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無理をしないひな祭り|去年の匂い袋が香る夜

今日はひな祭り。

けれど午前中は仕事。
午後は市役所へ行き、その足で一番上の娘のメガネを作りに。

ようやく家に戻ってきたときには、体も心もすっかり疲れていました。

本当は、茶碗蒸しを作って、ちらし寿司を仕込んで。
桃の節句らしく、きちんと整えた食卓にしようと思っていたのです。

でも、どうにもやる気が出ない。

ちょうど駅のショッピングモールでメガネを作っていたので、娘と相談して、今年は買って帰ることにしました。

道明寺もお寿司も、お店のものに。
私が作ったのは、お吸い物と菜の花のお浸しだけ。

それでも十分、春の色になりました。

昔は、何でも手作りしようとしていました。

子どもたちに日本の伝統行事をきちんと伝えたくて、毎回、必ず、形にして。

桃の花をイメージした匂い袋も、そのひとつです。
今年は、それも作っていません。

けれど、去年の匂い袋がまだやわらかく香っていることに気づきました。

不器用な私が、生徒さんと一緒に仕立てた、うさぎの匂い袋です。

びっくりしながらも、なんだか嬉しくなって、そのまま飾ってみました。

新しく作らなくても、去年の私が、ちゃんと今に残っている。

時間を越えて残る香り。
なんだか、いいですよね。

ひな祭りは、「きちんと整える日」でありたい。
そんな思いがあるのも本当です。

けれど今日は、

甘酒の湯気。
はまぐりのお吸い物の塩気。
菜の花のほろ苦さ。
道明寺のやさしい甘さ。

それらが重なって、十分に春の空気になっています。

完璧でなくてもいい。
作らなくてもいい。

今年は、“無理をしないひな祭り”。

それもまた、季節の整え方なのかもしれません。

桃の節句は、春の「温と湿」がゆっくり動き出す合図。

焦らず、無理せず、空気をやわらげること。

今日はそれだけで十分。

去年の匂い袋の香りとともに、
静かなひな祭りの夜です。

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