【後編】Gemini(AI)を使うと「怪我の予兆」が検知できるのか?スポーツの未来を考えてみた
前編では、スマホ映像とAIで「スイングの数値はどこまで取れるのか」と「投球フォームの違いを見つけられるのか」を検証した話でした。後編では、「普及したらスポーツ現場はどう変わるのか?」「部活動の地域移行」や「怪我の予防」といった具体的な現場課題への応用についてもプロジェクトの研究を担当した加藤に聞いていきます。
1. 「外部委託」時代の指導クオリティをどう担保するか
瀬島: 今回の研究成果は、実際の現場でどのように役立つと思いますか? 特に最近では、部活動の地域移行や外部委託が進むとされていますが。
加藤: はい。部活動の地域移行が始まっています。少子化や教員の過重労働の問題に対応しながら、より質の高い指導を提供するのが目的とされています。ただ、外部委託が進んでも「専門性の高い指導者」が全チームに常駐できるとは限りません。経験や知識の差で、指導の質にバラつきが出ることは起きてしまうと思います。
瀬島: そこをAIで平均化できる、ということですか?
加藤: はい、できると思います。例えば専門知識が少ない指導者でも、スマホで撮影さえできれば、AIが「スイング速度が落ちている」「以前より肘の位置が下がっている」みたいに、客観的な情報を出してくれます。 それがあるだけで、「なんとなく」ではなく、データをもとに話せるようになります。指導の質の底上げ、均質化(再現性の向上)や怪我の予防にもつながると思っています。
【研究考察:指導現場への実装】
属人性の解消: 勘や経験だけに頼らず、データという共通言語で指導しやすくなる
手間の解消:スマホで撮ってアップロードするだけ、という流れなら計測のハードルが下がり、継続しやすい

2. 「怪我の予兆」は動きのズレから発見できるか
瀬島: 「怪我の予防」にも使えそう、という話しが気になりました。コンディション管理にも応用できますか?
加藤: 直接「怪我してます」と診断することはできませんが、「怪我につながりそうな予兆(リスク)」を検知することは可能だと考えています。
瀬島: 例えばどんな感じですか?
加藤: 日々データを貯めていくと、「本人が気づいてないフォームの微妙な変化」が見えてきます。「今日は腕の振りが遅れてる」「踏み込みが浅い」のような、いつもとの違いをAIがアラートとして出してくれます。それを見たコーチは「疲れてる?」「どこか痛い?」のように声がけのきっかけにできます。怪我は表に出るまで本人が気づいてないケースもありますし、外から見て分からない場合どうしても選手任せになりがちですから。もし気がつくサイクルが早く回れば、大きな怪我になる前に対処できる可能性は上がると思います。
瀬島: 確かに、選手自身も「なんとなく調子が悪い」で済ませてしまうことも多そうですしね。
加藤: そうなんです。感覚的な不調を、映像とデータで「見える化」できると、怪我の早期発見につながる可能性があります。これはスマホで毎日手軽に撮れるからこそ実現できるメリットです。

3. 個人で計測があたりまえになる
瀬島: 最後に、この技術が発展した先はどうなると思いますか?
加藤: 長期的には、集約されたデータから共通点が見えてくると面白いですね。 例えば、「12歳でこの体格、このスイング特徴を持つ子は、こういう練習をすると伸びやすい」といった成長曲線や成功モデルが、大量のデータから導けるかもしれません。
瀬島: 野球以外にも広がりそうですね。
加藤: そうですね。ゴルフみたいな「止まっているボールを打つ(スイング)」競技や、バスケットボールのフリースローのような「反復動作」は相性が良いです。一方で、サッカーみたいに動きが流動的な競技はまだ課題が残ります。まずは「型」がある動作から、スポーツ科学の民主化が進んでいくと思われます。
4. 誰もが「手軽にデータ計測できる」世界へ
今回の研究で分かったのは、Geminiの映像解析で「スマホ1台でも、簡単なデータ計測はできる」という事実です。ダイエット中に毎日体重計に乗るような感覚で、手軽に日々の練習に映像解析を取り入れることができるかもしれません。もちろんハイエンドな計測機器ほどの精密さは出ませんが、以下のような用途なら現実的かもしれません。
定量的な成長の記録(いつもより速く振れたか)
定性的なフォーム比較(良い時と何が違うのか)
コンディションの予兆検知(いつもと動きが違うか)
日々の練習にこういう仕組みを組み込めると、誰でもデータを使って、より効率よく指導や強化ができる。そんな未来が想像できるインタビューでした。
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