働き方改革、改め働いてもらい方改革 橋本 拓也著「部下を持ったら一番最初に読む本」

普通に会社勤めする場合、ほぼすべての人が部下から始まる。上司のやり方などわからない。そんな人が急に上司になると、自分の過去数人の上司を参考に、やり方を模索することになる。その結果低くない確率で失敗する。私が管理職になりたての時もご多分に漏れず、であった。

本書ではマネジャーには免許証が必要であり、多くのマネージャーが無免許でマネジメントに当たっているとする。マネジメントは技術であり、その技術を学べばだれでも免許を取得できると述べる。私もいろいろな失敗を繰り返し、書籍を読み漁り、マネジメントへの理解が進んできたと感じている。そんな中で、自分は免許を取得できているのか確認してみることにした。

現代は物質的に豊かになり、限りなく理想に近いように見える。誰もが欲しがるものなど、すでにお金と時間と健康だけかもしれない。昔のように猛烈に働いて、たくさん物を作れば成長できる。そんな世の中ではすでにないため、社員の体力や根性に依存するのではなく、知恵や独創性を引き出すことが重要になっている。そんな前提でマネジメントを行わなければならない。

そのためには、部下ではなくマネージャーが考えを変える必要がある。それが本書を貫くメッセージだ。

「マネージャーは成果よりも部下の成長にコミットする。」数字的な成果はまぐれ当たりがあるので、それを追い求めすぎるのはよくない。持続的に会社が成長するためには、人財たる社員が成長して資産価値を高める必要がある。そのためには、外部からの強制力ではなく、内発的な気づきが必要だ。

マネージャーが部下の成長を促すには、部下に話を聞いてもらわなければ始まらない。「自分が正しく相手が間違っている」「相手をコントロールできる」という考え方は改め、部下と信頼関係を築き、部下の”上質世界”に入れてもらわなければならない。”上質世界”という言葉は耳慣れないが、ここでは説明を割愛する。興味がある方は本書を読んでほしい。

メンバーが自発的に動くようになるには、各人の目的・目標をしっかり認識することが必要だ。そのためのサポート・アドバイスをできるのが優れたマネージャーだ。

社員が成長をめざす組織を作るために、組織の水質、すなわち文化や風土、当たり前の基準をコントロールすることもマネージャーの役割である。超優秀でいい成績を残すが、人としてとても問題がある。こんな人を許していては組織が死んでしまう。数字が出れば何をしてもよい。自分一人がしっかり成果を出せばよい。こんな人ばかりになれば、”会社”という組織を作る必要はない。組織の水質管理は何より重要だ。そのスタートとして、各従業員に組織のありたい水質を理解してもらう必要がある。この組織ではどのような価値観を大切にしているのか。これを伝えるのはマネージャーの役割である。

マネージャーはとても忙しい。他部門から仕事の依頼もたくさん来るだろう。それに忙殺されていては、マネージャーと部下とは何も変わらない。マネージャーがやるべき仕事は組織の将来を描き、それに向けた施策を考えること。つまり、緊急性は低いが重要度が高い仕事に注力することだ。そのためには、緊急度が高く重要な仕事を部下に委任し、緊急度が高く重要ではない仕事を減らし、緊急度が低く重要ではない仕事をやめていく。ここで重要なのは、部下の成長を考えて委任すること。そのためには、仕事の重要性や意味・その人に委任する理由をしっかり伝えた上で、途中経過の報告方法を明確にする。こうした丁寧な委任が必要になる。

部下の成長を追い求める組織にする。それはとても重要だと思うが、日々の仕事に忙しい中で、各マネージャーが考えて行うのは心もとない。それよりも組織として仕組化した方が確実だ。本書では、筆者の勤めるアチーブメント社の仕組みを通して、理解することができる。

10年ほど前、働き方改革が話題になり始めたころ、部署で働き方改革のワークショップを行った。当時の上司の言葉が印象に残っている。「働き方改革というけれど、自分の立場からは働かせ方改革だと思っている。皆さんの力を引き出すには、いろんな意見を聞いた上で、私(上司)の責任で働かせ方を決めるしかない。そうした意見を聞くために本日は活発な議論をお願いしたい。」

昔は部下を追い込んで働かせればよかった時代もあったように聞く。しかし、課題が複雑になりすぎたこのご時世、それではうまくいかないだろう。モチベーション高く社員が成長を追い求めるような組織でないと、組織の成長もおぼつかない。マネージャーは私の昔の上司のように、能力を引き出す働かせ方を考える、もっと言えば働いてもらい方を考えることなのだろうと考える。本書はそうした考え方の整理に役立つ。マネジメントのあり方に一本軸を通したい方にお勧めの一冊。

いいなと思ったら応援しよう!