採血も点滴もできないCVポートに物申す|大腸がん|ステージ4
思い返せば、去年の3月。
抗がん剤治療のため、私はCVポートを増設した。
鎖骨の下に埋め込まれる小さな機械。
「これから長期戦になりますからね」
「血管を守るために必要です」
そう言われ、覚悟を決めて受けたプチ手術。
そして――
そのポートから流し入れた抗がん剤は、まさかの1クールで終了。
最初で最後の抗がん剤。
ポート、初仕事で即定年。
とはいえ、CVポートというのは使わなくなっても体内に居座り続ける。
存在感だけは一人前だ。
定期的に行われる「ポートフラッシュ」。
生理食塩水を流して、詰まりや感染を防ぐメンテナンス作業。
最初の頃は問題なかった。
針を刺され、生食がスーッと入る。
「あぁ、今日も無事終わったな」と、ちょっとした達成感。
ところがある日から、異変が起き始めた。
生食は問題なく入る。
しかし――
逆血が、ない。
何度確認しても、ない。
毎回、看護師さんが2人がかりでWチェック。
「ん?」「あれ?」と首をかしげ、
最終的には医師が呼ばれるという、ちょっとしたイベント。
そして毎回言われる同じ言葉。
「漏れていないし、スムーズに入ってますね」
「ひとまず問題ないでしょう」
ひとまず、ひとまず、ひとまず。
この“ひとまず”という言葉、
医療現場では万能ワードなのだろうか。
まぁ、問題ないならヨシ。
そう自分に言い聞かせながら、私はポートと静かに共存してきた。
そして今回の入院。
久しぶりに、私のCVポートが日の目を見る時がやってきた。
「今回は、ポートから点滴しますね」
来た。
ついに来た。
お前の出番やで、CVポート。
満を持して針が刺され、点滴の速度が調整される。
……はずだった。
……落ちない。
点滴が、まっっったく落ちない。
あれ?
止まってる?
いや、止まってるというより、最初からやる気がない。
シリンジで勢いよく生食を押し込むと、
「はいはいはい」と素直に入る。
なのに、
点滴のような優しめアプローチになると、
ウンともスンとも言わない。
なに?
強めに来られないと動かないタイプ?
昭和の職人か?
結局、ポートからの点滴はあっさり諦められ、
「じゃあ普通に腕から刺しますね〜」と宣告。
なんやねん!!!
ここぞという時に役立たず。
採血もできない。
点滴もできない。
いや君、何ならできるん?
苦労して造設した意味。
あの手術。
あの覚悟。
あの「これから頑張るぞ」という気持ち。
全部どこ行った。
腕に刺された点滴を見つめながら、
私は心の中で盛大な関西弁ツッコミを炸裂させていた。
そして、ふと頭をよぎる最悪の想像。
まさか……
抜いて、入れ直す手術とか、ないよね?
ね??
お願い、ないって言って。
もう手術はほんまにこりごりやねん。
体内に居座るCVポート。
役には立たないけど、
なぜか妙な存在感だけはある。
どうかこのまま、
「特に何も起こらない厄介な同居人」
として静かに余生を過ごしてほしい。
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