281.エッセイ:物語にならない景色-その空気感を描く-
意識して見たものは、意外と物語になりづらい気がする。観光案内の様なエッセイは書けても、中々それ以上の拡がりは難しい。
例えば、私が住む神戸には、ポートタワー始め、異人館、南京町、ハーバーランド等、いわゆる神戸らしい風景はある。
ただ、それらを主題で書こうとすると、途端に筆は止まってしまう。
──この景色は見えるのに、物語にならないのはなぜだろう。
それが、初期記事を書く際に、私自身、難しさを感じた点である。
その為、今は、主軸の風景を描くよりは、そこにある空気感を意識し、何より大切にしている。
例えば、異人館が位置する【北野坂】を描く場合でも、下記の様に、その場所が有している、特有の空気感を意識して記載している。
整然とした北野坂の歩道には、きれいに刈り込まれたトウカエデの街路樹が並び、その鮮やかな緑が目を引く。
歩道に沿って置かれた大きな鉢植えには、白いマーガレット、黄色や薄桃色のラナンキュラスが丁寧に寄せ植えられている。
そして、北に連なる六甲山の萌えるような新緑が、この坂道の頂点とつながり、北野の街並みと溶け合う光景は、何度見ても心をつかまれる。
私は、五感の中では視覚的感覚が強い為、空気感、雰囲気を映像やカラーで認識する為かと考えている。
私自身、この空気感を描けるかどうかが、作品作りには、大きく起因している。この空気感は油絵の様に色を重ねるのでなく、一気に描くイラストに近い。上手い似顔絵画家の様に、一気に特徴を掴めれば作品は描けるが、特徴を掴めないと随分と苦戦する。
一気に描いた作品では、【金胎記-おおこがね様を巡る三代記】という作品がある。
これは、下記の1枚の写真からストーリーをイメージし、『宗教と金』に関する中編作品となっている。
ただ、この写真も意識したものでなく、鹿児島の祖母宅に訪問した際、幾つか撮ったスナップ写真の1つになる。
逆に意識して撮影した錦江湾、桜島、磯庭園は使いあぐねている。
不思議なものだ。

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