バックヤードウルトラ2024レポート
はじめに
1か月前の2025/02/04に、ウェイトを背負ってトレイルをジョグ中に木段で転倒し肋骨を骨折して全治3か月となった。しばらく走れないのでモチベーションが低下気味だったが、2025/02/19から開催されたバックヤードウルトラBig’sチャレンジカップをライブで追っかけているうちに、バックヤードへの意欲が再び湧いてきた。走れない暇人にはいい機会なので、4か月前に初めて出走した北海道大会のレポートを初投稿する。
レース概要
大会名:Backyard Ultra Last Samurai Standing 2024 北海道
開催期間:2024/11/01(金)13:00~最後の一人が残るまで
開催場所:ナポートパーク オートキャンプ場(北海道中川郡中川町)

コースプロファイル:
距離:6.706km(3.353kmを一往復)
獲得標高:約170mD+
サーフェス:ロード約10%,トレイル約90%(すべて土の林道)
熊出没注意:運営が数時間おきに対策(カウベル・爆竹)してくれていたようだが、早朝に林道脇の茂みからガサガサ聞こえていたので、熊鈴は携行したほうがよい。

レース結果
DNF(21Laps, アシスト)

エントリーの動機
ウルトラランナーへの憧れ
私は現在40代半ばで、コロナ禍の運動不足解消のために走り始めたパターンの、平凡なおっさんランナーである。バックヤードに出走する前は、フルマラソン3回(PB 3:34)、トレイルは30km程度のレースを2回走ったことがあるだけである。そんな平凡なおっさんランナーであるが、各種メディア(書籍・動画・ポッドキャストなど)の影響で、ウルトラランナーというものに憧れを抱いている。響きがかっこいい。何かのヒーローみたいだ。
ウルトラランナーとは何か。
国際ウルトラランナーズ協会(IAU)では、フルマラソン(42.195km)を超える距離のマラソン・ランニングをウルトラマラソン・ランニングと定義しています。
フルマラソンを超える距離を走ればいいので50kmでいいのだが、トレイルランナーとしてはやっぱり160km(100マイル)を走って、ウルトラランナーを名乗りたい。
すべての人に開かれた扉
100マイルレースへのエントリーは敷居が高い。過去の実績を問われることが多く、生活環境の都合上、多くのレースに出走することが難しい私には、つらいところである。
しかし、バックヤードウルトラなるレースへのエントリーは、過去の実績を一切問われないのである。バックヤードのことは、いろいろなトレラン系ポッドキャストでとりあげられており知ってはいた。当初は、トップレベルのウルトラランナーの競技であり自分には縁遠い話だと思っていたが、誰でも出走できるということを知り、憧れのウルトラランナーが急に手の届くところにやってきた気がした。
2024年8月末頃に公式インスタで、ラストサムライ・スタンディングの開催日は11月1日であることと、9月にエントリー開始であることを知り、迷わずエントリーすることを決心した。
住んでいる静岡県から一番近いのは東京会場だが、自宅の車を何日間も占有してしまうと家族の生活に支障をきたすので、実家がある北海道会場にしようと思い、実家に連絡して車の使用許可を得た。他にも家族やら何やら各方面の同意を得る必要があるが、何とか乗り越えた。
オールアウトしてみたい
ウルトラに限った話ではないが、必死の形相で全力を出し切るランナーの姿は見ている人の心を打つ。なぜあんなに必死になるのか、そのためにどんな練習を積んできたのか、それは本人に聞いてみないと分からない。その理由は、もしかしたら他人には言いたくないことかもしれない。何があったのかは知る由もないけれど、このランナーには長く険しい道のりがあったんだろうな、それが報われてよかったな、と思わずにはいられない。背景は何であれ見ている人の心を打つ。
私も全力を出し切ってみたい。他人の心を打ちたいというよりは、全力を出し切ったときどんな気分になるのかが興味深い。果てしなく長く険しい道のりを超えて、やっとのことでたどり着いたその先は、さぞ達成感と幸福感に満ち溢れているのではなかろうか。オールアウトしたら、しばらくバーンアウトしてしまいそうだけど(笑)。
マイ・フェイバリット・オールアウト
Jasmin Paris(2024 Barkley Marathons)
トレーニング経過
9月だけでもボリュームを積む
8月末にエントリーすることを決めたので、レースの11月1日までのトレーニング期間は2か月しかない。レース目標はオールアウトである。どこまで出し切れるかはメンタルと脚力によることは明白なので、必然的にボリュームを積むしかない。これまでの月間走行距離は200~250km程度だった。9月は走行距離500kmと獲得標高15000mD+を目標とし、ギリギリ達成することができた。

