月への架け橋:アルテミスIIIミッションを担う4人の宇宙飛行士を紹介!
かつて、夜空に浮かぶ月を見上げて「いつかあそこへ行ってみたい」と夢見たことはありませんか?その夢は今、単なる空想ではなく、「月面基地を建設する」という人類史上最も野心的なプロジェクト「アルテミス計画」として、具体的なカウントダウンを刻んでいます。
2026年4月に無事帰還したアルテミスIIのバトンを受け継ぎ、2027年に打ち上げが予定されているのが「アルテミスIII」です。このミッションは、多くの人が想像する「月面着陸」そのものではありません。実は、月面への第一歩(アルテミスIV)を確実なものにするための、重要な地球低軌道(LEO)でのテスト飛行」です。
新型宇宙船オリオンと、民間企業が開発した着陸船が宇宙で出会い、正しく合体(ドッキング)できるのか。この高度なミッションを完璧にこなすために選ばれた、4人の精鋭たちをご紹介します。
【司令官】ランディ・ブレスニック:多様な翼を操る「頼れるリーダー」

アルテミスIIIの指揮を執るのは、米海兵隊の退役大佐であり、圧倒的な経験値を誇るランディ・ブレスニック司令官です。2009年にスペースシャトル「アトランティス」で、ボーイング社のスターライナーのテストパイロット“Butch” Wilmoreと一緒にSTS-129ミッションでISSへ行き、2017年にはSoyuz MS-05で再びISSへ。Expedition 52/53ではフライトエンジニアと船長を経験しました。
カリフォルニア出身、数学を専攻し2004年にNASA入り。元海兵隊大佐でテストパイロットの専門家です。故郷はサンタモニカ市。
選出理由と役割: 95種類以上の航空機で7,000時間以上の飛行時間を持ち、ISS(国際宇宙ステーション)での船外活動も32時間を超えるベテランです。現在は「宇宙飛行士室長補佐(探索担当)」として、アルテミス計画の開発やテストを直接統括しています。
親しみやすいポイント: 仲間からは、その親しみやすさを込めて「『コムラード(Komrade)』というコールサインで呼ばれています。英語で「仲間」「同志」「戦友」を意味する名詞。苦楽や危険を共にした深い絆を持つ相手に対して使われる言葉です。また、ISS滞在中に80万枚以上の写真を撮影した熱心な写真家という一面も。
分析: 彼が司令官に選ばれたのは、操縦技術という経験と、開発の最前線でアルテミス計画のシステムそのものを作り上げてきた「システムのすべてを熟知する第一人者」だからこそ、未知のドッキング試験を率いるリーダーとして最適と考えられたのでしょう。
バトンは今、私の手にある。それはオリンピックの聖火のように感じられる。アルテミスIIのクルーが灯したその炎を、私たちがさらに輝かせ、次のミッションへと繋いでいけることを光栄に思う。
So grateful and appreciative to be a part of the crew that will be “Carrying the Fire” through the next @NASAArtemis mission! Go Artemis III. https://t.co/2vLxRakq53
— Randy "Komrade" Bresnik (@AstroKomrade) June 9, 2026
【パイロット】ルカ・パルミターノ:欧州から参戦したテストパイロット

今回のミッションで操縦桿を握るのは、欧州宇宙機関(ESA)から参加するイタリア空軍大佐、ルカ・パルミターノです。

選出理由と役割: 2007年からテストパイロットとして活躍する彼は、ISSでの船外活動中にヘルメットが浸水するという絶体絶命の危機を、驚異的な冷静さで乗り切った「鋼の精神」の持ち主です。
親しみやすいポイント: 軌道上で「世界初の宇宙DJセッション」を披露したユニークな経歴を持ちます。プライベートでは2人の娘を愛する良き父親でもあります。
分析: アルテミス計画初のESA飛行士の起用は、このミッションが国際協力の象徴であることを示しています。複雑な新型ドッキング装置を扱う今回の任務において、彼の「極限状態での判断力」は不可欠なピースとなるでしょう。ESAから選出されたルカ・パルミターノ飛行士は、過去のミッションの船外活動において、ヘルメットが水で満たされるという重大なアクシデントに見舞われながらも、的確で冷静な判断によって自ら生還した実績を持ちます。アルテミスIIIではAxiom Space社の新しい宇宙服の運用テストという重要なタスクが控えており、いかなる非常事態にも淡々と対処できる彼の並外れた危機対応能力が買われ、今回の抜擢に繋がったと考えられます。
ESA宇宙飛行士。
1976年、イタリアのパテルノー生まれ。
2001年から2007年までイタリア空軍のパイロットを務め、2007年にイタリア空軍のテストパイロットに選抜される。
2009年5月に欧州宇宙機関(European Space Agency: ESA)の宇宙飛行士として認定される。
2013年5月、ソユーズTMA-09Mで打ち上げられ第36/37次滞在クルーとしてISSに滞在。アルテミスIIのミッション・スペシャリストであるクリスティーナ・コックと一緒に、第61次長期滞在クルーとしてISSに滞在した。
【ミッション・スペシャリスト】フランク・ルビオ:米国の「最長宇宙滞在記録」を持つ人物

