70歳から始めた人に、食べ方を教わる
今日はちょっと、
身内の話をさせてください。
妻の、いとこのお母さん。
つまり、ぼくから見れば
"妻の叔母さん"にあたる方なんですけど。
この方に、うちのケーブルテレビの番組を、 もう丸5年、作ってもらっているんですよ。
話せば、長いんです。
ぼくと妻が付き合い始めた頃、
彼女の実家によく出入りしていまして、
そこでこの叔母さんと
顔を合わせるようになった。
ぼくがケーブルテレビ局に 勤めているという話が、 どこかで耳に入ったんでしょうね。
「ちょっと相談したいんだけど」
と、家の近くに住んでいた叔母さんが、
ぽつっと話を持ってきてくれたんです。
時期は、ちょうどコロナ真っ只中。
安倍さんが総理大臣で、
国民一人に10万円が給付されていた、
あの時期です。
「あの10万円で、 動画編集用のパソコンを、
買おうかと思っててね」
当時、叔母さんは、 60歳を超えていました。
勤めの仕事はまだ嘱託で続けていて、
動画編集なんて、 これまでの人生で
一度も触ったことがない。
でもなぜか、 やる気だけは、満ちている。
「どのパソコンがいいかな」
「編集ソフトは、何を使ったらいい?」
詳しい人に聞きながら、 ずっと前から、
ずっと前から、 調べ尽くしていたんですよ。
ぼくも知っている限りのことを伝えて、
「できる範囲で、
いくらでもサポートしますよ」
と。
そこから、始まったんです。
最初は、もう完全に素人です。
パソコンの調子が悪くなれば、電話がくる。 使い方がわからなければ、電話がくる。
それはそうですよ、 初めてなんですから。
でもね、この叔母さん、
ぐんぐん上達していくんですよ。
日に日に、です。
そして、ある日、
「番組を作りたい」と言い出した。
うちのケーブルテレビで、
自分の番組を持ちたいんだ、と。
正直、びっくりしました。
うちの会社、 少人数でやっているという話は
もう散々書いてきていますけど、
「動画編集をやってくれる人」
というのは、本当に貴重なんですよ。
なかなかいないんです、これが。
しかも、叔母さんは
「無償でいい」とおっしゃる。
本来なら、こちらとしては
お金をお支払いしたい。
でも、素人の方に、
いきなり相応の報酬を出すというのも、
会社として難しいところがあって。
「無償でいいから、やらせてほしい」
─そこまで言っていただいて、
じゃあ、ぜひに、と。
聞いてみると、 叔母さんには、
叔母さんなりの想いがあったんですね。
60年以上生きてきて、 ずっと仕事一筋で、
地元の人付き合いが ほとんど無かった。
「地元のことを、発信したい」
それが、動機だった。
正直、ぼくから見ると、
叔母さんは、愛想がよくて、
人との関係を結ぶのが上手な、
そんな方に見えるんですよ。
だから、 「地元との関わりが薄かった」 と
本人の口から聞いたときは、 意外でしたね。
自分の中にあった人物像が、
ちょっと揺れた。
家族からは、反対されたそうです。
息子さんが二人、
30代後半でいらっしゃって、
特に長男さんが、
「今まで何もやってこなかったのに、
なんで今さらそんなこと言うんだ」
と、強めに止めに入った、と。
心配もわかるんですよ。
60歳を超えて、素人同然で
番組なんか始めて、 批判でも受けたら、 落ち込むに決まっているじゃないか、と。
でも、叔母さんは、
根気強く家族を説得したそうです。
そこから、丸5年。
最初は「持ち込み素材」という形で─
主催者側に撮影してもらったデータを
こちらで編集する、
という体裁で始まったんですけど、
だんだん、
ちゃんとした"番組"になっていって、
いまでは、月1本、15分の番組を、
ほぼ自分の手で仕上げてきてくれます。
ぼくが表現の微修正をお願いしても、
サッと直してくれる。
ありがたい限りです。
途中、面白い出来事もありました。
うちでは毎月、 番組表のカレンダーを
発行しているんですけど、
持ち込み素材というのは、基本的に
そこには載せない運用だったんですね。
「いつ辞めてもおかしくないから」
本人がどれくらい続けてくれるか、
まだ読めなかったので、
ぼくは慎重な姿勢でいたんです。
ところが、ある月、 ぼくがうっかり、
番組表にその番組を書いてしまった。
本当に、うっかりです。
2ヶ月ほど経ってから、
叔母さんが別ルートで、
「番組表に、載ったみたいだねえ」
と耳にして、そこで気づいた。
ぼくも、「あっ」と。
ただね、 結果的には、
