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Dead Collage You Hold[Most women hate hardboiled and lightning strikes]

ーー非道いことは言わないでって言ったじゃないの。
彼女は言う。
おれはマールボロの赤をポケットから取り出して無言でいる。
ーーあんなにもう非道いことは口にしないでって約束したじゃないの。
ーー約束なんぞしていないぜ。
おれは言う。彼女のアイシャドウが雨に溶けてドロドロだった。身体は寒いし状況はもっとお寒い。こんな時は温めた葡萄酒などがあればいいんだが、とおれはひとりごちる。稲光がして、黒い鵜か何かが灰色の世界を飛んでいるのが見えた。ひどい雨だった。車がだめになった以上、そこいらを漁って番号を見つけてタクシー会社に電話でもしなきゃならない。バスの待合所には人はいない。今夜の最終バスは既に二時間前に出発したのだ。
ーーあんな風にわたしを苛んで苦しめて楽しいの?
おれは彼女の存在を限りなくゼロに近づけつつ、温めた葡萄酒と、そうだ、それから観葉植物が影を落とすカウンターに腰を落ち着けてマスターに真空管のサラウンドシステムのオペラか何かをかけてもらう想像をする。黒猫が客の邪魔にならない場所で毛繕いをしているのを眺める。時代遅れのランプの光が店内を照らす。おれはマールボロに火をつけようとライターをカチカチとするが、ガスが切れてうまくつかない。彼女は泣き始めた。長い足、長い手、長い髪、それが一斉に揺れている。神々しい眺めといっていい。
ーーそう悪い状況でもない。
ーーこれのどこが?
彼女は怒る。
おれはマールボロに火をつけることに集中するあまり、サックス奏者のようにエビ反りになったり、ドラム奏者のように肩を丸めてうずくまったりしたが、だめだった。窓を開けてライターを投げた。風と雨が入ってきてカーテンが異常なまでにはためいた。おれは急いで窓をしめたが、次の瞬間、地震のような震動と強烈な光と轟音が部屋を包み込んだ。バスの待合所のすぐ隣の納屋と楡の木に落雷したのだ。一瞬で聴覚が死んだ。
彼女を見つめる。
彼女は眼を見開いている。
彼女の歯が闇で動いている。
笑っているのか、泣いているのかさっぱりわからない。
ーー気がおかしくなりそうよ。
ーーこんな夜ははじめてだわ。
ーークレイジーすぎるのよ。
彼女は意味のないことを口走るといきなり洋服を脱ぎ始めた。おれは彼女の頭のブレーカーが今の落雷でショートしたのかもしれないと思いつつ、口にくわえたマールボロに火をつけるためにどうすればいいか考えている。彼女の裸は何度も見たが、どうも今夜は美しかった。乳房も陰毛も臍も浮き出た血管さえ、何もかも。
彼女は突如として全裸で外へ出て行く。あっと言う暇さえない。外は豪雨で、雷が風が、大地を洗っている最中だった。彼女は彼女の魂は、裸で出て行ってしまったのか。永久に、おれの元から。
仕方なしに彼女を追いかけた。
実に凍りそうな夜だった。
マールボロに火をつけねばならなかった。
それにしても、外で見たのは、心を打つような情景だった。彼女はとうとうサタンに捕まってしまったのか。落雷を受けて真っ二つに裂けた楡の木や、納屋の屋根がブスブスと燃えている前で彼女は狂ったように踊っている。実にクレイジーな動き方だった。腕のスピードがあまりに早く残像が残るくらいなのだ。白い裸が見たこともない素早さでくねったりひねったりしている。
おれは静かに楡の木に近づいて、燻っている木のあたりに試しにタバコを近づける。タバコに火がつくと、うまい煙が肺に充填されていく。タバコの味、彼女の暗黒の舞踏。降り止みつつある風雨。まったくこれで温められた葡萄酒でもあれば最高なんだが、とおれはひとりごちた。


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