【イベントレポート】「勝つ」ために、スコアボードを見ない。読売ジャイアンツU15 × SCI オンラインプログラム第1回

2026年5月12日、読売ジャイアンツU15ジュニアユースの選手・保護者を対象としたオンラインプログラムを実施致しました 。

読売ジャイアンツが掲げる「G3ビジョン(トリプル・ゴール・ビジョン)」は、「トップ選手養成」「人間力形成」「社会貢献」という3つのゴールを軸に、野球の真の魅力を世界に発信することを目指しています 。このビジョンを現場で体現するための「軸」として導入されているのが、SCIが提供する「ダブル・ゴール・コーチング」です 。

第1回となる今回のテーマは、コーチングの第一原則である「勝者の再定義」。その深い学びの内容をレポートします 。


1. なぜ「結果だけ」を追い求めると、パフォーマンスは下がるのか?

プログラムの前半では、従来の「勝利」の捉え方が選手に与える負の影響について議論されました。 多くの現場では「試合の得点」や「他者との比較」という、自分では100%コントロールできないものを評価基準にしがちです 。

しかし、自分にコントロールできない「結果」を唯一の評価軸にすると、以下の問題が発生します。

  • 不安の増幅とパフォーマンス低下: 結果を意識しすぎると不安が膨らみ、判断力の低下や不必要な力みを引き起こします 。その結果、本来持っている実力を発揮できなくなるという逆説的な現象が起こります 。

  • 倫理観の低下: 「勝つことがすべて」という極端な思考は、ルールや審判、相手への敬意を失わせ、「勝つためなら何をしてもいい」という問題行動を惹起しやすくなります 。

2. 成長し続けるための「熟達の勝者」とマインドセット

SCIが提案するのは、スコアボードの勝利を目指しながらも、同時に自らを成長させ続ける「熟達の勝者(Mastery Winner)」という在り方です 。


「ELM」で脳を書き換える

熟達を目指す具体的なガイドラインとして、3つの頭文字をとった「ELMモデル」が紹介されました 。

  1. Effort(努力): 結果の成否ではなく、全力を尽くしたプロセスを評価する 。

  2. Learning(学習): 他人との比較ではなく、「過去の自分」と比較して何ができるようになったかを重視する 。

  3. Mistakes are OK(失敗は成功の元): 失敗を成長の糧として認め、新しい挑戦を促す 。

固定マインドセット vs 成長マインドセット

この考え方の土台となるのが、キャロル・ドゥエック博士が提唱する「成長マインドセット」です 。

  • 固定マインドセット: 「才能は生まれつきで変えられない」と考え、失敗を恐れて挑戦を避ける傾向があります 。

  • 成長マインドセット: 「能力は努力によって改善できる」と考え、失敗を学びの機会と捉えて挑戦し続けます 。

プログラムでは、子供の「知能」ではなく「努力(プロセス)」を褒めることで、より困難な課題に立ち向かう意欲(レジリエンス)が高まるという研究データも示されました 。

3. アンケート結果:選手と保護者に起きた「意識の変革」

事後アンケートでは、この理論が参加者の心に深く届いたことが示されています。

【満足度スコア(5.0点満点)】

  • 総合満足度: 平均 4.56

  • 明日へのヒント: 平均 4.68

  • 属性別満足度(選手): 4.77(保護者の4.33を上回り、若い世代に強く響いた結果となりました)

参加者の声(自由記述より)

  • 【選手】 「これまでは結果がすべてだと思っていたけれど、ミスを恐れず、過去の自分と比較して成長していきたい」と、ポジティブな思考への転換が見られました。

  • 【保護者】 「結果ではなく過程を褒める重要性に気づいた。今日から子供の努力を一つ見つけて褒めることから始めたい」と、家庭での関わり方を具体的に変えようとする声が多く寄せられました。

4. 今後の課題:本能的な「勝ちたい」とどう向き合うか

一方で、参加者からは「勝利への本能的な執着と、成長重視の考え方をどうバランスさせるべきか」といった、実践的な問いも寄せられています。
ダブル・ゴール・コーチングは「勝利を諦めること」ではありません。「勝利に全力を尽くすプロセスそのものを、人間的成長の最高の教材にする」ことです。
次回のプログラムでは、第2の原則である「感情タンク(E-Tank)」をテーマに、選手のエネルギーを最大化し、困難な状況でも前向きに戦い抜くための具体的なコミュニケーション術を学びます。


講師・ファシリテーター

  • 青野 祥人(NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブ)

  • 有田 祥太(NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブ)


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