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セクシュアリティの視点から見たアニメ「ラブライブ!」

1. はじめに


 アニメ「ラブライブ!」は女性アイドルを描いた作品である。女性アイドルは輝かしい世界である反面、性的に消費されることもあり、時には男性ファンの性的消費の対象となることを狙って売り出される場合もある。二次元アイドルにおいてもそれは同様であり、「ラブライブ!」のファン層も多くは男性である。

 しかし、同作品を元にした音楽ゲームの男女比は、男性が53.9%、女性が46.1%と、半数近くの割合で女性ユーザーがいる 。さらに、同作品のキャラクターを演じる女性声優がライブをするリアルイベントがあるが、女性限定ライブが開催され、会場は満席となった。このように、同作品は男性ファンだけでなく、女性ファンにも支持されていることが分かる。その理由は、同作品が単に女性アイドルの性的魅力だけを描いた作品ではないからである。

2. あらすじ


 ごく普通の女子高校、音ノ木坂学院は統廃合の危機に瀕していた。学校の危機を救うため、主人公高坂穂乃果を中心とした9人の女子生徒はスクールアイドルとして活動することを決意した。自分たちがスクールアイドルとして活動することで、学校を世に広く宣伝し、入学者を増やすことが目的である。彼女たちは数々の困難を乗り越え、廃校を阻止することに成功した。

 さらに、廃校阻止だけに留まらず、第二期ではスクールアイドルの祭典である「ラブライブ!」にて優勝し、スクールアイドルとしての彼女たちの夢を叶えた。

3. セクシュアリティの視点から見た長所

 同作品は単に女性アイドルの性的魅力だけを描いた作品ではないと述べたが、セクシュアリティの視点から見ると以下に挙げる長所がある。


(1) 女性によるリーダーシップ
 まず、廃校の危機を救うためにスクールアイドルを主導する主人公高坂穂乃果は本作品のアイドルグループのリーダー的存在であり、物語の発端でもある。また、生徒会長である絢瀬絵里、副会長の東條希は学園のリーダーとして業務をこなしている。さらに、南ことりの母は学園の理事長を務めている。


(2) 個性ある女性の主体性・積極性
 キャラクターそれぞれに得意分野があり、集団において個別の役割を担っている。プロデューサーやマネージャーはいない。そのため、一人一人が主体的に行動する。例えば南ことりは衣装担当、西木野真姫は作曲担当、園田海未は作詞担当といったように、基本的には彼女たちだけの力でアイドル活動をする。


(3) 女性同士の親密な関係性
 メンバーの中に、異性と恋愛する者はいない。性格も好みもバラバラな彼女たちであるが、廃校の危機を救うため、さらにラブライブ優勝のために力を合わせ、女性同士で強い絆を築いていくのである。グループ存続について真剣に話し合い、解散を決め、メンバー全員で抱きしめ合いながら号泣する姿からは、ただの友達や仲間というよりも、もっと深い関係にあるように感じられる。


(4) ありのままの自分でいることの受容
 彼女たちは作中で、ありのままの自分でいることをメンバーによって肯定される。例えば、星空凛は幼い頃スカートを履いたときに男の子からからかわれたことがトラウマで女の子らしい服装を避けていた。しかし、本当は女の子らしい服を着てみたいという思いがあった。メンバーたちはその思いを汲み取り、ファッションショーステージにてメンバー全員タキシード姿で凛を迎え、凛にフリルの可愛い衣装を着せてセンターに立てた。凛はその後、今まで着ていたボーイッシュな練習着を女の子らしい練習着に変えた。ありのままの自分でいることを肯定されたのである。アニメシリーズの各回において、メンバー各々にスポットライトが当てられ、このような描写がされる。


 以上のように、同作品には、セクシュアリティの視点の中でも特にフェミニズムの観点から評価できる部分が多数ある。それが女性ファンに支持される一つの理由ではないかと考える。

4. 依然として残るステレオタイプなアイドル像


 しかしながら、同作品には女性的な魅力を強調するような描写や表現が多々含まれる。


(1) 女性らしい外見
確かに彼女たちは個性あるキャラクターではあるが、外見に関しては皆整った女性らしい容貌であり、あまり遜色がない。例えばセーラームーンに登場する天王寺はるかのような、中性的なキャラクターは居ない。


(2) 女性らしさを強調する衣服
 衣装の大半はスカートであり、太ももからふくらはぎにかけて脚を大きく露出している。衣装によっては、胸が強調されるようなデザインのものもある。ジャケットとパンツの衣装が登場したのは、作中で一度だけである。


 同作品は、ストーリーやキャラクターの内面については、フェミニズムの観点から評価できるところが大きいが、外見や衣服においては多様性に欠けており、女性らしさを求めた保守的なアイドルであると言える。

 しかし、売上という経済的視点から考えると、整った可愛い容姿で、女性らしい衣装を着ているアイドルの方が人目を惹くため、二次元女性アイドルを描く以上、これらを全く変えてしまうことは不可能である。

5. ポスター問題


 同作品のシリーズ派生作品ではあるが、静岡県沼津市を舞台にした大人気コンテンツ「ラブライブ!サンシャイン!!」が同市の特産品「西浦みかん」をPRするJAなんすんのポスターがネットで波紋を広げた。ポスターは、ミカン畑で主人公高海千歌がミカンを手にして微笑むものである。しかし制服のスカートが極端に短く、なぜか股間や臀部のラインまでくっきりと描かれていることから、「気持ち悪い」「制服のスカートがシースルーってどういうこと?」「なんで公共の場で貼るポスター絵のスカートが透ける必要があるのだ」等、批判的なリプライが相次いだ 。多くの批判を受け、結局ポスターの絵は差し替えられた。


 この問題に対して、作品の一ファンとして、私が当時思ったことは、「こんな表現をしなくても十分PRになっただろうに」であった。「ラブライブ!」同様、「ラブライブ!サンシャイン!!」も、キャラクター性やストーリーによって多くのファンから支持されている。スカートを本編よりも短くして、股間を強調しなくても、よかったはずだ。当該表現は公共の場やキャンペーンにおいては適切といえず、批判されても仕方がない。さらに、作品を知らない人にとっては、同作品が公共の場で貼るポスターで不適切な表現をするような作品であると考えられ、むしろ作品のイメージダウンになってしまっただろう。


 同シリーズ作品のキャラクター像は非常に不安定である。女性アイドルという性的消費の象徴のような立場にありながら、そのキャラクター性やストーリーはフェミニズム的に評価できる部分が多い。しかしながら、このポスター問題のように、過剰な描写をしてしまうと、一変して女性の性的消費であると批判がなされてしまう。

6. おわりに


 アニメ「ラブライブ!」は終了してしまっているが、「ラブライブ!シリーズ」は今もなお続いており、新たなアニメシリーズが次々に放送されている。NHKで再放送がされるなど大きなコンテンツになった。多くの人に視聴され、影響力のある作品であるからこそ、今の時代女性キャラクターを必要以上に性的に描くことは好ましくない。作品として適切なラインを見極め、表現に配慮する必要がある。

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