【韓ドラ】怪物より怖いのは、人の欲か。Netflix『Sweet Home』が描く閉塞感とカオスの正体
韓国語学習をきっかけに、毎晩のように韓国ドラマの世界に浸っている僕。心温まる『ナビレラ』の次に選んだのは、それとは真逆の絶望が渦巻くディストピア、ソン・ガン主演の『Sweet Home -俺と世界の絶望-』だった。なぜこれほどまでに目が離せないのか? 圧倒的な視覚表現と、予測不能なカオスが支配する本作の魅力を、独自の視点で紐解いていく。
韓国語を学び始めてからというもの、僕は毎晩韓国ドラマを観るのが習慣になっている。
今年の視聴作品、第二弾として選んだのが『Sweet Home -俺と世界の絶望-』だ。
前回の視聴作『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』が非常にハートウォーミングなヒューマンドラマだったため、今度は趣向を変えてファンタジー要素の強いものを、と考えた。併せて、『ナビレラ』で主演を務めたソン・ガンの繋がりで本作に辿り着いた。
👉前回のレビュー
ここからはレビューに入るが、ネタバレが含まれているので未視聴の方は気をつけて欲しい。
■絶望の始まり:アパート「グリーンホーム」という閉鎖空間
舞台は荒廃した世界。主人公の少年チャ・ヒョンスは、廃墟のようなアパート「グリーンホーム」の1401号室に引っ越してくる。しかし、ヒョンスは生きる希望を失っており、自ら命を絶つことさえ考えているような状況だった。だが、このグリーンホームには、何やら奇妙な人々が暮らしており、物語は予想もしない方向へと動き出す。
主なキャストは以下の通りだ。
・チャ・ヒョンス(ソン・ガン)
・ユン・ジス(パク・ギュヨン)
・ピョン・サンウク(イ・ジヌク)
・パク・ユリ(コ・ユンジョン)
・イ・ウニョク(イ・ドヒョン)
・イ・ウニュ(コ・ミンシ)
・アン・キルソプ(キム・ガプス)
・チョン・ジェホン(キム・ナムヒ)
・ソ・イギョン(イ・シヨン)
■「ゾンビ」ではなく「怪物」。その圧倒的な演出力
物語は終始、暗く奇妙な雰囲気に包まれている。いわゆるディストピアものである。
特筆すべきは、本作に登場する「怪物」と呼ばれるクリーチャーたちだ。彼らはゾンビではない。カテゴリーも様々で、統一された名称さえない異形の存在だ。
ドラマのサムネイルでは、ソン・ガン扮するチャ・ヒョンスに翼のようなものが生えていた。
しかし物語のスタート時点では、自殺を考えているような彼に、そんな予兆は微塵もない。
むしろ、グリーンホームの住人たちの方がどこか奇妙なのだ。同じ人間のはずなのに、何かが違う。その奇妙な住人たちの存在が、後に現れる怪物たちを、どこか抵抗感なく受け入れさせてしまう導入になっているようにも感じた。いや、それこそがこのドラマのポイントなのだろう。どこまでが人間で、どこまでが怪物なのか。その境界線が曖昧になる瞬間、グリーンホームは深い不安と緊迫感に包まれていく。
人間が怪物へと変貌を遂げる兆候として提示されるのが「鼻血」だ。
この描写が凄まじい。おびただしい量の血が、鼻からドバドバと溢れ出す。一体どうやって演出しているのか、僕は非常に興味をそそられた。CGなのか、それとも役者の鼻にカプセルでも仕込んでいるのか。映像を見る限りCGっぽさはなく、赤色の液体がかなりの長時間流れ続ける。こんなシーンは見たことがない。その演出だけで、観る者を圧倒する力がある。
■閉塞感の中で浮き彫りになる「人の心」
シーズン1は、グリーンホームの外に怪物が闊歩し、建物から一歩も出られないという極限の閉塞感の中で進む。
主人公のヒョンスは、当初は非常にか弱く、どこか頼りない少年だった。しかし、怪物化の兆候が現れたことで住民から隔離され、嫌悪されながらも、持ち前の優しさで次第に住民の支えとなっていく。
