SSLコンソール&チャンネルストリップガイド 〜9000 J & K編〜
SSLコンソールのチャンネルストリップには、どのような音の違いがあるのでしょうか?
この「SSLコンソール&チャンネルストリップガイド」では、SSL 4000 B/4000 E/4000 G/9000 J & Kの各チャンネルストリップについて、そしてこの象徴的な技術が Oracle、Duality Fuse、ORIGIN といったコンソールへどのように進化してきたのかを詳しく解説します。
SSLのプリアンプ、ダイナミクス、EQの違いを深く掘り下げながら、各チャンネルストリップが持つ固有のサウンドキャラクターを解き明かすと共に、これらの伝説的なSSLコンソールが形作ってきた名盤の数々もご紹介します。
9000 J & K(1994)
「モダンミュージックのサウンド」

クリーンでスムーズ、ハイファイな明瞭さ。
緻密で透明感があり、洗練されたサウンド。
1990年代半ば、SSLは9000シリーズ・コンソールの登場によって、現代的な音楽制作における新たな基準を打ち立てました。
9000シリーズには、革新的なSuperAnalogue™テクノロジーが搭載されています。
SuperAnalogue™テクノロジーは、信号の情報を損なうことなく、非常に透明度が高い、広帯域な信号経路を実現するために設計されました。
まるでエンジニアがアーティストと同じ部屋にいるかのように、音の細部や空気感を捉えることができます。
また、オーディオ信号の経路から電解コンデンサーを排除することで、極めて優れた低ノイズ性能と、非常に少ない高調波歪みを実現。
さらに、可聴帯域全体における位相シフトを最小限に抑えることで、透明で没入感のあるアナログ・サウンドステージが生み出されます。

9000シリーズは、ロックやポップスのミックスをかつてないほどスケールの大きなサウンドに仕上げると同時に、ヒップホップやR&Bにも、深く伸びる低域ときらめくような高域をもたらしました。
比類なきダイナミクスと奥行きによって、音楽を、現実を超えた迫力あるサウンドへと昇華させることで定評を得た9000シリーズは当時の業界標準となり、アナログ設計における重要なマイルストーンとなります。
ここで得られた画期的な成果は、DualityやOracleといった、SSLのその後のフラッグシップ・コンソールへの開発にもつながりました。
9000シリーズは、モダンな音楽制作におけるベンチマークとなり、世界的に影響力のある多くのアーティストやエンジニアから信頼されてきました。
Dr. Dre、Jay-Z、Nas、DMX、Mary J. Blige、Nicki Minajといったヒップホップ/R&Bの重要なアーティストたちは、その精度と奥行きのあるサウンドを求めてこのコンソールを愛用。
また、Metallicaのようなロックの巨匠や、FugeesのWyclef Jeanも、自身のプライベートスタジオに9000シリーズ・コンソールを導入しました。
Abbey Road、Metropolis、Real World、The Record Plantなど、多くの商業レコーディング施設では、現在もなお9000シリーズ・コンソールが使用されています。
・Preamp
SuperAnalogue™設計を採用した9000シリーズでは、デュアルインピーダンス仕様のマイクアンプが導入されました。
このマイクアンプは、高度な回路設計によって、優れた帯域幅、理論上の限界に迫る低ノイズ性能、そして測定が困難なほどの低歪みを実現しています。
これらのコンソールは、比類なき明瞭さと「ハイファイ」と称されるサウンドで高く評価され、チャートを席巻するポップスのヒット曲から、ダイナミックなオーケストラの映画音楽に至るまで、あらゆる録音にとって最適な選択肢となりました。
・Dynamics
9000シリーズのダイナミクスは、従来のSL 4000シリーズ・コンソールと同様の制御方式と時定数アプローチを採用しつつも、Analog Devices SSM 2018 VCAとSuperAnalogue™の設計思想によって、パフォーマンスをさらに刷新しました。
このSuperAnalogue™テクノロジーにより、各チャンネルは100kHzを超える極めて広い周波数特性を備え、20Hz〜20kHzのオーディオ帯域全体にわたって、非常にフラットな位相特性を実現しました。
また、9000シリーズのダイナミクスには、いくつかの新機能も追加されています。
コンプレッサーはPeak検出とRMS(ソフトニー)検出の切り替えが可能になり、エキスパンダーにはHOLDコントロールが追加されました。これによって、ゲートやダウンワード・エキスパンションの精密な管理が可能となったのです。
・EQ
滑らかで開放感のあるサウンドと、極小の位相シフトで定評のあるSSL 9000シリーズEQは、従来のSSL設計よりも高い明瞭さを実現しています。
GシリーズおよびEシリーズのコンソールの伝統を受け継ぎつつ、よりクリーンな音響特性を導入。
ユーザーはG SeriesとE Series、それぞれ異なるEQカーブを切り替えることができ、ソースや音楽スタイル、あるいは過去のSSLコンソールへの慣れに応じて、柔軟にサウンドを調整できました。
先代のモデルと同様に、9000シリーズEQも4バンド・パラメトリック・イコライザーとして設計されました。
G Seriesモードでは、ミッドバンドに可変Qを採用し、高域/低域バンドではシェルビングとベルカーブの切り替えが可能です。
Eスイッチをオンにすると、クラシックな「242 E Series EQ」をベースにした特性へと切り替わります。このモードでは、ミッドバンドが定数Qとなり、高域バンドはG Seriesモードと比べて、よりなだらかなスロープになります。

