スーパーマンはいない。『賢い医師生活』が描いた、医師・看護師・患者のリアルな人間模様
韓国ドラマといえば、ドロドロの愛憎劇や、超能力ヒーローが活躍する物語を想像していませんか? 僕は韓国ドラマを語学学習のために見始めたタイプですが、最近、そんなイメージを覆す、極上のヒューマンドラマに出会ってしまいました。それが、『賢い医師生活』(슬기로운 의사생활)です。
全2シーズンで合計30時間超という長編ながら、目を離せなかったこの作品。なぜこのドラマが、単なる「医療モノ」を超えて、僕たちに人生の真髄を教えてくれるのか。約ひと月かけて視聴した僕のレビューと、この作品で感じた「命」の重さ、そして5人の教授が教えてくれた「大人の友情と人生の楽しみ方」について語ります。
「長すぎる」と感じたのは最初だけ。医療現場を巡る壮大な人間ドラマ
僕は2年前から韓国語を学び始めてからほぼ毎晩のように韓国ドラマか映画を見ています。元々は勉強のためだったのですが、今では「韓国ドラマを見るために勉強している」感もあるほど(笑)。50歳頃には、字幕なしで全部分かるようになりたい、なんて目標も持っています。
そんな僕が久しぶりに観た長編が、この『賢い医師生活』です。
1話が約1.5時間、ワンシリーズ12話で2シリーズの合計24話。トータル30時間以上というボリュームで、視聴に約ひと月かかりました。ホント長かった!
見始めた当初は、もともと長い目で作ることを想定していたせいか、若干もたつきがあるように感じ、ちょっともどかしい気持ちもありました。
しかし、結果としてその長さこそがこのドラマの最大の魅力だと気づきました。なぜなら、この作品は単なる「医療モノ」ではなく、「医療」をテーマにした「人間といのち」のヒューマン型ドラマだったからです。
特筆すべきは「脇役」にまで光を当てる視点
このドラマの舞台は、ソウルの大病院、ユルジェ病院。そこで医師生活を送る5人の同門の同窓生を中心に話が進みます。
--『賢い医師生活』を彩る5人の主要キャラ --
イ・イクジュン (チョ・ジョンソク)
アン・ジョンウォン (ユ・ヨンソク)
キム・ジュンワン (チョン・ギョンホ)
ヤン・ソッキョン (キム・デミョン)
チェ・ソンファ (チョン・ミド)
特筆すべきは、主要な5人の出来事は勿論のこと、その傍らで働く後輩医師(전공의=専攻医、レジデント)や看護師、医療スタッフの多くにまで焦点が当たる点です。通常のドラマは、軸となる主人公たちに話が集中しがちで、脇役のバックグラウンド描写は薄くなりがちです。
ですが、この作品は違います。
世の中は、スーパーマン(スーパー才能マン)だけで回っているわけではありません。この作品では、社会に存在する人それぞれが、苦しみや喜びを経ながら、それぞれの接点を「縁」として世の中が回っていることを如実に表していました。各キャラクターの描写が比較的均質的に描かれているからこそ、僕は感情移入し、彼らの働く姿に心から応援したくなりました。
命の重さがリアルに胸に響く、緊迫の医療描写
その一方で、医療に関する描写も非常にリアルで深く描かれていました。
外来での診断と診療方針に関する対話。手術室での各メンバーの専門性を遺憾なく発揮した手腕。緊急患者への対応と対処。様々な角度から医師の対応を描くことで、医療シーンは非常に立体的です。
なかでも僕が一番印象的だったのは、移植手術に関する描写です。
一般的なドラマでは、移植される患者と執刀医の関係を中心に描くことが多いと思いますが、この作品ではドナーとなる移植者(脳死または生体ドナー)の描写までキッチリと描きます。
生体肝移植などのシーンでは、ドナーが手術によって体の一部を割かれ臓器を取り出すシーンを描くことで、「助ける人の痛み」をきっちりと浮かび上がらせていました。そして、手術後の医師が保護者に対して、「感謝の対象は、私たち医師だけでなく、移植をしてくれた人、そして移植に合意してくれた家族たちに向けて欲しい」と訴えるのです。