本作が訴えてくるのは、
「本当に怖いのは怪物ではなく、人の心に巣食う欲望や不信感だ」
というメッセージだ。
例えば、イ・ジヌク演じるピョン・サンウク。彼は一見、近づきがたい謎のヤクザ風の男で、過去に多くの罪を犯してきた。しかし、そんな彼がグリーンホーム内で最も力強い味方になっていく。主役のヒョンスだけに肩入れせず、住民全体に焦点を当てて物語を進めていく構成は、群像劇としても非常に優れていたと思う。
■広がるスケールと、名作へのオマージュ
ドラマは全3シーズン(全26話)で構成され、物語が進むにつれスケールも大きくなっていく。
舞台はグリーンホームから野球スタジアムへと移るが、常に「閉塞感のある環境」に人間を置くことで、視聴者は逃げ道のない恐怖を追体験することになる。
観進めていく中で、僕は『The Last of Us』や『バイオハザード』といった名作ゲームへの強い影響を感じた。特に怪物化現象を研究する施設の設定や小道具は、まるで『バイオハザード』のアンブレラ社を彷彿とさせる。韓国ドラマは日本のドラマに比べ、荒廃した世界の作り込みや汚染描写へのこだわりが非常に強く、その不気味さが作品の質を底上げしている。
また、随所に見られる「ありえない」シーンの連続も見どころだ。
刀で頭部を切り落とされた怪物が聴覚を発達させて歩き回る姿や、主人公チャ・ヒョンスが見せる、眼球が真っ黒に染まった「ダークヒョンス」とも言える表情。
👉ソン・ガン扮するヒョンスの変貌
枚挙にいとまがないほど、奇妙で独創的なビジュアルが次々と現れる。ストーリーの骨格以上に、「この奇怪なシーンを見せたいのではないか?」と感じることさえあった。
特に、イ・シヨン演じるソ・イギョンの過酷な描写には驚かされた。排気ダクトでの逃走劇、消防車での怪物との死闘、そして怪物化をしたかと思いきや、人間にもどった末の無残な最期……。とにかく衝撃的なシーンのオンパレードである。
👉イ・シヨンによる排気ダクトの逃走シーン
■カオスの中で描き出される「命の軽さ」
プロットの構想はしっかりしているが、人々の交流や恐怖描写を重厚に描きすぎているせいか、進行は比較的ゆっくりと感じる部分もある。だが、あえて情報を抑えることで、当事者が感じる「何が起きているか分からない」というカオス感を視聴者に与え、没入感を高めているようにも感じた。パニックものとして、これは成功していると言えるだろう。
そして何より、この作品では人がよく死ぬ。
「このキャラは死なないだろう」という予想は、あっさりと裏切られる。その容赦のなさは、どこか『呪術廻戦』を彷彿とさせた。予定調和な安心感など一切ない。シーズン1で出会った住人のうち、シーズン3まで生き残れた者がどれだけいただろうか。グリーンホームという属性さえも、決して安心材料にはならない。まさにカオス・オブ・カオスの連続だ。
■最後に
正直なところ、伏線の回収が不十分で消化不良に感じる部分もあった。カオスを意図しているがゆえに、展開を広げすぎて収束しきれなかった印象も否めない。
しかし、俳優陣、撮影スタッフ、舞台美術に関わるすべての人々の情熱が生み出した「見どころのある構図」の多さは秀逸だ。荒廃した世界を違和感なく演じ切った俳優たちの気力こそが、この物語の面白さの正体なのかもしれない。
好き嫌いははっきりと分かれる作品かもしれないが、一見の価値はある。
ぜひ、この絶望を体感してみてほしい。
皆さんは、この作品を観てどう感じましたか?
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<ダークでファンタジー系が好きな人向け>
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