マジョリティの「特権」について考える
──段差のない世界の片隅で
地下鉄のホーム。双子用ベビーカーを押す私は、点検中で停止したエレベーターを前に立ち尽くした。駅員を呼ぶボタンを押す。5分待って、ようやく駅員が手伝いに来てくれた。彼――“健常者”の多数派――にとって、階段は軽々と超えていける存在。
この「気づかずに越えられる段差」こそが特権です。
みなさんがどのような「特権」を手にしているのか、一緒に考えてみましょう。
以下のチェックリストをぜひつけてみてください。

お気づきだと思いますが、マジョリティ側にチェックが多くつけばつくほど、あなたは「多くの特権」を手にしています。特権とは「自動ドア」のようなもので、目の前ですっと開いていくので、ドアの存在すら気付くことができません。
マジョリティ性の特権を多く持てるということは、どういうことでしょう?
特権について研究をする上智大学の出口教授はこう語ります。
では、マジョリティ性を多くもつ人たちは、マイノリティ性を多くもつ人と比べて何が違うのだろうか。マイノリティ側は差別や偏見の対象となっているが、マジョリティ側は日々そのような体験をせずに済んでいる。
差別されずに生きていけるということは、差別によって精神的にダメージを受けたり、自信を喪失したり、抗議の声を上げるといった行動にエネルギーを消耗したり、そうした行動をとったことで非難されたり、といった負のスパイラルに対処しなくても生きていける恩恵があるということだ。こうした恩恵こそが特権と呼ばれるのである。
就職で差別されたり、不利な立場に置かれない。不自由なく引っ越しができる。当たり前のように大学に通うことができた(できている)。好きな人と堂々とデートしたり、結婚できる。こうしたものができないことによる「生きづらさ」が起きるのです。マイノリティでいることで、「説明責任」の非対称性が生まれます。精神的負担や労力が多くかかることが想像にかたくないですよね。
特権の自覚がなぜ重要か
なぜ特権を持っていることを自覚しなければならないのでしょうか?
それは自分が特権があることに気づかないと、自分に「生存者バイアス」がかかり、「これができて当たり前」(=できていないと怠けている)といった自己責任論を持つようになったり、「自分は差別などしていない」という差別意識に無自覚になってしまうからです。
さらに特権意識に気づかぬまま、また「これは逆差別だ」と感じてしまうことも。
例えば「女性専用車両」にたいして、未だ「女性優遇」「男性への逆差別だ」という声が止みません。それは女性が電車内で性的暴力にあいやすい(相対的に男性はあいずらい)という特権に気づいていないからです。
私自身、健常者としての特権を強く意識したのは、双子を連れて電車に乗るようになってからです。冒頭にベビーカーのエピソードを書きましたが、双子のベビーカーは通常サイズの 1.5倍。重量も20kg は超えているので1人で持ち上げることはできません。エレベーターのない場所で困ったことは数えきれません。それまで、私はエレベーターの有無についてあまり気づくことや困ったこともなく、問題なく足で歩くことができる健常者としての特権に気がついた瞬間でした。
また一つ、男性特権として考えられるシチュエーションとして、男性であれば育児の主体者として免れるという風潮がまだ残っていることです。(全家族とはいいませんが)育児・家事をしなくてよければ、残業や飲み会について気にすることなく、子育て中であろうと自分の時間を仕事に当てることができます。
例えば、男性は「今日飲み会いってくる」と許可を得る必要なく、会食にいけるにも関わらず、女性側は「今日飲み会いってもいい?」と許可を取らねばならない。子供が熱を出したら仕事を休んで調整するのは女性側。これはジェンダーの非対称性を物語っており、男性という日本経済社会におけるマジョリティの特権だといえます。
特権に気がついたら、どうしたらいいのか?
最後にこの動画をみてください。
特権のあるなしを可視化する簡単なゲームをしている子供たちの動画です。前に進める子もいれば、後から一歩も動けない子もいる。スタート地点が明らかに不平等です。それがこの社会の現実です。
特権について理解したとき、私たちは何をすべきでしょうか?
1. 特権を持っていることを自覚する。
まずは自分がどのような特権を持っているのかを認識することが第一歩です。読者の方はお分かりいただけると思いますが、特権性に気づかずにいる人にたいして批判するのは逆効果です。自ら気づくことができる人はごく少数です。その場合は、当事者である身近な友人や知人が「抑圧された経験」を持っていることを聞くことで、より当事者への境遇を理解できるようになるそうです。当事者の声を聞く機会を増やす、あなたが当事者なら、マジョリティに聞いてもらう関係や環境をつくることが大切です。
2. アライ(同盟者)になる。
特権を持たない人々の声に耳を傾け、その課題解決のために寄り添い、声を上げることも大きな力になります。ERGや当事者のグループに参加し、耳を傾けることができたら、支持する行動を取りましょう。イベントに参加する、有害な行動を見たら口に出して制止するなどバイスタンダーになることはアライとして大きな力となります。例えば、女性に対して「上司は敬うものだよ」「グラスがあいてるんだからつがないと」という男性がいたら、「それはどうかな」と意見する、といった行動です。
特権は持っていれば、持っているほど気づかないものです。
「寝る間を惜しまずに仕事しないなんて甘え」「行動しないなら甘えている」といった自己責任論にモヤモヤしたことがある方はぜひ、この記事を知人に話してみてください。
参考:
https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/00078/091300034/?P=4
https://www.pref.mie.lg.jp/JINKYOUI/HP/m0207800035.htm
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