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「あ、空だ…」|浮上した瞬間に見える空の色がずっと忘れられない話 #ダイビング #海が好き #エッセイ #ScubaDiving #OceanLovers

ダイビングの終わりに水面へ顔を出した瞬間、思わず空を見上げてしまうことはありませんか?

「あ、空だ…」
「さっきまで魚と一緒にいたのに」
「なんだか遠い場所から帰ってきたみたい」

そんなふうに感じて、少しの間ぼーっとしてしまうあの時間

今日は浮上して最初に見えるあの空の色と、海と地上の境目で感じる不思議な切り替わりの時間についてのお話です


海の中から見上げる空は、ゆらゆらしている

浮上の前に、浅いところで数分とどまる時間があります
体を水圧の変化に慣らすための、安全停止と呼ばれている時間です

その数分間はたいてい上を見ています

頭の上には水面がゆれていて
その向こうに空の明るさがにじんでいる

太陽の光が水面で砕けて、白い模様になってゆらゆら動く
魚のシルエットがその光の中をすっと横切っていく

自分の吐いた泡が光に向かってのぼっていくのを、目で追いかけるのも好きなんです
泡は銀色の粒になって、水面のところでぱっと空に溶けていく

あの泡は一足先に空の世界へ帰っていったんだな
なんて考えてしまうこともあります

波がおだやかな日ほど、水面ごしの空はくっきり見えます
その日の天気を、海の中から先に受け取っているような時間なんです

正直この数分間が一本のダイビングの中でいちばん好きかもしれません

深く潜っている間は景色に夢中で、上を見ることってあまりないんですよね
だからこの時間だけは、ゆっくり空側の世界を眺められるんです

顔を出した瞬間、世界の音が帰ってくる

浮上はガイドさんの合図に合わせて、ゆっくりゆっくり上がっていきます
急いで上がらないことが体を守ることにつながっているからです

そして水面に顔を出した瞬間
最初に感じるのはまぶしさです

さっきまで青いフィルター越しの世界にいたのに、突然本物の太陽の光が目に飛び込んでくる
目を細めながら見上げた空がびっくりするくらい青いことがあるんです

潜る前にも同じ空を見ていたはずなのに、上がってから見る空はまるで別物なんですよね

それから音が帰ってきます

波の音
ボートのエンジンの音
先に上がった仲間の笑い声

海の中では自分の呼吸の音だけだったのに、水面に出たとたん世界の音が一気に戻ってくる

頬に当たる風や潮の匂いもそうです
海の中には風も匂いもなかったんだと、そのとき初めて気づくんですよね

マスク越しの視界には水滴がついていて、その粒の向こうで空がきらきらしている
海の中ではあんなに軽かった器材が、急にずっしり重く感じられるのもこの瞬間です

ああ、地上に戻ってきたんだな
と頭より先に体が教えてくれる感じがします

あの切り替わりの数秒間は、何度経験しても不思議な時間です

まぶしいのは、光のせいだけじゃない気がする

どうしてあの空はあんなに心に残るのかな?

私なりに考えたことがあります

ひとつは目の慣れだと思います
深く潜るほど赤い色は水に吸われて消えていって、世界は青一色に近づいていく

その目のまま見上げるから、空の青も雲の白もいつもより鮮やかに見えるんです

あとから知ったんですが、水の中では色の見え方そのものが変わっているそうです

でも理屈だけじゃない気もしています

海の中にいる間は少しだけ緊張しているんですよね

空気の残りは大丈夫かな?
みんなとはぐれていないかな?
耳の調子はどうかな?

そんな小さな確認を、頭のどこかでずっと続けている

だから水面に出て空が見えた瞬間

「ああ、帰ってきた」

という安心が体の力をふっとゆるめてくれる

地上に住んでいる私たちにとって、海の中はやっぱり特別な場所なんだと思います
呼吸ができるのは器材のおかげで、いられる時間にも限りがある

だからこそ帰ってきた瞬間の空が、あんなにやさしく見えるのかもしれません

あのまぶしさには、安心の色が混ざっている気がします

空の色は、その日の海の続きになっている

晴れた日の、真っ青な空
夕方に近い、少しオレンジの混ざった空
曇りの日の、白くてやわらかい空

浮上したときの空は毎回違います

不思議なもので、私はその日出会った魚と同じくらい、浮上したときの空を覚えているんです

ウミガメに会えた日の空
流れが強くて少し疲れた日の空
特別なことは何もなかったのに、なぜか気持ちよかった日の空

ログブック(潜った記録をつけるノート)には魚の名前を書く欄はあっても、空の欄はありません
それでも記憶の中では、あの日の海とあの日の空がセットで保存されているんです

あとからページをめくると、書いていないはずの空の色まで一緒に浮かんでくるから不思議です

思い出の中では海の景色と空の景色がひとつづきになっているんですよね

ボートに上がってから、みんなでなんとなく同じ空を見ていることもあります
言葉にしなくても伝わる、同じ景色を見てきた人同士のゆるい時間でした

ソラウミトラベルという名前で発信を始めたのも、振り返るとこの空と海がつながる感覚が好きだったからなのかもしれません

浮上の時間を味わう、3つの小さな楽しみ

最近の私がやっている、ささやかな楽しみ方があります

1つ目は、安全停止の間に一度だけ真上を見てみること

もちろんガイドさんやバディさんの近くにいて、周りの様子を確認しながらが前提です
そのうえで見上げる水面は、光がレースのカーテンみたいにゆれています

「今日はどんな空なのかな?」

と想像する時間になるんです

2つ目は、顔を出してもすぐに動き出さず、ひと呼吸だけ空を見ること

浮上した直後は器材の確認やボートへの移動で意外とあわただしいんですよね
私の場合、ガイドさんの指示を確認したあとに、ひと呼吸だけ空を見る間を作るようになりました
それだけでその日のダイビングの印象が少しやわらかくなる気がします

3つ目は、その日の空を一枚だけ撮っておくこと

私は水中カメラを持って潜ることが多いので、最後の一枚は空と決めています
あとから見返すと、魚の写真よりその一枚の方がその日の気持ちを思い出させてくれることがあるんです

白っぽくにじんだ空の写真でも、見た瞬間にあの日の風や潮の匂いまで戻ってくる気がします

きれいな空じゃない日も、ちゃんと覚えている

いつも青空が待っているわけではありません

曇りで空が白い日もあります
雨のしずくが水面に落ちてくる日もあります
波が高くて、空どころじゃない日もあります
浮上そのものに気を取られて、見上げる余裕がない日だってあります

それでも大丈夫です
毎回きれいな空じゃなくていいんです

あとから思い出すと、白い空も雨の水面も不思議とその日の一部になっている

海は毎日同じ顔をしていないし、空も毎日同じ色をしていない

だから、毎回見上げてしまう
だから、毎回少し違う気持ちになる
だから、また潜りたくなる

あなたが次に浮上したとき、頭の上にはどんな色の空が広がっているのかな?

おわりに

浮上して最初に見える空はその日の海が最後にくれる景色です

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海はきっと、今日もやさしく受け止めてくれます


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