【実話】第三十四話。彼女の「行ってみたい」のために、作業着姿で直談判して勝ち取ったクリスマスイブの特等席。|GLAY×小悪魔=恋。#34
周囲のカップルたちがそれぞれの交差点で揺れ動くのを横目に、私たちは変わらずに同じ時間を過ごしていた。そんなある日、彼女が「ある田舎のほうに、すごくイルミネーションが綺麗な場所があるらしいよ。行ってみたいな」と口にした。
その言葉を聞いた瞬間から、私のリサーチが始まった。 当然だが、当時はインターネットなどという便利なものは存在しない時代だ。私は本屋へ走り、観光雑誌を片っ端から読み漁った。さらに、周囲の友人や同僚、先輩、上司にまで聞き込みをして情報を集めまくった。ちなみに上司からは「ワシにそんな洒落た場所がわかるわけないやろ」と一言だけ言われてしまったのだが。
そうして必死に集めた情報の結果、その場所にはイルミネーションをガラス越しに眺めながら食事ができるレストランがあることが判明した。
私はすぐに行動を起こした。彼女には「今日は残業だから」と嘘をつき、仕事終わりにそのレストランへ向けて車を走らせた。少し道に迷いながらも、なんとか閉店前に到着することができた。
レストランの方に事情を説明すると、なんと12月24日のクリスマスイブの日に、ガラス際の特等席を予約させてくれるというのだ。本当にありがたかった。 聞けば、電話での予約は非常に多く、当然誰もが「ガラス際のイルミネーションが見える席で」と希望してくるらしい。レストランの人は「ただ、現地まで仕事終わりの作業着姿で直接やってきた若者はあなたが初めてです。あなたに、我がレストランの特等席をご用意いたします」と言ってくれた。 他の予約の方への影響を心配する私に、「大丈夫です、すべての席からある程度はイルミネーションが見えますからね」と笑顔で返してくれた。
これで、最高の舞台は整った。
ちなみに、今年のプレゼントはネックレスに決まっていた。これも二人で話し合って決めたルールだった。「プレゼントは勝手に買わないこと。二人で一緒に見に行って、お互いが気に入ったものをプレゼントし合おう」と。
そして迎えた12月24日。 私は半休をいただいた。あのスーパー技術者の上司には、本当に感謝しかない。 彼女を迎えに行き、行き先は告げずに車を走らせた。予定では19時の予約だったが、少し早めの18時前には現地に到着してしまった。けれど、二人で過ごす1時間の待ち時間なんて、私たちにとっては全く問題のない、むしろ愛おしい時間だった。
目的地に近づくにつれ、助手席の彼女が気づき始めた。 「ねえ、ここってもしかして……あのイルミネーションの……?」 少し興奮気味に喜んでいる彼女の姿が、とにかく可愛くて仕方がなかった。運転を今すぐ辞めて、その場で抱きしめてしまいたかったのを今でもよく覚えている。
予約の時間より少し早くレストランに入る前、私たちはイルミネーションが広がるガーデンのベンチで、その景色を眺めて過ごした。
そうこうしていると、先日予約に行った時に対応してくれた、おじさんのギャルソンが私たちを見つけて声をかけてくれた。 「お待ちしておりました、私(俺君)様。店内へご案内いたします」
案内された店内。あの特等席には、誇らしげに「予約席」という席札が立っていた。 しかも、ガラス際の他の席はすでに別のカップルたちで満席になっている状態だ。 状況を察した彼女が、私の着ている上着の裾をキュッと引っ張ってきた。 「ねえ、予約って……もしかして、あの席?」 私は「さぁね」と、少しとぼけてみせた。
そして、周りのカップルからも羨望の眼差しを向けられるその特等席に、少しその場には不釣り合いな、でも誰よりも幸せなカップル――私と良子ちゃんが腰を下ろした。
