淡々と背負っていた
心が、いつのまにか動かなくなっていた。
命の危険のあとでさえ、
特に驚くことはなかった。
怖いとも、よかったとも思わなかった。
ただ、淡々としていた。
朝は来て、
私はいつものように起きて、
窓を開け、
家を回した。
迷惑をかけちゃいけないと、
知らないうちに背負っていた。
頼るのが怖い。
私が持たなきゃ回らない気がしていた。
助けて、と電話したこともある。
でも、人手が足りないと言われた。
それでも私は、
淡々と背負っていた。
きょうの帰り道、梅の香りが
体の中にすーっと入ってきた。
部屋から見た夕日が
私を照らした。
そのとき、
瞳の奥がゆるんで、
涙が目尻を伝った。
胸に広がって、
呼吸が深くなった。
母でもなく、
回す人でもなく、
責任でもなく、
ただ、呼吸している私がいた。
それだけで、
少しほっとした。
___わたしは安心して弱りたいんだ
