見逃される足の崩壊点:Lisfranc損傷の最新知見と戦略で復帰率86%の壁は越えられるか!?
“Imaging of Lisfranc injuries in the athlete”
要約1
Lisfranc 関節の重要性と構造
Lisfranc 関節複合体(中足部と前足部)は、複雑な骨構造と靭帯構造を持ち、足の安定性に重要な役割を果たしている。
第 2中足骨(M2)の基部が「キーストーン」(要石)として機能し、その周囲の靭帯(特に Lisfranc 靭帯)が非常に重要。
靭帯には背側(dorsal)、骨間(interosseous)、足底(plantar)の成分があり、特に足底側 Lisfranc 靭帯が構造の安定性に寄与。
ケガのメカニズム
Lisfranc 損傷には、高エネルギー(例:交通事故)によるものと、スポーツ選手に多い低エネルギー(スプリント、着地など)のものがある。
低エネルギー損傷では、前足が強制的に外転されたり、底屈(つま先を下げた状態)で荷重がかかることで背側靭帯の緊張が生じ損傷が起きやすい。
画像診断(Imaging)
X線(レントゲン): 初期診断はまず単純X線(非荷重、AP、側面、斜めなど)で行われる。
AP(前後)像では、第1および第2中足骨の位置関係に注目。
30度内側斜位像や側面像でも重要なアライメントや関節間のズレを確認。
荷重・ストレスX線は痛みがあると困難な場合もあるが、重症度評価には有用。
CT(コンピュータ断層撮影): 微細な骨折、サブラクゼーション(関節不適合)、「Fleck サイン」(靭帯付着部の骨片)などを明確に可視化できる。
MRI(磁気共鳴画像): 軟部組織(靭帯など)評価に非常に有効。Lisfranc靭帯の三成分(背側、骨間、足底)を描出可能。
MRI では骨髄浮腫(骨のむくみ)や部分断裂/完全断裂の区別がつきやすい。
損傷のグレード分類(Grade I〜III)があり、完全断裂(Grade III)は不安定とされる。
分類システム
Nunley & Vertullo によるアスリート向けの分類が紹介されている。
Stage I:Lisfranc靭帯の捻挫。荷重X線で関節間隔(diastasis)やアーチ低下がない。骨スキャンでの集積増加あり(安定)。
Stage II:背側+骨間靭帯の断裂。関節間隔が 1–5 mm 広がるが、アーチの高さは保たれる(不安定)。
Stage III:靭帯の断裂+関節間隔 > 5 mm、アーチ低下あり(不安定)。
臨床的重要性とまとめ
アスリートにおける低エネルギー Lisfranc 損傷は、レントゲン上非常に見落とされやすい。約 20% が見逃されるとの報告もある。
正確な診断には、荷重像による比較、CT や MRI の適切な使用が不可欠。
MRI によって部分断裂と完全断裂を区別できることが、治療方針(保存療法 vs 手術など)の決定に重要。


“Return to Play After Low-Energy Lisfranc Injuries in High-Demand Individuals: A Systematic Review and Meta-Analysis of Athletes and Active Military Personnel”
要約2
背景
高エネルギーの Lisfranc(中足部)損傷はよく研究されているが、アスリートや軍人といった「高負荷をかける活動をする人」で報告される低エネルギー Lisfranc 損傷(靭帯損傷や微細骨折など)に関するエビデンスは限られており、後ろ向き研究が中心だった。
本メタアナリシスの目的は、これらの高活動者における 復帰率(RTP)/復帰後継続率(RTD) および復帰までの時間を、損傷の種類(骨性 vs 靭帯性)や治療法(非手術、ORIF、一次固定術など)別に検討すること。

方法
PRISMA のガイドラインに従って、MEDLINE(PubMed)、EMBASE、Google Scholar、Cochrane データベースを 2019年6月まで検索。
対象は、アスリートまたは現役軍人で、低エネルギー Lisfranc 傷害を持ち、RTP または RTD を報告している研究。
主な評価項目:RTP / RTD 率、復帰までの時間。副次項目:練習・勤務を休んだ日数、試合欠場数、完全回復までの時間、中足(midfoot)関節の変形・関節症(関節炎)、再手術率など。
統計解析にはランダム効果モデルを使用し、異質性(I²)を評価。
結果
対象:15研究、合計 441人。
復帰率(RTP / RTD): 380/441 人(86.17%) がアスリートまたは軍人として復帰。
アスリート:217人中198人 → 91.24% 復帰。
軍人:224人中182人 → 81.25% 復帰。
治療別比較:
非手術:復帰率 94.5%(95% CI: 88.5–100)
手術(ORIF など):復帰率 90.1%(95% CI: 83.7–96.6)
これらの差(手術 vs 非手術)は統計的に有意ではなかった。
傷害タイプ別(骨性 vs 靭帯性):
