【音楽ジャンル】アンビエントとは?特徴・歴史・おすすめ曲を徹底解説
「アンビエントって、BGMとは違うの?」——そんな疑問を持ったことはありませんか。アンビエント(Ambient)とは、環境音楽とも呼ばれる音楽ジャンルで、リズムやメロディよりも「空間的なテクスチャー」を重視し、聴く人の周りに音の風景を作り出す音楽です。作り方を知りたいDTMユーザーにも人気のジャンルで、この記事ではアンビエントの定義・歴史・おすすめ曲、そしてDTMでの制作方法まで徹底的に解説していきます。
アンビエントとは?ジャンルの基本を理解しよう
アンビエントの定義と特徴
アンビエントは、一言でいうと「聴く空間を作る音楽」です。Brian Eno(ブライアン・イーノ)が1979年のアルバム『Ambient 1: Music for Airports』のライナーノーツで書いた、有名な一節があります。
"Ambient Music must be able to accommodate many levels of listening attention without enforcing one in particular; it must be as ignorable as it is interesting."
(アンビエント・ミュージックは、特定の聴き方を強いることなく、さまざまなレベルの注意に対応できなければならない。それは興味深くあると同時に、無視できるものでなければならない。)
つまり、BGMのように聞き流してもいいし、集中して聴き込んでもいい。その両方の聴き方を受け入れる音楽、それがアンビエントなんです。
サウンドの特徴
アンビエントのサウンドは、一般的な音楽とはかなり異なるアプローチを取ります。
リズム: 明確なビートを持たないことが多いです。ドラムやパーカッションが存在しないか、あったとしても非常に控えめ。時間の感覚を曖昧にするような、浮遊感のあるサウンドスケープが広がります。
音色: シンセサイザーのパッドサウンド(長く持続する柔らかい音)が中心です。リバーブ(残響)やディレイ(やまびこ効果)が深くかけられ、音が空間の中でゆっくりと溶けていくような質感を持っています。
構成: 一般的なポップミュージックのような「Aメロ→Bメロ→サビ」という構成は取らず、音のテクスチャーがゆっくりと変化していく「漸進的な展開」が特徴です。1曲が10分、20分と長いことも珍しくありません。
フィールドレコーディング: 自然環境の音(雨の音、鳥のさえずり、波の音、都市のざわめきなど)を素材として取り込むことも多いです。
一般的な音楽が「聴かせる」ことを目指すのに対し、アンビエントは「感じさせる」「包み込む」ことを目指していると言えるでしょう。
他のジャンルとの違い
アンビエントは、他のいくつかのジャンルと混同されることがあります。それぞれの違いを見てみましょう。
ニューエイジ(New Age)との違い
最もよく混同されるジャンルです。ニューエイジはリラクゼーションやヒーリングを目的とした音楽で、メロディアスで美しい和声が特徴。一方、アンビエントは必ずしも「心地よさ」を目指しているわけではなく、不穏な雰囲気や実験的なサウンドも含みます。Dark Ambient(ダーク・アンビエント)と呼ばれるサブジャンルでは、不安を誘うようなサウンドスケープも作られています。
エレクトロニカとの違い
エレクトロニカは電子音楽の広いカテゴリーで、アンビエントはその一部と捉えることもできます。ただし、エレクトロニカの多くはビートを持つのに対し、アンビエントはビートレス(ビートがない状態)であることが多い点が大きな違いです。Autechre(オウテカ)やBoards of Canada(ボーズ・オブ・カナダ)のように、エレクトロニカとアンビエントの境界を行き来するアーティストも多いですね。
ポストロックとの違い
ポストロックは、ロックの楽器編成(ギター、ベース、ドラム)を使いながらも、従来のロックの構造を解体した音楽です。アンビエント的な要素を持つポストロックバンド(Sigur Ros、Mogwaiなど)も多いですが、ポストロックは基本的にバンドサウンドがベースで、クレシェンド(徐々に音量が上がる展開)を多用する点がアンビエントとは異なります。
チルアウト / チルウェイヴとの違い
チルアウトはダンスフロアの「休憩室」で流すリラックスした音楽を指す総称で、アンビエントを含むこともあります。チルウェイヴは2000年代後半のインディー電子音楽で、Lo-Fiなシンセポップにアンビエント的な浮遊感を加えたもの。どちらもアンビエントの影響を受けていますが、ビートやメロディがより明確な点で区別されます。
アンビエントの歴史:誕生から現在まで
ルーツと誕生(起源)
アンビエントの直接的な始祖は、Brian Eno(ブライアン・イーノ)です。しかし、その前史として触れておくべき人物が何人かいます。
