【スポーツAI研究】MLBでも導入が進むモーション分析を使うとどんな事ができるのか? KinaTrax の事例を調べてみた
こんにちは!ライブリッツでAI・データ分析の研究をしている廣末です。
最近、スポーツ中継を見ていると「データの進化」に驚かされることが多いですよね。私たちライブリッツも日々AI技術の研究に励んでいますが、今回は世界最高峰の舞台・MLB(メジャーリーグベースボール)でも導入されているマーカーレスモーションキャプチャシステム「KinaTrax(キナトラックス)」の事例を調査してみました。
公式サイト:Hawk-Eye Innovations | KinaTrax
そもそも「KinaTrax」ってなに?
簡単に言うと、「スタジアムを丸ごと巨大な分析ラボに変えてしまう技術」です。 スタジアムに設置された複数のハイスピードカメラが、投球や打撃の動きを逃さずキャッチ。最新のディープラーニング技術によって、体にセンサーをつけなくても(マーカーレス)、関節の動きや骨格の向きをミリ単位でデジタル化できます 。現在、ソニーグループの技術エコシステムの一部として、MLBや米国の大学野球などで急速に導入が進んでいる大注目のシステムなんです 。「骨格分析を極めると、スポーツはどこまで進化するのか?」その驚きの実態をご紹介します!
※KinaTraxは、KinaTrax, Inc.の登録商標です。
1. 「なんとなく」はもう卒業。0.1度のズレも見逃さないAI
プロの世界でも、これまでは「今日はリリースポイントが高い気がする」といったビデオ分析や経験則による指導が主流でした 。しかし、KinaTraxはそれを「数値」という残酷なまでに正確なデータに変えてしまいます 。
例えば、シカゴ・カブスのカイル・ヘンドリクス投手の事例が面白いんです。 2018年、エースとして期待されながら不調に陥った彼に対し、KinaTraxで過去の絶好調時のフォームを3D空間上で重ね合わせて比較しました 。
判明したこと: 投球時に体幹がわずか「0.1度単位」で一塁側に傾いていた 。
結果: この根本原因をピンポイントで修正した結果、シーズン後半の防御率は2.65と劇的に改善 。
人間には見えない「わずかなズレ」をAIが見つけ出し、即座に修正プランを提示できる。まさに科学的コーチングの真骨頂ですね 。
2. 大谷翔平選手も実践!自分を客観視する「究極の鏡」
あの二刀流、大谷翔平選手もバイオメカニクスのデータを活用していることで知られています 。 打者は相手の配球によって、無意識に姿勢が崩れてしまうことがあります(内角を攻められて上体が起き上がるなど) 。
活用法: 自分のスイングをデータで客観視する「鏡」として利用 。
チェック項目: 捻転差(Hip-Shoulder Separation)や、エネルギーが効率よく伝わっているか(キネマティック・シーケンス)を数値で確認 。
これにより、どんな攻められ方をしても「理想のスイングプレーン」を維持できる再現性を手に入れているのです 。

3. ケガを未然に防ぐ!AIが教えてくれる「体からのSOS」
スポーツチームにとって、選手の怪我は最大の損失です。MLBでは投手の故障による価値毀損は年間15億ドル以上とも言われています 。
KinaTraxは、肘の靭帯にかかる負荷(肘内反トルク)を精密に計測します 。 「本人は元気だと言っているけれど、データ上はフォームが乱れて肘への負担が増えている」といった目に見えない疲労を検知し、登板間隔を調整することで、大怪我を未然に防いでいるのです 。
4. 隠れた才能をデータで発掘。スカウティングの革命とは?
さらに驚きなのが、スカウティングへの活用です。 現在の成績(過去)ではなく、身体の可動域や特性から「未来の伸び代」を評価します 。
事例: 大学時代、目立った実績のなかったレット・ラウダー投手 。
分析: 彼の身体特性を解析した結果、指をすべて使う「全指(All-fingers)」グリップが最適だと判明 。
成果: 独自のチェンジアップを武器に全米最優秀投手へ成長し、ドラフト1巡目で指名されました 。
5. データは「結果」から「プロセス」の時代へ
これまでのスポーツデータは「打率」や「球速」といった結果の記録でした。 しかし今や、なぜその結果が出たのかというプロセスの解明へと進化しています 。KinaTraxのような技術は、もはや単なる分析ツールではなく、勝利のための「必須インフラ」になりつつあるんですね 。
さて、こうした専用の大型システムが凄いのは分かりましたが……「もっと身近なツールで、同じようなモーション分析はできないの?」と思った方も多いはず。ということで、次回はライブリッツ社員が体を張って(?)、
「最新のAI・Geminiを使うと、どこまでモーション分析ができるのかやってみた」というテーマで検証してみたいと思います!お楽しみに!
※KinaTraxは、KinaTrax, Inc.の登録商標です。
参考文献
Sports Illustrated : "The High-Tech Solvers of MLB's Standardized Era" (カイル・ヘンドリクスの0.1度単位の修正エピソードの詳細) https://www.si.com/mlb/2019/03/29/technology-revolution-baseball-trackman-edgertronic-rapsodo
日本経済新聞 : 「大谷翔平、驚異の再現性支える『骨格データ』」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQODH197O00Z11C24A1000000/
Driveline Baseball : "Breaking New Ground: How Major League Teams are Leveraging In-Game Biomechanics Data" https://www.drivelinebaseball.com/2022/10/breaking-new-ground-how-major-league-teams-are-leveraging-in-game-biomechanics-data/
MLB.com : "The Wake Forest Pitching Lab is changing the MLB Draft" (レット・ラウダー投手の全指グリップとラボでの分析事例の詳細) https://www.mlb.com/news/mlb-draft-prospect-rhett-lowder-in-wake-forest-pitching-lab
Imaging and Machine Vision Europe : "Image analysis helps Chicago Cubs' pitchers stay injury-free" (カブスの2016年優勝と怪我予防・資産保全の関連の詳細) https://www.imveurope.com/news/image-analysis-helps-chicago-cubs-pitchers-stay-injury-free
Hawk-Eye Innovations : "Biomechanics - Research-Grade Biomechanics Tracking and Insights" https://www.hawkeyeinnovations.com/biomechanics
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