【映画レビュー】『キル・ボクスン』考察:最強キラーが教える最強の哲学とは。スピンオフ『カマキリ』との繋がりを深掘りレビュー
僕がこの作品から発見した、伝説の暗殺者ボクスンが長年トップで居続けた哲学。それは「己を知り、敵を知る」というシンプルな真理の、さらに奥にある「相手の弱点の把握」だった。最強のシングルマザーが、殺し屋稼業と子育ての狭間で貫く”生殺与奪の哲学”を、スピンオフ作品との比較を通じて深掘りレビューします。
はじめに:なぜ僕は『キル・ボクスン』を見ずにはいられなかったのか?
▼韓国映画『キル・ボクスン』予告編
(あらすじ)
韓国では人知れず暗殺を担うキラー業界があった。その中でも、大手企業であるMK社には「キル・ボクスン」と呼ばれる女性キラーがレジェンドとして知られていた。淡々と仕事をこなすボクスンは、暗殺業の傍ら自分の娘を育てるという「母親」の側面も持つ。思春期の娘を抱えたベテランのボクスンはある日……
僕は先日、イム・シワン氏出演のNetflix韓国映画『カマキリ』を見ました。
しかし、どうにも納得がいかない部分がありまして。そして、『カマキリ』を完全に理解するためには前提としてこの『キル・ボクスン』を見る必要があると感じたんです。
「カマキリ」で抜け落ちてしまっていた暗黙の了解や、このキラーたちの掟はなんなのか。そういった疑問を解消するため、僕はこの作品を見ずにはいられませんでした。
(主な出演)
ギル・ボクスン:チョン・ドヨン
チャ・ミンギュ(MK代表):ソル・ギョング
チャ・ミンヒ:イ・ソム
ハン・ヒソン:ク・ギョファン
キム・ヨンジ:イ・ヨン
最強のキラー「キル・ボクスン」の哲学に迫る
そういった意味でこの作品を見てゆくと、一つ理解できたことがあるんです。
一見ひょうひょうと仕事をこなす暗殺者は、長年凌ぎを削ってゆくために何が必要だったのか?
殺人者ともなれば、一触即発の勝負となり、勝敗の行方は紙一重になることもあるでしょう。そういった生殺与奪の状況で自分を守り抜くための手段は、結論、「自分の弱点を理解し」、「相手の弱点を知る」ことに尽きるのだと感じました。
勿論、自分が強いことが絶対条件ですが、絶対条件がそろった中での運命の分かれ道は、弱点の「有無」では無く、弱点の「把握の有無」だと僕は考えます。「己を知り、敵を知れば100戦100勝」という古の教えを、キラー業界のトップレジェンドが実践している。それがキル・ボクスンの強さの哲学だと、この作品を見て確信しました。
スピンオフ『カマキリ』との比較で浮かび上がるキャラクター設定
また、この作品の中で「カマキリ」「トッコ」の名前が出てきており、スピンオフさせた理由も少し理解できました。この時点で、彼ら二人はMKのトップランカーであることが伺えます。
そしてまた、「カマキリ」が休暇中であるというくだりから、MKの最強キラー「カマキリ」は「キル・ボクスン」よりもマイペースに活動しているある意味お気楽キャラであるという設定がここから浮かび上がってくるんです。
そういった見方で『カマキリ』を見直すと、イム・シワン氏が演じたハヌル役の設定も多少合点がいくようになりました。ただし、作品の主人公に焦点を当てるのであれば、『キル・ボクスン』の方が主人公のキャラクター設定に陰がある分、暗殺者ものとしてより納得がゆく感じもありましたね。
戦闘シーンの多さ・迫力
戦闘シーンも本作品の方が、比較的多めに描かれていた感があります。さらに、1対多の戦闘が多いため、キラーの強さを測れることが多いと感じました。これは、キル・ボクスンによるMK社内での演習風景ですが、稽古をつけている様がかなりカッコいいと思いました。
▼キルボクスン vs チョン・ドヨン (MK社のエース練習生 - 演技: イ・ヨン)
個人的には、冒頭のシーンに出てくる特別出演のファン・ジョンミンによる演出が面白かったです。
▼キルボクスン vs 織田真一郎 (在日韓国人ヤ〇ザ 出演: ファン・ジョンミン)
話す日本語は間違いなく不自然なイントネーションなのですが、やはり超一流俳優は何かしら魅力があり、どういった役割でもなぜだか味を感じてしまいました。このシーンにおいてキル・ボクスンは相手との戦闘シミュレーションを脳内で再生している様が描かれているのも彼女のA級ぶりを象徴しています。
MK代表であるチャ・ミンギュのバトルシーンもなかなか悪くないように思えました。
▼チャ・ミンギュのお仕事(出張先: ロシア)
このシーンをいかついマフィアや強そうなアスリートタイプが演じているとひょっとしたら当たり前の風景かもしれませんが、一見普通そうに見えるサラリーマン風の人がA級キラーとして仕事を処理しに来たと思うとぞっとします。
物語の展開と演技への考察
そして、人間関係に関する描写も『キル・ボクスン』の方が多く描かれていたように感じます。キル・ボクスンが暗殺者になってゆく過程や、ボクスンの親子関係の展開などが比較的フォーカスを当てられた気がします。
その一方で、その他大勢のキャラの設定が薄いため、周りのキャラクターの厚みが無いようにも感じました。また、ところどころ展開が唐突すぎて追い付いてゆけない感があったのも正直なところです。
多くは言えませんが、キル・ボクスンが追い込まれたり、逆に窮地から難を逃れたりする展開は結末ありきで進めたからなのか、若干強引な進め方だと感じました。
ちなみにキル・ボクスンのタイトルは、길복순ですが、途中のシーンでミンギュ代表の携帯では킬복순となっています。確かに「殺す」のキルは킬なので、作品名の길복순は「道」の길と考えられます。つまり、「ボクスンの生きる道」といった意味が含まれていると推察します。
役者層の厚さ
役者の層は『カマキリ』より厚いように感じました。『D.P.』や『脱走』に出演しているク・ギョファン氏も出演しています。制作時期が2023年ということもあり、最近話題になっている制作費や出演料の高騰が起きる前だからそれだけキャストが集められたようにも思えます。逆に言えば、キル・ボクスンの評判を受けて『カマキリ』を作ろうとしたところ、制作費の高騰により人が集められなかった可能性もあるかもしれません。
作品としての見ごたえは若干薄いと感じる部分もありますが、役者さんがしっかりした演技をするため、その表情ひとつひとつを見てゆくのは良いように思えます。
まとめ
僕の人生の目的は「発見」です。「ことばを通して、世界の心を見つける」という志のもと、この作品からもキラーという極端な職業を通して、「人間が生き抜くための哲学」というものを発見できたように思います。
再度見直しながら、作品について考察を重ねてゆくのもおもしろいかもしれないと思いました。
皆さんも、一度ご覧いただければと思います。
また、ご覧になった方は、この作品をどう思いましたか?
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