Erik Satie(エリック・サティ) は、20世紀初頭に「家具の音楽(Musique d'ameublement)」という概念を提唱しました。これは「家具のように、そこにあるけれど意識的に聴く必要のない音楽」という考え方で、アンビエントの先駆的な発想と言えます。
John Cage(ジョン・ケージ) は、1952年の「4'33"」(4分33秒の無音の楽曲)で、「環境音そのものが音楽である」という概念を示しました。沈黙の中で聞こえる周囲の音に意識を向けさせるこの作品は、アンビエントの思想的な土台のひとつです。
Kraftwerk(クラフトワーク) やTangerine Dream(タンジェリン・ドリーム)といったドイツの電子音楽(クラウトロック)も、シンセサイザーによる長尺の音響空間を追求し、アンビエントに大きな影響を与えました。
そして1975年、Brian Enoが交通事故で入院していた際、病室でハープの音楽がかかっていたものの、音量が小さすぎて部屋の環境音と溶け合って聞こえたことがきっかけで、「環境と溶け合う音楽」というアイデアに至ったとされています。この体験が、1979年の『Ambient 1: Music for Airports』へとつながります。
このアルバムは、文字通り空港のロビーで流すことを想定して作られました。長い持続音がゆっくりと重なり合い、時間の感覚を曖昧にする——それまでの音楽の常識を覆す、革命的な作品でした。
発展と黄金期
Brian Enoの提唱以降、アンビエントは様々な方向に発展していきます。
1980年代
Harold Budd(ハロルド・バッド)は、Brian Enoとのコラボレーション『The Plateaux of Mirror』(1980年)や『The Pearl』(1984年)で、ピアノを使った美しいアンビエントサウンドを確立しました。深いリバーブに包まれたピアノの音色は、今聴いても息を呑むような美しさです。
1990年代:アンビエントの黄金期
1990年代は、アンビエントが最も多様に花開いた時代です。
Aphex Twin(エイフェックス・ツイン)ことRichard D. Jamesは、テクノの荒々しい実験性とアンビエントの静けさを行き来する稀有なアーティストです。1992年に発表した『Selected Ambient Works 85-92』は、アンビエントテクノの金字塔として今なお絶大な影響力を持っています。
The Orb(ジ・オーブ)は、「アンビエント・ハウス」の名付け親的存在。ダンスビートとアンビエントを融合させた『The Orb's Adventures Beyond the Ultraworld』(1991年)は、クラブカルチャーとアンビエントの架け橋となりました。
Boards of Canada(ボーズ・オブ・カナダ)は、ノスタルジックなサンプルとアナログシンセの温かみを持ったダウンテンポ/アンビエントで、カルト的な人気を誇ります。『Music Has the Right to Children』(1998年)は、多くのDTMユーザーに影響を与えた名盤です。
Stars of the Lid(スターズ・オブ・ザ・リッド)は、弦楽器とドローンを中心にした、壮大で美しいアンビエントを追求。アルバム『And Their Refinement of the Decline』(2007年)は、アンビエントの最高到達点の一つと言われています。
また、この時代にはBiosphere(バイオスフィア)による極寒の北欧を感じさせるアンビエントや、Gas(ガス)によるフォレスト・アンビエント(森の中にいるような音響空間)なども登場し、アンビエントの表現の幅は大きく広がりました。
現在のアンビエント
2020年代に入り、アンビエントはかつてないほどの注目を集めています。
その大きな理由のひとつが、ストリーミングサービスにおける「作業用BGM」「睡眠用BGM」カルチャーの拡大です。SpotifyやApple Musicの「Lo-Fi」「集中」「リラックス」プレイリストにアンビエント系の楽曲が多数含まれるようになり、ジャンル名を知らずにアンビエントを聴いている人が急増しています。
アーティストとしては、Nils Frahm(ニルス・フラーム)がピアノとシンセサイザーを融合させた「ネオクラシカル・アンビエント」で世界的な人気を獲得。ライブパフォーマンスも圧巻で、2018年のアルバム『All Melody』は大きな話題を呼びました。
Grouper(グルーパー)ことLiz Harrisは、ギターとボーカルを深いリバーブで包み込んだ、儚く美しいアンビエントで高い評価を得ています。
また、AI生成音楽とアンビエントの接点も注目されています。長時間のゆるやかな変化を特徴とするアンビエントは、生成AIとの相性が良く、新しい制作手法の可能性が議論されています。
