なんでもかんでも発達障害に見えるとき
1つの疾患についてある程度知ると、何でもかんでも、その疾患に見えるときがある。
精神科医には良くある、「はやり」現象である。

画像:ネタミエ・タイムズ 面白画像 より
若い女性に見えていたもののが、老婆という見え方を一度自覚しまうと、老婆にしか見えなくなる現象に似ている。
若い女性に見ようと思っても、見えなくなってしまったのは、自分の老化も影響しているかもしれない。この「はやり」は、確証バイアスともいわれる。
自分の「はやり」
自分の「はやり」は、時間の流れに沿って列挙すると、
統合失調症
AC(Adult children)、complexPTSD
うつ病
双極性障害
自閉スペクトラム症、ADHD
である。
この現象は、しっかりと自覚しておき、「はやり」の診断を下すときには、極めて慎重に、そして診断基準に誠実に従って診断を下さないと大きな間違いを引き起こしてしまう。
Aさん 20代男性
小学校時より、やや個性的な子で、不器用な面があり一人でいることが多いものの、好きなことに関しては詳しく時に能弁になる。
青年期になったときに、人づきあいが上手くいかなくなり、眠れなくなったり、神経が過敏となったり、被害的になったりする。ときに幻聴が出現するようになった。
こういう人を見たときに、自閉スペクトラム症が「はやり」のときには自閉スペクトラム症にしか見えず、統合失調症が「はやり」のときには統合失調症にしか見えなくなってしまう。
「はやり」に影響されない診断
この診断が重要であるのは、その後の抗精神病薬の使用法に大きく影響するからである。
前者の自閉スペクトラム症であれば、多くの場合 抗精神病薬は比較的少なめで使用し、状態が安定すれば早期に終了を目指すことが多い。後者の統合失調症であれば、抗精神病薬は必要であれば十分量使用し、安定後もほぼ同じ量を長期間継続すべきとされることが多い。
ただし、どちらにしても同様の状態を繰返すときには、統合失調症であろうが、なかろうが、長期服用すべきである。
過剰診断を避ける
正しい知識を身につける努力をしながら、知識をつけることにより過剰診断をしないように気を付けるということが必要である。抗うつ薬が発売され、製薬会社がうつ病の紹介と抗うつ薬の紹介を積極的に行ったことで、うつ病の患者数は飛躍的に伸びた。
気が付かれずに見過ごされていたうつ病が、しっかりと拾い上げられ、治療を受けることができるようになった。
うつ病が過剰診断されるようになり、うつ病として治療をする必要がない人まで治療をしている。
どちらなのかはわからない。前者は良い方向ながら、後者は問題である。過剰診断を避けるように努めるということは、客観的に診断をする手段がない精神科医療においては特に重要である。
「統合失調症と診断されている人のほとんどは発達障害」と言っている精神科医が時々いるものの、この人たちはこの「はやり」にかかり、そのことに気がついていない。
もちろん、
・統合失調症やうつ病と診断され治療が上手くいっていない人の中に、発達障害の人がいる
・Aという病気に詳しい(とされる)医師のところには、Aという病気と診断して欲しい人・家族が集まるため、その医師が見る人におけるAという病気の割合は多くなる
・治療が上手くいっていないときに、病気が違うのではないかと、診断を再度検討しなおすということは大切である
しかし、「ほとんど」はAあるという視点は間違っている。色々な疾患の可能性を考慮しながら、冷静に客観的に診断することが大切であり、自分の「はやり」の疾患であると診断するときには極めて慎重であるべきである。