「キロ7分~7分半で6.7km」を繰り返す
近所の運動公園のハイキングコースに、6.7km, 300mD+のバックヤード練習用コースをつくって、とにかくそこで走りこんだ。本番では1ラップを50分で走って10分休憩することを想定し、キロ7分~7分30秒のペースで6.7km走ることを繰り返す練習を重ねた。

レース前にファスティングでリカバリー
9月は目標としたボリュームをこなすことができたが、いつもの2倍走ったので疲労の蓄積が激しかった。レースの3週間前に最終リハーサルとして12ラップする練習をやろうと考えていたが、内臓に激しい痛みが出てきたため、できずにいた。レース2週間前に病院に行くと憩室炎と診断され1週間入院した。ここにきての入院はショックが大きくDNSが頭をよぎったが、疲労ぬきのいい機会となった。疲労ぬきのためにファスティングするアスリートは多い(2週間前にはやらないと思うが)と聞いたことがあったので、3日間の強制絶食中も何だかアスリートっぽいなと思うと前向きになれた。入院前はHRVステータスはどん底だったが、退院する頃にはバランス領域を突き抜けてしまうほどに回復した。

補給・装備の計画
補給計画
どのようなものをどれくらい補給すればいいのか、専門知識がないので分からない。必要なエネルギーは「1時間に最低100kcal」みたいなことを聞いたことがあるような、ないような…。調べてみた。

バックヤードの場合、体内に貯蔵しているエネルギー1500kcalは無視していいような気がするので無視すると、1ラップで必要なエネルギーは、
時間50分×体重63kg×運動強度5METs×1.05=275.6kcal
となり、1日では6615kcalとなる。これを目安とすることにした。
リカバリーのことも考えるとカロリーだけでなく他の栄養素も必要なんだろうなと思うが、これも専門知識がない。たんぱく質、ビタミン、ミネラル、…と思いついたところで、どの栄養がどのくらい必要なのかは調べてみてもよく分からない。とりあえず、よく使う補給食に含まれるエネルギーと主要な栄養素を書き出してみた。

カロリーメイトはバランス栄養食というだけあって、バランスがいい感じがする。他の補給食もたんぱく質やナトリウムなどが含まれておりバランスはいいはずだと信じて、この中の組み合わせでいくことにした。
カロリーメイト100kcal+ようかん175kcal=275kcal
素材で勝負のうまナッツ180kcal+ローヤルゼリー90kcal=270kcal
の2パターンの組み合わせを毎ラップ後に交互に補給して、6時間に1回はアルファ米を食べることにすると、1日あたりのエネルギーは5784kcalとなり、計算上必要な6615kcalに1割強ほど足りないが、許容範囲だと割り切った。
3日間も走れないだろうから、3日分用意した。

梅干し純は、塩分を欲した際に適宜補給する。
メダリストカフェイン200冴は、いざというときのお守りとする。
あとは、アセロラジュースとかアクエリアス・マルチビタミンとか、抗酸化物質系のリカバリーに良さそうな飲料を、北海道で現地調達した。
ウェア計画

ギア計画

デポジットエリア
特にデポエリアはお金をかけだしたらきりがないし、そもそもお金もない。欲しいものはいろいろあったが、自分の目標はオールアウトすることであって、ラストサムライになりたいわけではないと自分に言い聞かせ、なるべく手持ちのもので考えた。下記の中で新規購入したものは、COチェッカー・水タンク・ヒーターである。
サポーターなしなので、テント内では座った状態でなるべく多くのものに手が届くようなレイアウトを考えた。



レース状況
天候
下図の気象データをもとにしたグラフからは読み取れないが、1ラップ目(11/1 13時~)にゲリラ豪雨があった。3ラップ目(11/1 15時~)くらいまで雨が降っていたが、その後は雨は降らなかったと記憶している。
ゲリラ豪雨により林道の路面はぐちゃぐちゃで、水たまりがたくさんできていた。水はけは悪く、最後までそんな状態だった。
夜間は濃霧で視界が悪く、ヘッドライトだけでは心許なかった。腰もしくはハンドライトもあるとよかった。
気温は思ったより寒くなく、走り続けていれば低体温症になることはない感じがした。ただし、前日11/1の明け方は1.4℃まで冷え込んでいたので、11/2の明け方の気温が高かったのは運が良かっただけである。

(気象庁HPの過去の気象データ検索を参照し加工)
ラップタイム
1ラップ目から21ラップ目まで、目標ペース(キロ7分~7分半)を維持してラップタイム48~49分で戻ってきている。
22ラップ目は、3.65km地点でDNFを決めてGPSウォッチの記録を停止した。