日本での受容
日本は実は、アンビエントの歴史において重要な位置を占めています。
細野晴臣は、YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)での活動と並行して、1984年のアルバム『花に水』でアンビエント的な作品を発表しています。
吉村弘は、1982年の『Music For Nine Post Cards』で日本のアンビエントミュージックの先駆けとなりました。この作品は長らく知られざる名盤でしたが、近年海外のアンビエントコミュニティで「再発見」され、世界的に高い評価を受けています。
坂本龍一は晩年、アンビエント的な作品を多く発表し、2023年のアルバム『12』は自然音とピアノが溶け合った美しい作品として話題になりました。
その他にも、畠山地平(Chihei Hatakeyama)、AOKI takamasa、Hakobune(ハコブネ)といったアーティストが、国際的なアンビエントシーンで活躍しています。
アンビエントの代表曲・おすすめアーティスト
定番:まずはここから聴こう(5選)
1. Brian Eno - "Music for Airports 1/1"
アルバム『Ambient 1: Music for Airports』(1979年)収録。アンビエントの出発点とも言える楽曲です。ピアノとシンセのループがゆっくりと重なり合い、時間の感覚を溶かしていきます。まずはこの1曲から始めてみてください。
2. Aphex Twin - "Xtal"
『Selected Ambient Works 85-92』(1992年)収録。柔らかいパッドサウンドとゆったりとしたビート、そして天使のようなボーカルサンプルが織りなす、美しくも哀愁漂う名曲。アンビエントテクノの入口として最適です。
3. Harold Budd & Brian Eno - "The Plateaux of Mirror"
同名アルバム(1980年)のタイトルトラック。深いリバーブに包まれたピアノの音色が、まるで鏡のような静かな水面に波紋を広げるよう。アンビエントの持つ「美」を最も純粋な形で体験できる一曲です。
4. Boards of Canada - "Roygbiv"
『Music Has the Right to Children』(1998年)収録。ノスタルジックなシンセメロディとローファイなビートが、子供時代の記憶を呼び覚ますような不思議な感覚を与えてくれます。アンビエントとダウンテンポの境界にある名曲。
5. Stars of the Lid - "Requiem for Dying Mothers, Part 2"
『And Their Refinement of the Decline』(2007年)収録。弦楽器とドローンが壮大な音の風景を描き出します。20分を超える長尺の楽曲ですが、その中に身を委ねる体験は格別ですよ。
最新:今聴くべきアーティスト(5選)
1. Nils Frahm
ドイツ出身のピアニスト/プロデューサー。ピアノ、シンセサイザー、パイプオルガンを駆使した、温かくも壮大なサウンドが特徴。アルバム『All Melody』(2018年)がおすすめ。ライブパフォーマンスも必見です。
2. Grouper
アメリカ出身のLiz Harrisによるプロジェクト。ギターとボーカルを極限までリバーブで包み込んだ、儚い美しさが魅力。アルバム『Dragging a Dead Deer Up a Hill』(2008年)は名盤の呼び声が高い作品です。
3. Floating Points
イギリスの神経科学者でもあるSam Shepherdによるプロジェクト。2021年にPharoah Sandersとコラボしたアルバム『Promises』は、ジャズとアンビエントが融合した傑作として世界中で絶賛されました。
4. Kali Malone
スウェーデン拠点のアメリカ人作曲家。パイプオルガンやチューバを使ったドローンアンビエントで注目を集めています。アルバム『The Sacrificial Code』(2019年)は荘厳で瞑想的な作品。
5. KMRU
ケニア出身、ベルリン在住のJoseph Kamaru。フィールドレコーディングとエレクトロニクスを融合させた、場所の記憶を呼び起こすようなアンビエントが特徴。『Peel』(2020年)は国際的に高い評価を得ました。
日本のアンビエント
吉村弘
日本のアンビエントの先駆者。1982年の『Music For Nine Post Cards』は、近年海外で再評価され、世界中のアンビエントファンに愛されています。水彩画のような淡く美しいサウンドが特徴。
Chihei Hatakeyama(畠山地平)
