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【エッセイ】終わらないスワイプの果てに①~私がマッチングアプリに疲弊するまで~

始まりは、ほんの少しの期待と、拭いきれない孤独感だったと思う。
周りの友人たちが次々とパートナーを見つけ、楽しそうに過ごしている姿を見るたび、焦りにも似た感情が胸をよぎった。
そんな時、ふと目にしたのが画面に広がる、
きらびやかなマッチングアプリの世界だった。

「これで、運命の出会いが訪れるかもしれない」

そう信じて疑わなかった。
プロフィールを丁寧に作り込み、一番良く見える写真を選び、
自己紹介文にはありったけの希望と個性を詰め込んだ。
まるで、自分という商品を最高のパッケージで陳列するような感覚だった。

最初のうちは、新鮮さがあった。
自分に「いいね」が届くたびに、胸が高鳴った。
メッセージのやり取りも最初は探り探りで、
それでも新しい人間関係が始まる予感に満ちていた。
数日、あるいは数週間メッセージを交わし、
意気投合すれば「会ってみませんか?」というステップへと進む。
その感覚は、まるでゲームのボスを倒すような達成感があった。

しかし、その高揚感は長くは続かなかった。

圧倒的な「量」に打ちのめされた。
アプリを開けば、無限に広がるプロフィール写真の羅列。
星を延々と眺めている気分がいつの間にか、
一つ一つの顔が、次第に記号のように見え始めた。
いつしか思考を停止し、ただ無感情に画面をなぞるだけの作業と化した。
魅力的に見えたはずの相手のプロフィールも、
どこかで見たような定型文ばかりで、個性を感じることができなくなった。

そして、メッセージのやり取りだ。

「初めまして。〇〇です。趣味は〇〇です。」

「そうなんですね!私も〇〇好きです!」

…という、どこかで読んだような、どこかで書いたような会話の繰り返し。テンプレートを使い回しているような相手もいれば、
熱意のない一言返信ばかりで、会話を広げようとしない相手もいる。
こちらも何とか質問を重ね、共通点を見つけようと奮闘するが、
まるで乾いた砂漠に水を撒くような徒労感に襲われた。

何よりも、精神的に追い詰められたのは、
「既読スルー」と「音信不通」だった。
数日、時には数週間メッセージを交わし、
やっとのことで会う約束までこぎつけたのに、
前日になって突然連絡が途絶える。
あるいは、会って楽しく会話をしたはずなのに、
その後のメッセージが返ってこない。
時には、相手のアプリのステータスが「退会済み」になっているのを見て、初めて連絡が途絶えた理由を知ることもあった。

「何がいけなかったのだろう?」
「なぜ、こんなにも簡単に人間関係は途切れてしまうのだろう?」

毎回そう自問自答し、自分の人間性や魅力にまで疑問を抱くようになった。自分には価値がないのではないか、
自分は誰からも必要とされないのではないか、
と思い詰める日もあった。

さらに、この終わりなき消耗戦には常に「費用」がつきまとった。
無料会員ではできることが限られているため、月額料金を支払い、
さらに「特別な相手にアピールしたい」と思えば、
高額なオプション機能やポイントを購入する必要がある。
私は「本気で出会いたいなら、お金を惜しんではいけない」
と自分に言い聞かせ、毎月のように財布の紐を緩めた。
しかし、その課金が、得られる成果に見合っているとは到底思えなかった。まるで、ゴールが見えないマラソンで、
ただひたすら通行料を払い続けているような感覚だった。

実際に会えたとしても、その後の展開が希望通りになるとは限らない。
写真とは全く印象が違う相手。
メッセージでは盛り上がったのに、実際に会うと会話が続かない。
何度か会ってみて、「やっぱり違うな」と感じることもあった。
その度に、時間と労力、そしてお金を無駄にしたという後悔が押し寄せた。

「もう、無理だ」

ある日の夜、
またしてもメッセージが途絶えた相手のプロフィールを眺めながら、
私はそう呟いた。
指はスワイプするのをやめ、画面はいつまでも同じ顔を映し出している。
胸の奥から湧き上がってきたのは、悲しみでも怒りでもなく、
ただただ深い「疲労」だった。恋愛すること自体が、
こんなにもしんどいものだとは知らなかった。
魂がすり減っていくような感覚。

マッチングアプリの世界は、
一見すると理想の出会いが転がっているように見えて、
実は深い落とし穴がいくつも仕掛けられた迷宮だった。
私はその迷宮の奥深くで、出口を見つけられずに途方に暮れていた。

このままでは、恋愛どころか、自分自身が壊れてしまうかもしれない。
そう感じた時、私はスマートフォンを静かに置きアプリを閉じた。
そして、無限に広がるスワイプの先に、何もないことを悟ったのだった。

この消耗しきった心に新しい光が差し込むなど、
その時の私には想像もできなかった。

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