冷静に考えれば、移植手術は必ず誰かの臓器が必要なことなんて「自明の理」なのに、この作品を通じて改めてその事実と向き合えたことが、僕にとって非常に価値がありました。
ソッキョン先生を中心とした出産のテーマも然り。あらゆる角度から「いのちの大切さ」と「新たな生命の重さ」を感じさせてくれます。
魅力的な5人のキャラクターと、大人の「遊び」の重要性
医療現場のシリアスさと対比させるように、医師たちのプライベートは非常にコミカルタッチに描かれます。これは、韓国作品によく見られる陰と陽の対比をうまく使った演出だと感じました。
特に特筆すべきは、イ・イクジュン(チョ・ジョンソク)先生のキャラクター性です。
イ・イクジュン(肝胆膵外科):ソウル大医学部首席卒業、手術の腕は天下一品、歌と踊りもこなすムードメーカー。ジョークも飛ばしつつ、病院内全員に慕われる「あり得ない」スーパーマン。
アン・ジョンウォン(小児外科):子供好きで優しすぎるあまり「仏様」と呼ばれる敬虔なクリスチャン。
キム・ジュンワン(胸部外科):不機嫌そうな顔つきとは裏腹に、仲間想いで情に厚い、ギャップが魅力の食いしん坊。
ヤン・ソッキョン(産婦人科):マイペースで人付き合いが苦手ながら、なぜか5人の輪には必ずいる、我の強い変わり者。
チェ・ソンファ(脳神経外科):献身的で誠実な紅一点。オフはキャンプに出掛け、大食漢で、歌を歌わせると皆から逃げられそうになるほどの音痴(という設定)。
これだけ個性がクッキリと立っている5人を結びつけるのが、学生時代から続けている「バンド」という共通の接点です。
彼らは定期的に集い、バンドのセッションを行います。この「バンド」のシーンこそが、このドラマにおいて毎回テーマとなるような演出で話を進めているように僕は感じました。決してミュージカルではないけれど、ドラマの中に音楽を据えて、それを彼らの「絆」と「リフレッシュ」の場にする。思いついたら集まる、という彼らの行動指針は、忙しい大人が人生を豊かにするために必要な「遊び」の重要性を教えてくれます。
恋愛要素と「唐突な着信音」が示す医師の葛藤
このドラマには恋愛要素も多分に含まれています。
忙しそうにしている医師がこれだけ恋愛にいそしむことができるのか? 医療モノを見たい人にとって、お医者様の恋愛事情はどれだけ必要なのか? そう思ってしまう瞬間もありました。しかし、これは作品が掲げる「人間」というテーマで考えれば当然のこと。医師だって結婚の過程で何らかのお付き合いを経てゴールをしているわけですから、僕たちが知らない世界なだけなんだと思います。
そして、恋愛シーンを含め、ドラマの中で頻繁に出てくるのが携帯電話の「唐突な着信音」です。
会話が終わった瞬間に緊急の着信があるのはザラです。医療関係の電話だけでなく、友人、恋人、ご両親からかかってくることもある。この「どのコールなのか?」というハラハラした気持ちこそが、常に緊急性を迫られる医師の日常的な葛藤を如実に表しているようにも感じました。
見終わったら、あなたの「人生観」が変わるかもしれない
色々と書いてみましたが、「賢い医師生活」は2シーズン通して全24話。非常に見ごたえのあるドラマです。
命と真摯に向き合う医師の仕事、そして、個性的すぎる5人が奏でる友情と音楽。そのすべてが混ざり合い、僕たちに「人生は不条理で過酷だけど、最高の仲間と好きなことがあれば楽しめるんだ」というメッセージを投げかけてくれます。
あなたも、この壮大な人間ドラマを通じて、あなたの「発見」を見つけてみてはいかがでしょうか?
皆さんはこのドラマをみてどう思いましたか?
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