ギターとエレクトロニクスを使った、繊細で広大なアンビエントサウンドで国際的に活躍。100枚以上のアルバムをリリースする驚異的な制作量を誇ります。
坂本龍一
晩年にはアンビエント的な作品を多数発表。遺作となった『12』(2023年)は、闘病中に録音されたピアノと環境音が溶け合う、静謐で美しい作品です。
Hakobune
日本のドローン/アンビエントシーンの重要アーティスト。ギターを素材にした、温かく包み込むようなサウンドスケープが特徴です。
haruka nakamura
ピアノとエレクトロニクスを中心にした、繊細で透明感のあるサウンドが魅力。音楽ジャンルを超えて多くのリスナーに支持されています。
DTMでアンビエントを作るには?制作のポイント
アンビエントは実は、DTM初心者にとって最もとっつきやすいジャンルの一つかもしれません。なぜなら、複雑なコード理論やリズムパターンの知識がなくても、「音の質感」と「空間の演出」に集中すれば、魅力的な作品が作れるからです。「音楽理論がわからなくて挫折した...」という方にも、ぜひ挑戦してほしいジャンルですよ。
リズム・ビートの特徴
ビートレスが基本
アンビエントの多くは、明確なドラムパターンを持ちません。これが「リズムを打ち込めない」と悩んでいるDTM初心者にとっては、逆に朗報と言えるかもしれません。
ただし、完全にリズムがないわけではなく、音のアタック(立ち上がり)や反復パターンが緩やかなリズム感を生み出しています。
テンポ
BPMの概念がほとんど意味を持たないジャンルですが、DAW上での作業のために設定するなら60〜80BPM程度がやりやすいでしょう。グリッド(拍子の区切り線)に縛られない自由な配置を心がけてください。
リズムを入れる場合
アンビエントテクノやアンビエントハウスのように、うっすらとビートを入れるスタイルもあります。その場合は、キックやハイハットの音量を通常のダンスミュージックよりもかなり控えめにし、リバーブを深くかけて「遠くで鳴っている」ような質感にするのがポイントです。
音色・楽器の選び方
パッドサウンド
アンビエントの中核を担うのがパッドサウンドです。シンセサイザーのアタック(音の立ち上がり)を遅く、リリース(音の余韻)を長くした、ゆっくりと現れてゆっくりと消えていく音色を作りましょう。
リバーブ
アンビエントにおいてリバーブは単なるエフェクトではなく、「楽器の一部」とも言える存在です。リバーブのテイル(残響の長さ)を5秒、10秒、あるいはそれ以上に設定して、音が空間の中で長く漂い続けるようにします。ホールリバーブやプレートリバーブの他に、シマーリバーブ(リバーブ音にピッチシフトを加えてキラキラした響きを作る)も人気があります。
グラニュラーシンセシス
グラニュラーシンセシス(音を微小な粒(グレイン)に分解し、それを再構成するシンセシス方式)は、アンビエント制作で非常に強力なツールです。通常の音素材をまったく異なるテクスチャーに変換できるため、ピアノの音がパッドに、話し声が雲のような音響に変わります。
フィールドレコーディング
自然環境の音を録音して素材として使うフィールドレコーディングは、アンビエントならではの手法です。スマートフォンでもいいので、雨の音、川のせせらぎ、カフェの環境音などを録音してみましょう。それをDAWに取り込んでリバーブやピッチシフトをかけるだけで、面白い素材になりますよ。
スロー変化のオートメーション
アンビエントの「漸進的な展開」を作るために、各パラメーターのオートメーション(時間の経過に応じて自動で変化させる設定)が欠かせません。フィルターのカットオフ(音の明るさを決める周波数の境界)、リバーブのウェット量、パンニング(左右の定位)などを、数分かけてゆっくりと変化させていきましょう。
コード進行・メロディの傾向
よく使われるスケール・音階
メジャースケール/ナチュラルマイナースケール: 基本的なスケールで十分。複雑なスケールは必要ありません。
ペンタトニックスケール: 5音しか使わないため「外れた音」が出にくく、アンビエントの穏やかな雰囲気を作りやすいです。
全音スケール(ホールトーン): すべての音の間隔が全音で構成されたスケール。浮遊感があり、アンビエントによく合います。
教会旋法(モード): ドリアン、リディアン、ミクソリディアンといったモードを使うと、メジャーでもマイナーでもない独特の色彩が生まれます。
コード進行
アンビエントでは、従来の意味でのコード進行はあまり重要ではありません。
ドローン: 一つの音や和音をずっと持続させる手法。最もシンプルで、最も強力なアンビエントの技法です。
2コードの往復: Imaj7 → IVmaj7 のようなシンプルな2コードをゆっくり行き来するだけでも、豊かな音の風景が生まれます。
クラスター: 隣り合う音を重ねた不協和音。適度に使うと、テクスチャーに深みが加わります。
メロディ
