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その10秒が、その後の10分を消してくれる。鉄緑高2のエグ問で考える「手を動かす前」の数学

最近、高2の鉄緑生の授業をサポートしていて、ちょっと驚いたことがあります。今の鉄緑会、僕が通っていた頃より明らかに難しくなってる気がする。
「これ、高2で普通にやるのか……」と思う問題が、結構出てきます。

もちろん、昔の問題を全部覚えているわけではないので厳密な比較ではありません。

ただ、高2の段階でこのレベルまで要求されるのを見ると、「高校2年生でここまでやるのは、なかなか気の毒だな……」と思う一方で、大学受験、とくに難関大受験がどんどん激しくなっていることも感じます。

そして、今の鉄緑会の問題を見ていて面白いのが、単純に「難しい計算ができますか?」だけではないことです。

今回の記事で扱う問題もそうです。力技で解こうと思えば、解けます。三角関数の公式を使う。式を展開する。文字を置く。二次方程式にする。判別式を使う。

知っている道具を総動員すれば、答えにはたどり着けます。でも、この問題で僕が面白いと思ったのはそこではありません。

問題を見た瞬間に、「よし、計算しよう」と手を動かすのではなく、「ちょっと待ってよ。そもそも、この式って何を表しているんだ?」と一度立ち止まれるか。

そこを問う問題として見ると、かなり良い問題です。今回は、そんな「計算する前の10秒」について書いてみます。


考えてほしい3つの例題

鉄緑会の問題そのまま載せようと思ったけど、ちょっと変化つけてこんな問題で話をしようと思います。

① $${f(\theta)=a\cos\theta+b\sin\theta}$$
② $${f(\theta)=\sqrt{(\cos\theta+a)^2+(\sin\theta+b)^2}}$$
③ $${f(\theta)=\frac{\sin\theta-b}{\cos\theta-a}}$$

この3つの関数について、最大値・最小値を考えます。
なお、③については、 $${a^2+b^2>1}$$ とします。

この3つについて最大値・最小値を (a,b) を用いて表す問題です。
さて、数学が得意な人は、ここでいったん記事を閉じて考えてみてください。

もちろん計算しても構いません。
ただし、今回考えてほしいのは、「どう計算するか」ではありません。
この3つの式を見て、「何か別のものに見えないか?」を考えてみてください。


数学が苦手な子ほど、すぐ手を動かす

家庭教師をしていると、数学でつまずいている子にかなり共通する行動があります。

問題を読んだ瞬間、とにかく何かを書き始めます。

  • 最大・最小と書いてあれば、「微分かな?」

  • 三角関数があれば、「合成かな?」

  • 平方があれば、「展開してみよう」

  • 分数なら、「とりあえず変形してみよう」

もちろん、手を動かすこと自体が悪いわけではありません。むしろ数学は、手を動かさないと始まらないことも多い。

問題は、何をするか決める前に、手を動かしてしまうことです。

  • 知っている公式を片っ端から試す

  • 式が長くなる

  • 途中で何を求めていたのか分からなくなる

  • 計算ミスする

そして、「この問題、難しい」となる。
でも、本当に計算が難しいのでしょうか。

実は、問題を見る位置が近すぎるだけかもしれません。


①は「三角関数の合成」で終わらせなくていい

まず①です。
$${f(\theta)=a\cos\theta+b\sin\theta}$$

これは高校数学ではおなじみです。
三角関数の合成を使えば、最大値・最小値は求められます。

もちろん、それで正解です。でも、一歩下がって見てみます。

$${(a, b) · (cosθ, sinθ)}$$

これは、固定ベクトル (a,b) と、長さ1のベクトル (cosθ,sinθ) の内積です。
すると「θを動かしたとき、内積がどこまで大きく/小さくなるか」という問題に変わります。

ここで重要なのが、

$${(\cos\theta,\sin\theta)}$$

の長さです。これは常に1。つまり、単位円上をぐるぐる回る長さ1のベクトルです。一方、

$${(a,b)}$$

は固定されています。そう考えると①は、「固定されたベクトルと、向きだけが変わる単位ベクトルとの内積は、どこまで大きくなれるか?」という問題になります。
すると最大値・最小値が、ただの公式の結果ではなくなります。

図として意味が見えてくる。

ここが大事です。


「解ける」と「見えている」は、実はかなり違う

同じ正解でも、

  • 合成公式を覚えていたから解けた

  • 前に似た問題をやったから解けた

  • 式の構造を見て解き方を選べた

これらは、中身がかなり違います。
定期試験なら、最初の2つでも十分点が取れることがあります。

ところが、入試問題になると少し形を変えてきます。
そこで急に手が止まる。

僕が家庭教師で見ていて、「普段の問題は解けるのに、模試になると解けない」という子には、このタイプが結構います。
解法を知らないのではなく、知っている解法と目の前の問題をつなぐ部分が弱い。

だからこそ、問題演習では答えを出すだけではなく、「この式、そもそも何を表している?」と考える習慣をつけてほしいと思っています。


では、②は、最初に何をしますか?

$${f(\theta)=\sqrt{(\cos\theta+a)^2+(\sin\theta+b)^2}}$$

これを見た瞬間、「展開しよう」と思いませんでしたか。

$${\cos^2θ+\sin^2θ=1}$$

が使えそうです。もちろん、それでも進めます。
でも、ちょっと待ってください。

この形、どこかで見たことがありませんか。

平方の和の平方根は、座標平面では『距離』の形でもあります。
ここで、

$${P=(\cos\theta,\sin\theta)}$$

が単位円上を動く点だと気づくと、問題は一気に図形になります。

ポイント
最大・最小を見たら、すぐに『どう計算するか』を考えない。先に『何が動いていて、何が固定されているか』『この式は長さ・距離・内積・傾きとして読めないか』を確認する。

こんな解き方になっていたら、一度立ち止まってほしい

  • 最大・最小を見ると、とりあえず微分する

  • 三角関数を見ると、とりあえず合成する

  • 平方の和を見ると、とりあえず展開する

  • 分数を見ると、とりあえず通分・変形する

  • 答えが出たら、なぜその値が最大・最小なのかは考えない

計算力が足りないのではなく、『問題を見る順番』を変えるだけで伸びる子は少なくありません。

式を見た瞬間に、計算ではなく意味を探すテクニック

ここからは②・③を使って、「式を見た瞬間に、計算ではなく意味を探す」という考え方を、もう少し具体的に掘り下げます。

さらに最後には、グラフを使った解説や、初見問題を見るときに意識している、「手を動かす前のチェックポイント」も整理します。


② ルートの中を展開する前に、距離を疑う

もう一度②を見ます。

$${\sqrt{(\cos\theta+a)^2+(\sin\theta+b)^2}}$$

ここで、

$${P=(\cosθ,\sinθ)}$$

と考えます。するとPはどこにいるでしょうか。

$${\cos^2θ+\sin^2θ=1}$$

なので、Pは単位円上を動いています。そして、平方+平方の平方根。
みたことありますよね。

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