【プレミアリーグ】衛星とともに軌道にのった世界最高峰リーグ
【初回掲載】2026.04.04
【最終更新】2026.04.04
1992年、衛星放送のSkyとタッグを組むことで始まったイングランド・プレミアリーグは、いち早く放映権ビジネスを軌道にのせることに成功しました。いまや世界最高峰のサッカーリーグとして君臨しています。
この記事では、プレミアリーグの放映権ビジネスについて基本的な知識を解説します。また、日本で繰り返されてきた「放映権争奪戦」の歴史についても紹介します。はたして、この隆盛はいつまで続くのでしょうか。
イギリス国内の放映権料の推移
30数年で8,000億円規模に成長
プレミアリーグが発足したのは1992年のことです。詳しい経緯については『プレミアリーグ全史』などの書籍に詳しいのでここでは割愛しますが、衛星放送・Skyと「5年・総額3.04億ポンド」の独占契約を結んでいます。
Skyはまだ放送開始から日が浅く、契約獲得に苦労していました。フットボールは逆転の切り札だったのです。プレミアリーグにとっては、無料放送から有料放送に切り替わるものの、放送される試合数は増え、従来よりも多額の放映権料を得られることになりました。
しばらくはSkyとの独占契約が続きましたが、政府当局の指導もあり、入札が導入されるようになりました。大手通信会社のBT(ブリティッシュ・テレコム)が参入し、競争が激化すると放映権料はどんどん上がっていきました。
しかし、放映権料の上昇は、同時にファンが支払う料金の値上げにもつながります。イギリス国内ではすでに放映権料が横ばいとなっており、プレミアリーグは国外からの放映権料を懸命に増やしています。
2025-26シーズンにおいては、イギリス国内の放映権料が年16.7億ポンド、国外の放映権料が21.7億ポンドと推定されています。合計すると38.4億ポンド(約7,900億円)に達します。
放映権料の推移について記したWebサイトはいくつかあり、それらをまとめて表にしました。情報が微妙に食い違っている点もありますが、筆者の見解としてなるべく妥当なものを採用しています。

欧州5大リーグの比較
いち早く放映権料の拡大に成功したことで、プレミアリーグはいわゆる「欧州5大リーグ」の中でも突出した地位を築いています。ラ・リーガとは倍以上の差がついており、他が追いつけない状況です。

全試合が放送されているわけではない
イギリスでは「3pm blackout」と呼ばれるルールがあり、土曜午後3時キックオフの試合はテレビで生中継できません。そのため、年間380試合のうち、生中継されている試合は約270試合にとどまります。
ちなみに、2024-25シーズンまでは年間200試合の放送でした。よって、1試合あたりの放映権料で考えると値下がりしていることになります。
それでも国内向けで巨額の放映権料を獲得できているのは恐ろしい限りですが、そのしわ寄せを受けているのは国内のファンであることは言うまでもありません。複数のサービスを契約する必要があり、高額の出費をしているにも関わらず、すべての試合をライブで観ることはできないのです。
一方で、国外にはその制限がありませんので、日本でも全380試合をライブで観戦することができます。ある意味、国内のファンがもっとも冷遇されているとも言えるのです。
放映権料の分配
均等に近い分配が競争を生み出す
プレミアリーグは、この巨大な放映権料を各クラブに分配しています。2024-25シーズンの実績では、優勝したリバプールには1億7,490万ポンド(約360億円)、最下位のサウザンプトンにも1億920万ポンド(約224億円)が配分されています。
上位と下位の格差が比較的少ないことがプレミアリーグの特徴であり、その結果として上位陣の戦力が拮抗。他国のリーグのようにありがちな「1強」「2強」という構図はできにくくなっています。

EFLへの支援
EFL(English Football League)から独立する形でプレミアリーグが発足し、現在のEFLは2部に相当するチャンピオンシップから4部までを管轄しています。
EFLも放映権料を伸ばしていますが、プレミアとは雲泥の差です。2部に降格してしまえば、クラブはたちまち財政難に陥ってしまいます。それを抑える意味もあって、プレミアからEFLへの配分も行われています。
降格救済金(パラシュート・ペイメント)
プレミアから降格したクラブに対して、3年間を限度に支払われる給付金です。直ちにクラブの経営が破綻しないように設けられた制度ですが、他のクラブとの格差を生む原因として批判する声もあります。
連帯金(ソリダリティ・ペイメント)
他のクラブに対しても資金が分配されています。しかし、それでもプレミアとそれ以外のクラブでは格差があまりにも大きいのが現実です。
昇格を急いで大型補強を行うクラブもありますが、大変なリスクを負います。昇格に失敗すれば、待っているのは経営危機です。
イギリス国外の放映権
アメリカ・アジアで高騰が続く
イギリス国内と同様、国外向けの放映権も2025-26シーズンから新たなサイクルに入っています。国内は4年契約ですが、国外は3年または6年契約となっていることに違いがあります。
2026年にワールドカップを開催するアメリカでも放映権料の高騰が起こっています。NBCは、2027-28シーズンまで契約を結んでおり、放映権料は年間4.5億ドル(6年総額27億ドル)です。ワールドカップ終了後にも新たな入札が始まるとみられ、さらなる高騰が期待されます。
アメリカ: 年4.5億ドル (NBC Sports)
中東・北アフリカ: 年2.5億ドル (BeIN Sports)
タイ: 年9,300万ドル (Jasmine) ※FAカップ込み
インド: 年6,500万ドル (JioStar)
日本: 年5,300万ドル (U-NEXT) ※推定
韓国: 年5,000万ドル (Coupang Play)
アジアでも強い人気があります。時差的にゴールデンタイムのいい時間帯で視聴できることも大きなポイントです。多くの選手をプレミアリーグに輩出している韓国では根強い人気があります。
また、タイもサッカー人気が高い国です。現在は2部に降格してしまいましたが、レスターのオーナーがタイ人であることも知られています。
FAカップとのセット販売
2025-26シーズンからの放映権では、FAカップとセットで販売する試みが行われています。タイや日本ではセットで落札されました。
2024年にリーグとFAが協定を結び、日程調整や財政支援などで合意していますが、その一環と考えられます。
また、EFLとも2028-29シーズンから共同販売に乗り出す見込みです。EFLはカラバオカップの主催者でもあります。
今後はイングランドの主要大会がすべてセットで売られる可能性があります。1社独占となれば、ファンにとっては複数のサービスを契約する必要がなくなりますが、放映権料の高騰はやがて料金に跳ね返ってきます。
日本の放映権
日本におけるプレミアリーグの放映権は、U-NEXTが獲得しています。2024-25シーズンからの7年契約で、2030-31シーズンまで継続予定です。
U-NEXTは「サッカーパック」(月額2,600円)を提供しており、これは通常の月額プラン(2,189円)とは別料金です。サッカーパック単独で契約することも可能です。
日本では、2016-17シーズンにソフトバンク(スポナビライブ)が放映権を獲得して以降、2~3年ごとに目まぐるしく権利者が入れ替わってきました。これらの動きについては、後ほど詳述します。