骨性損傷:復帰率 82.1%(95% CI: 70.9–93.4)
靭帯性損傷:復帰率 95.8%(95% CI: 92.6–99.1)
しかし、直接比較しても統計的に有意味な差はなかった。
復帰までの期間(練習/休んだ日数):
非手術:平均約 58.0日(95% CI: 13.6–102.4)
手術:平均約 116.4日(95% CI: 62.4–170.4)
傷害タイプ別では、骨性が平均約 98.9日、靭帯性が約 76.5日。
ただし、これらの復帰時間の差異について統計的な有意差は認められなかった(標準化平均差などで)。
試合欠場(games missed):
手術群で平均 4.3試合(±5.7)。
非手術群では過去報告で 1.6試合(95% CI: 0.6–3.8)。
中足関節変形・関節症(midfoot arthritis):
手術後:約 18.5% に関節症(95%CI: 6.2–30.8%)
非手術後:約 11.3%(95%CI: 0.5–23%)
両者の差に統計的有意差はなかった。
再手術率(reoperation):
ORIF(手術固定)**群:再手術率 70.7%(95% CI: 62.2–79.2)
一次関節固定(Primary Arthrodesis, PA)**群:再手術率 32.2%(95% CI: 22–86.4)
差異は統計的には有意とはされていないが、傾向が見える。
合併症:神経(深腓骨神経 sensory 変化など)の報告。
結論
低エネルギー Lisfranc 損傷を持つアスリートまたは軍人において、高い復帰率(86%以上) が得られている。
復帰までの日数(練習/休み期間)は、損傷のタイプ(骨性/靭帯性)や治療法(手術 vs 非手術)によって明確な差は示されていない。
ただし、研究の質が低く、異質性も大きいため、「最適な治療方法」や「復帰に要する正確な時間」を確定するにはさらなる高品質な研究が必要。
“Subtle Lisfranc Injuries: A Topical Review and Modification of the Classification System”
要約3
Lisfranc 損傷は発生頻度がそれほど高くないが、特に “微細(subtle)” な損傷は見逃されやすく、報告によれば最初の診断レビュー時点で約 1/3 が見落とされる。
見逃しは法的紛争(訴訟)の原因になることもある。
高エネルギー(外傷性)だけでなく、低エネルギー(スポーツなど間接的力)によっても起こる。
微細な Lisfranc 損傷の特徴
微細な損傷とは、明確な脱臼や大きな骨折変位を伴わず、靭帯損傷や軽度の関節不安定性が主体になるタイプ。
従来の分類(Hardcastle/Myerson ら)では、高エネルギーによる骨破壊や明確な不整合を主に扱っており、こうした損傷を十分にカバーしていないという批判がある。
病理・解剖パターン
著者らは既存分類を改変し、微細損傷における関節不安定性パターンを 縦型(longitudinal)、横型(transverse)、およびそれらの複合型(+第1中足‐舟状骨関節、+第一 TMT 関節など)に分類。
実際の手術所見・CT 画像から、多くの症例で複数の不安定部位が共存していた(“単純” 型だけでなく “複雑” 型が多数)。
さらに、CT で見つかる骨片(骨折または剥離片)がかなりの頻度で確認された(レントゲンでは明らかでない場合でも)。
分類システムの修正提案
微細損傷を既存のクラシックな分類体系に組み込むには限界があるため、著者らは “Type D(Subtle Injury)” として新たなカテゴリーを提案。
具体的には、縦型/横型/複合型のパターンを反映した分類を行うことで、不安定性の部位や重症度をより詳細に表現可能とする。
また、微細損傷では 単なる骨間距離(diastasis) だけでなく複数関節の不安定性を評価すべき、という臨床・手術への提言がなされている。
臨床的インプリケーション
微細な Lisfranc 損傷は放置や誤診されると、長期的に 中足部の不安定性、関節変性、慢性痛 などの問題を引き起こす可能性がある。
単純な経皮固定(percutaneous fixation)だけでは、隠れた不安定部位を見逃すリスクがある。著者らは、開放的アプローチ(open reduction) によって全体の不安定性を評価・固定することが望ましいと主張。
病変の複雑性(複数関節への関与、骨片の有無など)に応じて、追加の固定(例えば第一中足‐舟状関節や TMT 関節への固定)を考慮する必要がある。
今後への提言
この研究は後ろ向きデータに基づいており、将来的には前向き研究が望ましい。
著者らは、微細損傷の病理・解剖学的実態をもっと深く理解することで、手術戦略や固定方法(どの関節を、どう固定するか)を改善できると指摘している。
分類システムの改訂は診断精度を高めるが、これを臨床治療アウトカム(予後、再手術、変形・関節炎発症など)と結びつけた研究も必要。
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