メロディは、明確に「歌える」ようなものよりも、断片的なフレーズがぽつぽつと現れるスタイルが多いです。ピアノの単音がリバーブの海の中で漂うように——そんなイメージです。
曲構成の例
アンビエントには「正解」の構成がありません。以下はあくまで一つのアプローチです。時間の流れに身を委ねるように、自由に構成してみてください。
導入(0:00〜2:00): 静寂から始まる。フィールドレコーディング(雨音、環境音など)をフェードインさせ、空間の「場」を提示する
第1層(2:00〜5:00): パッドサウンドがゆっくりと現れる。ドローン的な持続音で基盤を作り、リバーブで空間を広げていく
第2層(5:00〜9:00): 新しいテクスチャーを重ねる。グラニュラーシンセやピッチシフトした素材を加え、音の密度を少しずつ高める。オートメーションでフィルターを緩やかに動かす
頂点(9:00〜12:00): 最も音の層が厚くなるセクション。ただし「盛り上がる」というよりは「満ちる」イメージ。ピアノの単音やベルの音を断片的に配置してもよい
解体(12:00〜15:00): 層を少しずつ減らしていく。パッドのリリースを長く残し、音が自然に消えていくのを待つ
余韻(15:00〜): 最初のフィールドレコーディングだけが残り、静寂に還る
※ 時間は目安です。5分の曲でも30分の曲でも、この「現れる→満ちる→還る」の流れは応用できます
※ セクション間の境界は曖昧であるほどアンビエントらしくなります
Logic Proでの再現ヒント
Logic Proには、アンビエント制作に使える機能が豊富に揃っています。
シンセサイザー
Alchemy: Logic Pro最強のシンセサイザーで、アンビエント制作には最適です。「Ambient」「Pad」「Texture」カテゴリーのプリセットが充実しています。グラニュラーシンセシスモードも搭載されており、音声ファイルを読み込んでテクスチャーに変換できます。
ES2: もう一つのパワフルなシンセ。アタックを遅く、リリースを長くしたパッドサウンドを作るのに適しています。
Retro Synth: シンプルな操作で温かみのあるアナログパッドサウンドが作れます。
リバーブ
Space Designer: コンボリューションリバーブ(実際の空間の残響特性を再現するリバーブ)で、さまざまな空間のIR(インパルスレスポンス)データを選べます。リバーブタイムを最大に設定して、長大な残響空間を作りましょう。
ChromaVerb: 視覚的に美しいインターフェースのアルゴリズミックリバーブ。「Bloom」や「Dark Room」といったモードがアンビエントに向いています。Shimmer(シマー)機能もあり、オクターブ上のピッチシフトを加えた幻想的なリバーブサウンドが作れます。
ディレイ
Tape Delay: テープの温かみを再現したディレイ。フィードバックを高めに設定し、ディレイ音がゆっくりと崩壊していくようなサウンドが作れます。
Delay Designer: 複雑なマルチタップディレイ(複数回のエコーを個別に設定できるディレイ)を作れるプラグイン。リズミカルなパターンを作るよりも、不規則な反復パターンを作るのに使うと、アンビエントらしい空間が生まれます。
グラニュラーシンセ
Alchemy内蔵のグラニュラーモードが使えますが、より本格的なグラニュラーシンセを求めるなら、Portal(Output)やQuanta(Audio Damage)といったサードパーティプラグインがおすすめです。
無料では、Paulstretch(元はスタンドアロンソフト、現在は各種プラグイン版あり)が、音をゆっくり引き伸ばしてテクスチャーに変換するのに使えます。
フィールドレコーディングの活用
iPhoneの「ボイスメモ」で録音した環境音をLogic Proに取り込みましょう。
EQで不要な帯域をカットし、リバーブをたっぷりかけて、元の音がわからないくらいに加工すると、ユニークなテクスチャーが生まれます。
Sampler(旧EXS24)に読み込んで、ピッチやスピードを変えて演奏するのも面白い手法です。
ミックスのポイント
アンビエントでは、音のダイナミクス(音量差)を大きく取ることが重要です。静寂と音のコントラストを大切にしましょう。
ステレオイメージ(音の左右の広がり)を広く取り、音が聴く人を包み込むようなミックスを心がけてください。
マスターにリミッターをかける際は、ピークをあまり潰しすぎないこと。音圧競争とは無縁のジャンルですから、ダイナミクスを残してOKです。
曲構成の基本パターン
導入(2〜3分): ほぼ無音の状態からフィールドレコーディングや微細なノイズがゆっくりと立ち上がる。リスナーの意識を日常から作品世界へと移行させる