【補足】EFL/カラバオカップの放映権
イギリス国内
プレミアリーグ発足後、EFLは2部(チャンピオンシップ)・3部(リーグ1)・4部(リーグ2)を統括する機関となっています。また、リーグカップ(カラバオカップ)などを主催しています。
イギリスではSky SportsがEFLの放映権を持っています。チャンピオンシップ328試合、カラバオカップ93試合(全試合)など、合計で年間1,059試合の中継が保証されています。
日本
日本ではDAZNが放映権を持っています。現在の契約は2027-28シーズンまでと推定されています。というのも、EFLの代理店(Pitch International)が結んでいる契約が2027-28シーズンまでであり、それを超えた契約はできないためです。
国際映像が存在する試合は、Sky Sportsがイギリス国内で中継している試合と、イギリスでは生中継できない「3pm blackout」に該当する試合に限られており、EFLの全試合が中継されるわけではありません。
チャンピオンシップだと、毎節3~4試合が対象となっており、EFLの公式サイトで対象試合が公表されています。
最近ではチャンピオンシップでプレーする日本人選手が増えていますが、特定の選手が所属するクラブの試合を追いかけるといった楽しみ方は残念ながらできません。
国際映像が提供されない試合については、各クラブが提供するストリーミングで視聴できる場合がありますので、詳細は各クラブのWebサイトをご確認ください。
日本で繰り広げられた放映権争奪戦
日本におけるプレミアリーグの放映権は、2~3年おきに入れ替わるという激しい競争下にあります。競争は放映権料の高騰をまねき、視聴者はそれに振り回されることになります。
ソフトバンクの参入と挫折
日本においてプレミアリーグの放映権が大きく動いたのは、2016-17シーズンにソフトバンクが獲得したことでしょう。2016年3月に開始した「スポナビライブ」の目玉コンテンツとして、プレミアリーグの放映権獲得に動いたのです。このとき、ラ・リーガ(スペイン)の放映権も獲得しています。
スポナビライブの最大のねらいは、ソフトバンクの回線契約獲得でした。そのため、開始当初はソフトバンク契約者には月額500円、それ以外は3,000円という大きな差がつけられており、不満の声があがりました。
ソフトバンクにとって誤算だったのは「黒船」DAZNの参入でしょう。2016年8月にサービスを開始したDAZNは、翌2017年からJリーグの放映権を獲得しました。ソフトバンクも獲得に名乗りをあげていましたが、競り負けています。
契約2年目の2017-18シーズンには、プレミアとラ・リーガの一部試合について、DAZNにサブライセンスを提供しています。契約が伸び悩んでいたがゆえの「切り売り」と考えられます。
一方、DAZNはこの契約で欧州5大リーグの試合を(すべてではありませんが)配信することができました。ある意味黄金時代です。
2018年2月、スポナビライブの終了が発表されました。スポナビライブが持つ放映権はDAZNに移管されることとなりました。
DAZNへの移行と「サイレント削除」
ソフトバンクから契約を引き継いだDAZNは、その契約が切れた2019-20シーズンから新たに3年契約を結んでいます。事実上、ライバル不在の無風状態だったと言えます。
しかし、3年後に新たなチャレンジャーがやってきます。DAZN自身もイギリスからやってきた「黒船」でしたが、次にやってきたのは韓国からやってきたEclat Media Groupでした。
Eclatは日本で「SPOZONE」というサービスを行っており、MLBの試合を配信していましたが、ほとんど無名に近い存在だったと言えるでしょう。
※Eclatの発音は「エイクラ」に近いようです
2022年1月20日、アジアの14市場における入札の結果が出たと報じられました。その中に、日本(および韓国)市場でEclatが落札したことが記されていたのです。
https://www.sportbusiness.com/news/premier-league-media-rights-bids-due-in-14-asian-markets/
DAZNにとって、この報道は実にタイミングが悪いものでした。その直後に料金値上げを発表したのです。後にプレミアリーグの権利喪失が広まると「情報を隠して値上げした」との批判が殺到しました。
実際のところ、値上げの決定はそんな短期間でできるものではなく、DAZNにとってはタイミングが重なった不運と言えますが、世間はそう見てはくれませんでした。
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