SSLの“Concorde moment”
9000シリーズは、SSLが追求し続けてきた「音の透明性」を大きく前進させた、画期的なコンソールです。
ミュージシャンとエンジニアの間にある、あらゆる障壁を取り除くために、継続的な技術革新、綿密なコンポーネント選定、そして精密なエンジニアリングを融合させ、比類のないクリアさと深みのあるサウンドを実現しました。
9000 J / Kコンソールは、しばしばSSLにとっての“Concorde moment”=“技術的飛躍を象徴する存在”と称されます。SuperAnalogue™テクノロジーは、SSLのアナログ設計における大きなブレイクスルーを示すものでした。
この革新的な技術は、きらめくような高域、深みのある低域、そしてコントロールルームでその存在を実感できるほどの力強いパンチを特徴とし、極めてクリーンで広大かつ開放的なサウンドをもたらしました。
SuperAnalogue™の設計思想は、現代の音楽における数々の象徴的な名盤を生み出したDuality、AWS、ORIGIN、Oracleといった現代のSSLコンソールにも受け継がれています。

伝説的な9000シリーズにインスパイアされたSSLのNative Channel Strip 2は、9000 Kチャンネルストリップの紛れもないトーンとパワフルな機能セットを、DAWに直接もたらします。
オリジナルの9000シリーズをスタジオスタンダードへと押し上げた、その透き通るような明瞭さ、パンチ、そして柔軟なE/G EQカーブをそのまま再現しています。

2025年に新たに登場したSuper 9000 SuperAnalogue™ Channel Stripは、9Kサウンドの精密さをさらに高いレベルへと引き上げました。
9000シリーズが持つ比類のない奥行きと透明感に加え、SSLのフラッグシップ・コンソールDualityから受け継いだVHD™(Variable Harmonic Drive)テクノロジーも搭載。必要に応じて、豊かな倍音キャラクターやサチュレーションを加えることができます。

9000シリーズのパンチのあるダイナミクスと透き通るようなクリアネスは、Super 9000にもまた欠かせない要素であり、これらの要素すべてがコンパクトな19インチ1Uラックユニットに収められています。
いかがでしたか?
次回は「Duality」コンソールの歴史を紐解いていきましょう。
※本記事の内容は、「THE SSL CHANNEL STRIP GUIDE」の一部を翻訳したものです。
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