#毎週ショートショートnote|お題【俊敏ポルチーニ茸】
近頃、きのこ狩り仲間の間で
噂になっているきのこがある。
静かな森の奥深く、
ポルチーニ茸の群生しているエリアに
そのきのこは存在している。
ただのポルチーニではない。
その色艶、香り、大きさ、
どれをとっても群を抜いている。
見つけた!と思って手を伸ばすと
まるで、フッと消えてしまったかのように
少し離れた場所に移動するのだ。
その素早さゆえについた名前が
—— 俊敏ポルチーニ茸。
そして、挑発するかのように
さらなる芳香をふりまく。
えもいわれぬ魅力的な香りらしい。
まだ誰もその幻のきのこを手にしたものはいない。
その噂を聞きつけたのが、
町で小さなイタリア料理店を営むシェフだった。
「そんなものが本当にあるなら、ぜひ料理してみたい」
そう言って彼は、噂の森へ向かった。
何時間も探し回って、
ただの噂だったかと諦めかけたそのとき、
ポルチーニ茸の群生を発見した。
その中でひときわ目立つ大物。
『これか!』と、手を伸ばしたそのとき、
何かが目にも留まらぬ速さでよぎった。
リスだった。
リスが、ポルチーニ茸を咥えて
こちらを見ている。
「おい!私が見つけたポルチーニだ。返せ!」
そう叫んだが、リスはきびすを返し
ものすごい速さで森の奥に逃げ込んだ。
「俊敏なのは、リスだったのか。。。」
シェフはたいそうがっかりしたが、
周りに沢山生えているポルチーニを摘んだ。
そして店に帰り、
”幻のポルチーニ茸リゾット”としてメニューに載せた。
おわり。
下記の企画に参加させていただきました。
お題【俊敏ポルチーニ茸】
#毎週ショートショートnote #俊敏ポルチーニ茸 #ショートショート
では、また。
ごきげんよう。