それで良かったんです。
「いつ放送されるの?」
という問い合わせが、
実はすでに増えていて、
楽しみにしている視聴者が、
こちらが思っていた以上にいた。
ぼくの"うっかり"のおかげで、
番組表に、正式に載るようになった。
失敗というのは、時々、 こういう形で
物事を前に進めてくれますよね。
……と、ここまでが、前置きです。
長い。 本当に、長い。
でも、この叔母さんがどういう人か、
ある程度知っておいてもらった方が、
今日ぼくが書きたい話が、
ちゃんと着地する気がしたんですよ。
本題、ここからです。
最近ね、この叔母さんが、 少し痩せたんです。
不健康な痩せ方じゃなくて、
すっきりした、いい痩せ方。
「何かしてるんですか?」
と聞いたら、 返ってきた答えが、
これでした。
「ファスティング、やってるの」
ファスティング。
いわゆる、絶食ですよね。
24時間何も食べない、
というやつかと思ったら、
叔母さんのやり方は、違いました。
「24時間のうち、6時間だけ食べるの。
残りの18時間は、水か、薄めのコーヒーだけ」
具体的には、
昼の12時から夕方の6時までは、
好きに食べる。
夕方6時以降から翌日の昼12時までは、
口にするのは水かコーヒーだけ。
18時間、固形物を入れない。
これを2ヶ月ほど続けたら、
体調がものすごくいい、と。
「食べるっていう行為そのものが、
実は体に、結構なストレスを与えてるのよ」
叔母さんは、そう言うんです。
夜なんて、寝るだけじゃないか、と。
大げさに言えば、 寝るためにわざわざ
重い食事を入れる必要はない。
朝だって、
起き抜けに無理して食べなくていい。
お腹が空いたら、食べる。
それを聞いて
「野生動物は、
時間通りに3食食べたりしない」
と思ったんですよ。
自然界の動物は、
弱肉強食のなかで生きているから
比べにくいですけど、
"動物としての感覚"で言えば、
お腹が空いたら食べる、
それで十分のはずなんです。
ぼくには、思い当たる節がありました。
朝ごはんを食べない日は、 午前中、
意外と冴えているんですよ。
逆に、きちんと朝食を入れた日は、
お昼が近づくにつれて、
妙にお腹が空いてきて、
集中力がスッと落ちる。
体って、正直ですよね。
1日3食が絶対的な正解、 という感覚は、
若い頃は、良かったのかもしれない。
でも、40を過ぎてから、
同じ食べ方を続けるのは、
どこかで、もう違う気がしていたんです。
ぼくは先日、42歳になりました。
腰も痛いし、 胃のあたりには、
ずっと付き合っていかないといけない
ちょっとした病名もある。
運動不足も、正直ある。
40を過ぎてから、 体のガタつきが、
ぐっと来たんですよ。
年齢に応じた食べ方を、
そろそろ見直さないといけないな、
とは、前から思っていた。
そこに、
"60歳を超えて
動画編集を始めた叔母さん" が、
2ヶ月の自分の実体験とともに、
具体的なやり方を教えてくれた。
これ、断る理由がないんですよ。
で、始めてみています。
今ちょうど、3日目くらい。
驚いたのは、
思ったよりお腹が空かない、ということ。
正直、始める前は、
「夕方6時以降に食べないなんて、
寝る前に空腹で耐えられないんじゃないか」
と思っていたんです。
でも、意外と、だいじょうぶなんですよ。
今日も、 10時半くらいに
少し空腹感が来ましたけど、
「早く12時にならないかな」
と思っているうちに、
気づけば、昼になっている。
それだけです。
これからは、 食べるものの中身
食物繊維とか、野菜の量とかも、
ちゃんと見直していくつもりです。
でも、まずは、
「18時間、食べない時間を作る」
この一点だけを、続けてみます。
叔母さんの話、 最後にもう一度だけ。
60歳を超えてから、
動画編集を始めた人です。
家族に反対されて、
それでも根気強く説得して、 5年続けて、
今では、ぼくの番組ラインナップの
大事な一角になっている。
そして、その叔母さんが、 42歳のぼくに、
「食べ方、ちょっと見直してごらんなさい」
と、静かに教えてくれている。
人生、いつ始めるか、じゃない。
続けられるかどうか、なんですよね。
そして、 自分より年上の人から学ぶ、
という当たり前のことを、 ぼくらは意外と、 ちゃんとやれていなかったりする。
18時間ファスティング、 続けてみて、
どうなったかは、 またどこかで書きます。
これも、続けてみないと、
わからないことなので。
SORIN