ミッションスペシャリストとして搭乗するフランク・ルビオは、陸軍特殊部隊の軍医であり、戦闘ヘリコプターのパイロットでもあったという異色の経歴を持ち、いかなる過酷な環境でも揺るがない極めてタフな宇宙飛行士です。10代のシングルマザーに育てられ、辛い経験もたくさんあったと過去を振り返る動画が印象的。「まわりの人たちのおかげで今の自分がある」と語ってます。
選出理由と役割: 371日間という、米国人として単一宇宙滞在の最長記録を保持しています。アメリカの最長滞在記録を更新した彼の並外れた体力と精神力は、今回のミッションでも大きな武器になるでしょう。
親しみやすいポイント: 陸軍の攻撃ヘリ「ブラックホーク」のパイロットでありながら、同時に医学博士号を持つ「家庭医(ドクター)」でもあります。その一方で、ISS(国際宇宙ステーション)での実験で育てたミニトマトが行方不明になった際、『フランクがこっそり食べたのでは?』と宇宙でも地球でも疑われるというクスッと笑えるエピソードの持ち主でもあります(※無事、彼が地球に帰還した後に干からびたトマトが発見され、見事疑いは晴れました!)。極限の環境でも周囲を和ませるそのユーモアと親しみやすさも、彼の大きな魅力です。「自分が食べたのではないかと疑われるのを防ぐため」に、貴重な自由時間を8〜20時間も費やして探したそうです。
分析: 371日の過酷な環境を生き抜いた彼の耐久力と、医師としての専門知識は、民間企業との共同運用という未知のストレスがかかるアルテミスIIIにおいて、クルーの安全と健康を守る最後の砦となります。

NASA宇宙飛行士。
サンフランシスコ生まれフロリダ州マイアミ育ち。
1998年米陸軍士官学校卒業。
2010年ユニフォームド・サービス大学保健科学部から医学博士取得。
2017年に宇宙飛行士として選抜される。
第68次長期滞在クルーで元JAXA宇宙飛行士若田光一氏と一緒にISSで過ごす。
【ミッション・スペシャリスト】アンドレ・ダグラス:日本とも縁が深い「3つの修士号と1つの博士号を持つ技術の天才」

4人目のメンバー、アンドレ・ダグラスは、沿岸警備隊からエンジニア、そして科学者へと転身した多才な新星です。
選出理由と役割: ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所(APL)で、惑星防衛やロボット工学の最前線にいました。アルテミスIIのバックアップクルーを務めた経験を活かし、満を持しての初飛行となります。
日本とのつながり: 彼はAPL時代、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が推進する火星衛星探査計画「MMX」をサポートしていました。具体的には、搭載される観測機器「MEGANE(ガンマ線・中性子分光計)」のチームに関わっていたのです。物質を「透かして見る」ことができるこの装置の名が、日本語の「メガネ」に由来する技術的なユーモアであることを彼はよく理解しており、日本の宇宙ファンにとっても非常に親しみやすい存在です。
親しみやすいポイント: 教育活動にも熱心で、青少年のためのロボット競技会(FIRST)の指導者として、未来のエンジニアたちを育てています。
分析: 複雑なロボティクスやシステム統合のスペシャリストである彼は、オリオン宇宙船と民間機(SpaceXやBlue Origin)が軌道上でダンスを踊るような、今回のミッションの「知能」を担います。
2008年:米国沿岸警備隊士官学校で機械工学の学士号を取得
2012年:ミシガン大学アナーバー校で機械工学の修士号を取得
2012年:ミシガン大学で造船および海洋工学の修士号を取得
2019年:ジョンズ・ホプキンス大学で電気およびコンピューター工学の修士号を取得
2021年:ジョージ・ワシントン大学でシステム工学の博士号を取得
複数の分野にわたって専門知識を深めており、これらの高度な学歴が、システム工学やロボット工学の分野での彼の活躍の基盤となっています。
NASAジョンソン宇宙センター公式のポッドキャストでは、アンドレがアルテミス2号のバックアップクルーとして訓練した経験などが語られています。
2027年、「最初のスターフリート」が誕生
アルテミスIIIは、約2週間のミッション期間中、地球のすぐそばで行われる壮大な宇宙機がドッキング・ランデブーする光景を見せてくれるはずです。
NASAの管理者たちは、このミッションを「地球最初のスターフリート(宇宙艦隊)」の誕生だと表現しています。なぜなら、NASAのオリオンだけでなく、Blue OriginやSpaceXといった民間企業の巨大ロケットが次々と打ち上げられ、宇宙空間で合流する「黄金時代」の幕開けとなるからです。
SLS、オライオン、ブルームーン・マーク2、スターシップ。多様な宇宙船が夜空を埋め尽くす2027年、それぞれの宇宙飛行士の活躍が楽しみです。
Space Wave Japan
山口たかえ
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