設立20周年を迎えたリユース企業 Vol.92
はじめに ~20年の節目に寄せて~
2025年4月、私たちスタンディングポイント株式会社は、設立から20周年という節目を迎えることができました。
まず何より、この20年という長い時間を共に歩んでくださったすべてのステークホルダーの皆様に、心より感謝申し上げます。
お客様、お取引先、そして何より、困難な時も変化にも私を己を信じてついてきてくれた仲間たち。皆様の支えがなければ、今日の私たちは存在しませんでした。
2001年、静岡県浜松市で子供服のリユースから始まったこの事業は、当初は本当に小さな一歩でした。
けれど、誰かにとって不要になったモノが、また別の誰かにとっては大切な価値となる——そんな循環の可能性に心を動かされ、当時23歳、店舗運営も初めて、リユースも初めて。
右も左も分からない中、情熱を注ぎ続けてきました。
「リユース」という言葉が、今でこそ世間に広く認知されるようになりましたが、20年前はまだまだ“もったいない”という精神に支えられたローカルな活動であり、事業になるのかは疑問だったように思います。
それでも信じて続けてきたのは、私たちの根底に「未来を生きる子供たちに限りある資源を少しでも多く残したい」という創業の想いがあったからだと思います。
これからお届けする長文のコラム(笑)ですが、私たちの20年間の軌跡を振り返りながら、この会社に関わってくださった全ての方々への感謝、そしてこれからの未来に向けた決意を綴っていきたいと思います。
1.創業の原点 - 子供服リユース事業から始まった挑戦
地元・静岡県浜松市での創業と理念
2001年8月、静岡県浜松市。
私の地元です。まだリユースという概念が今ほど一般的ではなかった時代に、私たちは「子供服のリユース事業」という一見ニッチなテーマで第一歩を踏み出しました。
きっかけは、ごく身近な日常にありました。
子どもが成長するにつれて、まだ着られる服がどんどん不要になっていく。だけど、その服には「思い出」が宿っている。捨てられない。
私は22歳で入社したグループ会社の中核事業である「木造住宅のメンテナンス」という事業に触れ、木材保存は価値ある仕事であり、私もいつか社会性のある仕事で創業していみたいという想いが芽生えました。
そんな時、このままのペースで消費し続ければ、25年後には石油が枯渇するとTVメディアで騒がれていたこともあり、石油で作られた製品が世の中には多く、「着られなくなかった子供服を、誰かがもう一度大切に着てくれたら?」と再利用(リユース)を考えたのが始まりです。
「モノを大切にする」という日本人らしい美徳を、経済的な仕組みとしても成立させたい。
私たちは単に「古着を売る」のではなく、「思い出を次に繋げる」事業として、リユースに取り組むようになりました。
法人設立、そして新規事業の始まり
2006年4月、グループ会社からの分社化を経て法人として独立。
事業基盤が少しずつ固まり始める中、私たちはリユースという可能性をさらに広げようと考えました。
2008年、新たに「中古携帯リユース事業」と「ブランド品の真贋判定サイト」という2つの新規事業を立ち上げる決断をします。
テクノロジーの進化とともに、消費の在り方そのものが変わりつつある中で、「正しく使えるモノを、次に繋ぐ」価値の追求は、他の分野にも応用できると感じたからです。
この時期は、まさに挑戦と実験の連続でした。
少人数で同時に複数事業を動かしながら、手探りで市場と向き合い、クライアントやお客様の声を吸い上げ、磨き上げていく日々。それでも、リユースがもたらす可能性への確信があったから、前を向いて走り続けることができました。
2.大きな決断 - ラナ・プラザの悲劇と再集中
社会の現実を見た出来事
2013年、バングラデシュで起きたラナ・プラザの崩壊事故。
このニュースを見た瞬間、私たちは凍りつきました。
縫製工場のミシン数千台の振動が耐震性に課題のあったビルの倒壊を招き、約1,100人以上の命が失われたこの事件は、ファッション業界が抱える開発途上国にて大量生産、廉価販売。それが、大量廃棄へとつながるという暗部を世界に突きつけました。
私たちは、これまで「リユース」という形で消費社会に疑問を投げかけてきたつもりでした。しかし、その裏で起きていた「大量生産・大量消費の犠牲」があまりにも重く、自分たちの事業が「本当に意味のあることだったのか」と自問自答させられたのです。
この出来事は、ただの業界ニュースではなく、私たちにとって「経営哲学を問い直す原点」となりました。
意義ある事業への回帰
ラナ・プラザの事件をきっかけに、私たちは大きな決断を下します。
それは、当時展開していた新規事業2本(2本ともに黒字化)を大手企業へ譲渡し、リユース事業一本に集中するという選択でした。
それまで築いてきたノウハウや仕組みを手放すことは、サンクコストも念頭にあり、簡単なことではありませんでした。しかし、「本当に社会に必要とされる事業とは何か?」を突き詰めて考えた結果、私たちが進むべき道はファッションのリユースで「一人ひとりがモノと丁寧に向き合い、愛着を再発見する価値」を提供することだと、再確認できました。
この決断から私たちの事業は大きく変化します。
効率や利益を追い、何とか黒字化を果たした創業期を経て、徐々に「大儀」「社会課題」「想いの循環」という思考や判断軸で経営するように変化していきました。きっと、このタイミングこそが、現在の『エコスタイル』としてのブランド哲学の土台になったと思います。
3.エコスタイルの進化と拡大
全国10拠点展開、従業員100人へ