第1レイヤー展開(3〜4分): メインとなるシンセパッドやドローンが登場し、基調となるハーモニーを提示する。グラニュラーシンセのテクスチャーを薄く重ねていく
テクスチャー変化(2〜3分): フィルターの開閉やグラニュラー処理で音色が有機的に変容する。新しいレイヤーが加わり、音響空間の奥行きが深まる
ピーク(2〜3分): 全レイヤーが最も豊かに響く区間。派手なクライマックスではなく、音の密度と倍音の充実感が静かに最大化する
解放(2〜3分): レイヤーが一つずつ剥がれていき、音の密度が徐々に薄まる。リバーブの残響が空間に溶けていく
余韻(1〜2分): 最後のドローンまたはフィールドレコーディングだけが残り、静寂へと回帰する。リスナーを穏やかに現実世界へ戻す
おすすめプラグイン一覧

Suno で試してみよう
このジャンルを Suno AI で生成するためのプロンプト例です。コピーしてそのまま使えます。
Style of Music:
Ambient, ethereal synthesizer pads, deep reverb drone, field recordings, slow evolving textures, spacious, cinematic, Instrumental, ambient introLyrics(メタタグ付き):
[Intro]
[Tempo: Very slow]
[Key: D major]
[Mood: Peaceful]
[Energy: Low]
[Texture: Clean digital]
(silence fading into distant rain and birdsong, soft pad emerging)
[Instrumental]
[Mood: Dreamy]
[Energy: Low→Medium]
[Texture: Tape-Saturated]
(warm analog pad slowly swelling, deep hall reverb, granular textures layering underneath)
[Instrumental]
[Energy: Medium]
[Mood: Ethereal]
(shimmering bell tones floating over sustained drone, field recording of water blending with reverb tail)
[Instrumental]
[Mood: Mysterious]
[Energy: Medium→Low]
(piano single notes dissolving into infinite reverb, textures thinning, space expanding)
[Outro]
[Energy: Low]
[Mood: Peaceful]
(all layers gradually fading, only distant field recording remains, returning to silence)
[Fade Out]まとめ:アンビエントを聴いて、作って、楽しもう
この記事では、アンビエントの定義・歴史・おすすめ曲・DTMでの作り方を解説してきました。ポイントをまとめましょう。
アンビエントとは: リズムやメロディよりも「空間のテクスチャー」を重視する音楽。「聴く」ことも「聞き流す」ことも許容する、自由な音楽
歴史: Erik Satieの「家具の音楽」を先駆として、Brian Enoが1979年に確立。その後、Aphex Twin、Boards of Canadaらが多様な方向に発展させた
日本との関係: 吉村弘、坂本龍一、畠山地平ら、日本のアーティストが国際的に重要な位置を占めている
DTMのポイント: パッドサウンド、深いリバーブ、グラニュラーシンセシス、フィールドレコーディング、そしてスローなオートメーションが鍵
まずはBrian Enoの「Music for Airports 1/1」を聴いてみてください。17分ほどの楽曲ですが、時間を忘れて音の空間に身を委ねてみると、アンビエントの魅力が直感的にわかるはずです。
DTMで作る際は、シンセのパッドサウンドに深いリバーブをかけて、一つの音を長く鳴らすところから始めてみましょう。コード理論がわからなくても、リズムが苦手でも大丈夫。音の響きそのものに耳を傾けて、「気持ちいい」と感じるサウンドを探していく——それがアンビエント制作の第一歩です。
「エレクトロニカ」「ニューエイジ」「ポストロック」といった関連ジャンルの記事もあわせて読むと、アンビエントの立ち位置がさらにクリアになりますよ。それでは、音の風景の中で、ゆっくりとした時間を楽しんでくださいね。
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