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『魔女の宅急便』を大人になって見返して気づいた、「言葉にしない優しさ」と仕事の価値

先日、『魔女の宅急便』4Kデジタルリマスターを見返しました。
※7月3日より2D全国順次上映開始

子どもの頃から大好きな作品です。
でも、大人になってから観ると、驚くほど視点が変わります。

キキの成長に自分を重ねてしまうのはもちろんですが、今回、私の胸を最も強く打ったのは、彼女を取り巻く大人たちの「優しさの形」でした。

■ グーチョキパン店が体現する「価値」

前回の記事で、すべての仕事は「価値の交換」だと書きました。

その視点で見ると、キキが居候する「グーチョキパン店」は、理想的な価値の交換が行われている美しい場所です。

おそのさんの、底抜けに明るい無償の愛。

見知らぬ街で不安を抱えるキキにとって、あれは強力な「救済」です。
誰もが彼女の包容力に憧れると思います。

ですが、私がそれ以上に強く共感し、惹かれた人物がいます。

夫のフクオさんです。(パン屋の店主))

■ 無言の裏方と、隠しきれない優しさ

彼は作中、ほとんど言葉を発しません。
黙々とパンをこね、窯の火の番をし、物理的に店を支え続けています。

これは確固たる「専門性の提供」であり「労力の肩代わり」です。

私が一番好きなのは、彼の「ソワソワしている姿」です。

キキのために「魔女の宅急便」のパンリースを作った後。
キキが早く帰ってこないかと、やはりソワソワしながら待っている。

トンボが店の外でキキを待っている時。
実は店の中と外で、フクオさんもキキを気にしてソワソワと落ち着きなく外を見ています。

言葉で気の利いた励ましは言えない。
でも、持っている技術を使い、無言で相手の足りないピースを埋める。
そして、「喜んでくれるかな」と不器用にソワソワしてしまう。

この姿に、私は痛いほど共感してしまうのです。

「あなたの行動があまりにも大きな声で語りかけてくるので、あなたの言葉は私には聞こえない」 (ラルフ・ワルド・エマーソン / 思想家)

■ 優しい「価値の交換」で世界は回る

私は普段、音響や映像の現場で「縁の下の力持ち」として裏方の仕事をしています。

表立って目立つことはありません。
でも、誰かがスムーズに動けるように、現場の空気を読み、先回りして準備を整える。
その作業に絶対の価値を感じています。

フクオさんの姿は、裏方として働く人間の一つの理想形です。

表立って目立つことや、饒舌に語ることだけが仕事ではありません。

おそのさんのように、明るさで人を生かす場所を作ることも価値。
フクオさんのように、無言の技術と観察眼で、誰かをそっと支えることも価値。

登場人物たちがそれぞれの持ち物を差し出し、互いに「優しい価値の交換」を行っている。
だからこそ、この作品は何度観ても胸にジーンとくるのだと思います。

私もまた、フクオさんのようにありたい。

言葉以上に自らの行動と徹底した検証を通じて、誰かの無駄を省き、役立つ価値を静かに届けていける「裏方」でありたい。

映画の余韻の中で、自分自身の働き方や役割を、もう一度見つめ直す時間となりました。

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