リユースという軸を再確認した私たちは、2013年以降「ファッション」と「ブランド品」に特化した企業経営へと変革、私たちの目指す世界観を追求することになりました。
少しずつ、しかし確実に広がっていったリユースの輪。
お客様の共感、信頼、そして仲間の努力が実を結び、私たちは全国に10拠点(2024年度中に自由が丘店・横浜元町店を出店)を展開できるまでに成長しました。
また、4月1日現在、従業員数は100名を超え、組織としても“個”から“チーム”へと進化。
誰か一人の力ではなく、ひとりひとりの“想い”が重なり、ひとつのカルチャーとなっていく様子を日々実感しています。
私たちが誇れるのは、規模でも売上でもなく、「本気でこの事業に向き合う人が集まっている」この文化そのものです。
心斎橋への新業態出店に込めた想い
2025年5月、私たちは新たな一歩を踏み出します。
大阪・心斎橋にて、新業態の店舗をオープン予定です。
この新店舗は、単なる「リユースショップ」ではありません。
お客様が「価値あるモノとの再会」や「新たな愛着」を感じられる体験を、五感で味わえる空間を目指しています。
お客様の目を奪うような店舗設計、リアルを追求したワクワク感、時代を越えたファッションを社会へ再提案していきます。
私たちは「リユースは“古い”という価値観を壊し、“次のスタイル”を創る」というビジョンを、心斎橋という舞台でかたちにしていきます。
4.支えてくれた全ての方へ
お客様、従業員、パートナー企業へ
この20年間、数えきれないほど多くの方々に支えられてきました。
まずは、お客様。
「使わなくなったけれど、大切だったモノを預けたい」と、私たちを信頼し託してくださった皆さま。
そして、リユースを“次の楽しみ”として選び続けてくださる皆さま。
お一人おひとりの選択が、私たちの原動力でした。
次に、従業員の仲間(同志)たち。
会社が大きく変化してきたこの年月の中で、常に真摯にお客様と向き合い、目の前のモノと、そして自分の仕事に向き合ってくれた全員に、心からありがとうを伝えたいです。
「志を共にする仲間たち」と言えるこの存在が、何よりも誇らしい。
また、商品を一緒に流通させてくださるパートナー企業、物流やマーケティング、システム会社の皆様に至るまで、あらゆる関係者の皆さまの知見とご協力があってこそ、私たちは社会的信用を築いてこられました。
家族と地域社会の支え
また、創業時、そして多くの転機において、支えてくれた家族の存在もまた欠かせません。事業が安定していない時期も、日々仕事に没頭する私を理解し、応援してくれた家族がいたからこそ、今があります。
また、浜松という地域のつながりも、私たちの成長には欠かせませんでした。創業地に大型店舗を構えさせていただく機会もローカルなコミュニティから生じた縁を大切にしたからこそでした。
温かいネットワーク、浜松市という地域のファッションシーンに大きなインパクトを与えられる、楽しめるような店舗を出店したかった私にとって、家主様との出会いは貴重なご縁となり、今では起業家の妹も催事イベントにてお世話になる等、続く絆に、感謝の気持ちは尽きません。
私たちは、たった一つの企業ではあるけれど、無数の人と人、日本と世界をつなぐ「ハブ」のような存在なのかもしれません。それを体現してこれたのは、まさに皆さんのおかげです。
5.これからの20年へ - ビジョンと採用への想い
「もう、一度、愛着を持てる豊かな世の中へ」
このビジョンは、私たちがこれからの未来に向けて掲げる旗印。
ただモノを売り買いするだけの世界ではなく、
“もう一度”そのモノに触れることで、“もう一度”心が動き、“もう一度”人と人とがつながる——
そんな循環型の社会こそ、私たちが目指す未来です。
今、リユースという言葉は少しずつ浸透してきています。
けれど、私たちは「次のリユース」をつくっていきたい。
“安いから買う”ではなく、“意味があるから選ばれる”リユースへ。
ファッションを、資源を、想いを、循環させる新しい仕組みを創りたい。
そのために、これから私たちと共に未来をつくっていく「同志」を必要としています。
今、採用活動にも力を入れているのは、単なる人員不足ではありません。
このビジョンに共感し、「自分の仕事が社会を変える」と信じて挑戦できる仲間を、一人でも多く集めたいからです。
20年前、たった一つの想いから始まった事業は、今や30億円規模の中小企業にまで成長しました。
これからの20年、私たちは“人”の力で未来を変えていきます。
あなたも、その一員になりませんか?
もう、一度、愛着を持てる豊かな世の中へ
20年という年月の中で、たくさんの挑戦をし、失敗を重ね、学び、そして多くの出会いに恵まれてきました。
気づけば、私たちの原点は「愛着」だったのだと思います。
一枚の子供服から始まったこの物語は、いま、100人の仲間と、30億円の信頼と、全国10の拠点へと広がりました。
でも、それはゴールではありません。むしろ、ようやく「本当にやりたかったこと」に挑めるスタートラインに立てた、そう感じています。
私たちがつくりたいのは、ただのリユースショップではありません。
心が動く出会い。価値の再発見。人と人のつながり。
それらが重なり合って生まれる、「愛着の連鎖」です。
“もう一度、愛着を持てる”——それは、モノに限りません。
暮らしに、仕事に、人に、そして自分自身にさえも、もう一度愛着を取り戻す。そんな社会を、私たちは本気で目指しています。
最後になりますが、この20年に関わってくださったすべての皆様へ、心からの「ありがとう」を伝えさせてください。
そして、これからの未来も、共に歩んでいただけることを願って。
スタンディングポイント株式会社
代表取締役 若森 寛
