見出し画像

【エッセイ】終わらないスワイプの果てに:私がマッチングアプリに疲弊するまで⑨

新しい朝は、昨日までの不安や曖昧さを一掃し、
私たちに確かな光を投げかけてくれた。
宿をチェックアウトし、帰り道もまた、
穏やかな幸福感に包まれていた。
彼女と手をつなぎ、
他愛のない話をしながら駅まで歩く。
道の脇に咲く花の色が、
一層鮮やかに目に映るようだった。

家に戻ってからも、私たちの日常は、
以前にも増して輝きを増していった。
言葉で確認し合ったことで、
お互いの存在がより一層、
心の中に深く根を下ろしたように感じられた。
毎日のメッセージのやり取りは、
より親密なものとなり、互いのちょっとした変化にも気づき、寄り添えるようになった。

休日は、たいてい一緒に過ごした。
時には、遠出をして新しいカフェを探しに行ったり、時には、ただ近所の公園を散歩するだけのこともあった。
特別なことをしなくても彼女といるだけで、
心が満たされていくのを感じた。
以前は、空白の時間をどう埋めるか、
常に焦燥感に駆られていたけれど、
今はただ、穏やかに流れる時間を慈しむことができる。
彼女の隣で、私は本当に
「息をしている」と感じることができた。

ある雨の日、二人で私の部屋で映画を観ていた。
外の雨音と、スクリーンから流れるBGMだけが部屋に響き、心地よい静寂がそこにあった。
映画の途中で、ふと彼女が私の肩に頭を乗せてきた。
その重みと温かさが、
私を優しい気持ちで包み込む。
何の会話もなく、
ただ寄り添っているだけなのに、
こんなにも満たされるのは、
きっと彼女だからだろう。

私たちは、未来の話をするようになった。
漠然とした「いつか」ではなく、
もう少し具体的な「来年の春にはどこに行こうか」「どんな暮らしがしたいか」といった、
ささやかな夢を語り合う。
その一つ一つが、私の心を温かく照らしていく。
これまで一人で抱えていた未来への不安は、
彼女と分かち合うことで、
希望へと変わっていった。

「ねぇ、一つだけ、聞いてもいい?」

ある日の夜、電話越しに彼女がそう切り出した。
まただ。
この言葉に、私の心はいつだって、小さく震える。

けれど、もうそこに、不安はない。
ただ、彼女が何を語ろうとしているのか、
純粋な期待だけが胸を満たしていた。
私は静かに、次の言葉を待った。
きっとそれは、私たちの新しい物語の、
また一つの始まりになるだろう。
夜空に輝く月が、私たちの未来を優しく見守っているようだった。

いいなと思ったら応援しよう!