シューズ
メインのシューズは1ラップ目で激しく濡れたのですぐに交換し、ほぼ最後まで雨天用のシューズを履いた。このシューズはソールが固めで、終盤、特にロード区間で足底が痛くなった。最後の2ラップはサブのシューズを履いたが、靴紐をきつく締めすぎたのか、右足母指球付近に痛みが出た(血マメになっていた)。
このレースに最適の理想のシューズは、防水で、ロードもトレイルもいけるようなラグで、長時間履いても足底が痛くならないソールで、自分の足にあった血マメができないシューズである。そんなシューズを探してみようかしら。
デポエリアの過ごし方
補給は計画通りに摂取し、途中でエネルギー切れを感じることはなかったのでうまくいったと思う。
一方、低体温症にならないようにこまめに着替えることを心掛けたが、これはよくなかったと思う。気温がそこまで下がらず汗冷えしなかったので、過剰に着替えをしていたことになる。身体を休めるべき時間を不要な着替えに費やしてしまった。これにより睡眠時間を確保できないことが多く、最後まで全く眠れなかった。チェアで寝ようとしたこともよくなかったかもしれない。補給や着替えも大事だが、身体を休めることの優先順位をもっと上げるべきだった。
サポートなしの場合、睡眠時間の確保が難しくなるので、他の時間を節約する術を考えるべきであると思った。例えば、走りながら補給するとか。

DNFまでの経過
100kmを超えた16ラップ目くらいから、だんだん両足の内転筋が痛くなってきた。20ラップ目くらいから、上りは大丈夫だったがフラットと下りで足が上がらなくなってきた。DNFとなった22ラップ目は、折り返しまでは目標ペースで走ったが、折り返し後の緩やかで長い上りを戻る脚力も気力も残っておらず、歩きながらあきらめてGPSウォッチの記録を止めた。1時間経過しても戻ってこなかったので、運営が軽トラックで迎えに来てくれた。
振り返り
オールアウトできたのか
DNFを決めて時計を止めたときは「出し切った」と思ったが、後で冷静に考えると、出し切れなかったものがたくさん残っていた。
あきらめる直前まで50分で戻ってこれるペースで走れており、10分の余裕があるのだから、ペースを落とせば時間内に戻ってこれたはずである。目標ペースを維持することにこだわりすぎて、維持できなくなりそうになっただけであきらめてしまった。脚が疲労するのは当たり前だ。疲労してから粘ろうとしなかった。
最後は急に眠気がやってきて集中力が切れた感じもあった。ネガティブになる一方でポジティブに切り替えられなかった。お守りのカフェインも温存したままだった。
バックヤードに特化したトレーニングはたった1か月だったが、我ながらフィジカル面ではいいところまで仕上がっていたのではないかと思う。ただ、メンタルがついてこなかった。これは経験が必要なことでもある。いい経験ができたので、メンタルも多少強くなったはずだ。
オールアウトへの道のりはやっぱり長かった。オールアウトは永遠のテーマなのかもしれない。いつの日か最高のオールアウトができるように、これからも走り続けたい。
ラストサムライよりアシストの方がいい?
最高のオールアウトってどんなだろうか。本当に全部出し切ったら死んでしまうので、そのギリギリなんでしょうね。
そういえば、本当に死にそうになるまで走った壮絶なバックヤードの動画を思い出した。
【ネタばれ注意】
Sam Harveyはレース終盤、医者から死ぬぞと言われても世界記録まで走り続け、世界新記録をアシストした。
この動画に限らずだが、ラストサムライ(ラストマン)よりアシストした人の方が、出し切った達成感がある印象がある。2024年のサテライト大会日本代表のお2人も同様か。
ベルさんは「まだ行けた」という感じ
平田さんはやりきった感じ
ところで、Sam Harveyと平田さんには共通点がある。
Sam 「I'll take him to the win.」
平田さん「俺が日本のエースを押し上げた」
アシストの美学である。この心境はいつ生まれるのだろうか。普通に考えると、最初からアシストになりたくて走っているわけではなく、ラストサムライを目指して走ったが、勝てなくてアシストになるのだと思う。Samと平田さんはどうだったのだろう。最初からこう思っていたのだろうか。もしくは途中で心境が変わって、こう思うようになったのだろうか。「こいつには勝てないが、とことん押し上げてやる。」みたいな。勝負には勝てないかもしれないが、オールアウトするという観点では、この心境が境地のように思う。
おわりに
満足いく走りができなかったような振り返りになったが、ダメダメだったわけではない。これまでの最長距離は50km。その3倍近く走ることができたという達成感はある。できなかったことが、できるようになるのは楽しい。
走る理由は人それぞれ。理由は何でもいい。理由がなくてもいい。
人間は走るために進化してきたのである。長く遠くへ走りたくなるのは人間の本能なのである。
「脚を動かせばいい。走るために生まれたと思わないとしたら、あなたは歴史を否定しているだけではすまない。あなたという人間を否定しているのです」

