば、日本の農家数は約107万経営体で、そのうち約70%が米を作っています。しかし、統計上、日本のコメ農家の95%は赤字であり、所得ベースで見ても半数が赤字であることが報告されています。 株式会社カクイチ -+3エムアールアイ+3農林水産省+3PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)+4エムアールアイ+4エムアールアイ+4
また、2025年5月に発表された調査では、米農家の9割が「経営が苦しい」と回答し、補助金なしでは約76%が赤字であると報告されています。 プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
このように、米農家の多くが赤字経営を強いられており、補助金がなければ経営が成り立たない状況が続いていることを知ってほしいです☝️
■ なぜ赤字でも米作りを続けてこられたのか?
それでも、なぜ多くの農家が赤字経営でも米作りを続けてこられたのか。
理由は、ただ「儲かるから」ではなく、もっと複雑で、個人的で、社会的な事情が絡んでいると個人的に思っています。
副収入や資産による補填
米の収入だけでは生活が成り立たず、年金や副業、他の事業収入、あるいは過去に築いた資産を取り崩して、なんとか農業を続けている方も多くいます。
中には、自分たちで加工品の販売や直売など、六次産業化に取り組んで収入を増やそうと努力している農家もいます。
それでもなお、明らかに赤字でも「ボランティア農業」のような形で地域を支えている人も少なくありません。
補助金に支えられている現実(それでも欧米に比べれば小規模)
日本の農業は、実は**“補助金ありき”で成り立っている農家がとても多いのが現実です。それでも、補助金の規模はアメリカやEUと比べると圧倒的に小さい**と言われています。
たとえばEUでは、農家の所得の半分以上が補助金でまかなわれている国もあります。アメリカでも、価格を一定以上に保つ制度や、災害時の収入補填などがきちんと仕組み化されています。
一方、日本の補助金はあくまで最低限の支援にとどまっており、
このわずかな支えがなければ赤字を避けられない農家が大半なのです。
地域の農地を守る責任感
「自分がやめたら、この土地が荒れる」「誰も引き継ぐ人がいない」
そんな危機感から、損得を超えて農業をやめられないという声も多く聞きます。家族や地域とのつながり
高齢の親世代や周囲の農家に頼まれて、「断れずに続けている」という方も。地域の人間関係の中で、簡単にはやめられないという現実があります。農業への愛着と誇り
「儲からなくても、やっぱり農業が好き」
苦しい中でも、仕事としての農業にやりがいを感じている人も少なくありません。でもその想いだけで続けていくには、限界もあるのが現実です。
■ なぜ農家は利益を確保しにくいのか?
米農家は、収入が上がらないだけでなく、そもそも利益を出すこと自体が非常に難しい産業構造の中にいます。
その理由のひとつが、自分たちで価格を決められないということ。
たとえば製造業やサービス業であれば、原材料費が上がれば販売価格も上げて、利益を確保することができます。
でも農業、特に一次産業では、「いくらで売るか」ではなく「いくらで買われるか」が決まっているのが一般的です。
米価は市場価格や国の制度で決まり、自分で設定できない
肥料や資材の価格は上がっても、それを販売価格に転嫁できない
台風や猛暑など、天候で収量が激減しても、リスクヘッジが不十分
つまり、コストはコントロールできず、売価もコントロールできない。
そんな構造の中で、農家は「がんばっても報われにくい」立場に置かれています。
それでも、「農業を続けたい」「土地を守りたい」という思いで、今も踏ん張っている農家は日本中にたくさんいると感じています😊
■ だからこそ、国が守るべきではないか?
農業は「努力すれば報われる」という単純な世界ではないと感じています。
気候や価格、流通など、自分ではどうにもできない要素に大きく左右される一次産業だからこそ、
市場任せでは守りきれない側面があると思っています。
そしてなにより——
日本のお米は、世界的に見ても「おいしい」と評価されている誇れる農産物です。
この味や品質を守るには、生産の現場が持続可能でなければなりません。
このまま農家が減り続ければ、日本のお米文化そのものが衰退してしまう未来だってあり得る…
だからこそ、農業は国が責任をもって支えるべき分野だと思うのです。
補助金や制度を「甘え」と見るのではなく、社会の基盤を守る投資として考えてほしい。
それが、次の世代にも日本のお米と農業をつなげていくために必要なことだと、私は思います。
■ 最後に:農業は、みんなの暮らしの根っこにある
お米の価格が上がったからといって、単純に「農家は得をしている」とは言えません。
その裏には、長年の苦しみと、複雑な構造、そして見えにくい不公平があることを、どうか少しでも知ってもらえたら嬉しいです🙏
最近では、国やJAに関するいろいろな情報がSNSなどで飛び交っています。
中には陰謀論のような話まで広まっていますが、正直、本当のところは分かりません…
ただ一つ、私が確信を持って言えるのは、農家は農協に支えられているということ。少なくとも私自身は、農協がなければ農業は成り立たないと感じています。
だからこそ、現場の実態を知らないままに、真偽のはっきりしない情報を広めてしまうのは、とても怖いことだと思っています。
農家としては、不安になりますし、誤解が広がってしまうのが本当に残念です。
(このあたりの話については、また別のnoteで詳しくまとめたいと思っています。)
農業は、みんなの食卓とつながっています。
農業が続けられなくなったら、最終的に困るのは農家だけじゃありません。
だからこそ、消費者と農家、政策と現場、それぞれの立場を超えて、
「どうしたら持続可能な農業になるのか」を、一緒に考えていけたらと思っています。
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