与論島:憲法で酔わされて落ちた話
2009年、奄美大島の皆既日食を見たあと、与論島を旅してたんですよ。
その夜、防波堤から落ちました。
これね、酔ってたんですよ。で、酔ったのにも理由があって。
与論島に「与論献奉」っていうのがあるんです。
読み方、けんぽう。
そう、憲法と、同じ音。
地元の人と仲良くなってね、
「兄ちゃん、与論献奉な」
って言われて、僕、ビビったんですよ。
「け、憲法?」って。
島に、法律あんのかと。
身構えた次の瞬間、朱塗りのでっかい盃に、なみなみ注がれて「いけ」と。
中身、焼酎の回し飲みです。
回し飲みって言うと優しいけど、体感、一気飲みですよ。
最高法規でもなんでもない。
おもてなしの、顔して。
しかもこれ、ほんまに「十カ条」あるんですよ。
ちゃんと明文化されてる。
飲み方に、十カ条て。
で、その十カ条を、何条も可決させられた結果、
僕、防波堤から落ちました。
足滑らせて、コンクリートに、仰向けで、ドン。
背中、強打ですよ。
痛い。
……はずなんですよ。
痛いはずやのに、僕、にやけてたんです。
落ちた先の真上が、満天の星空やったんです。
冗談みたいに、全部見えた。
普通、背中強打したら「いってえ!」でしょ。
僕、「うわ……きれい」ですよ。
脳がバグってる。
痛覚より先に、感動が来た。
体が「痛い」を報告する前に、目が「絶景です」って割り込んできた。
社内の連絡系統、めちゃくちゃ。
しかも僕、その体勢のまま動かんのですよ。
通りすがりの人がおったら、完全に変死体ですよ。
仰向けで、にやけて、ピクリともせん男。
「あの、大丈夫ですか」
「……星が」
会話、成立してへん。
で、後から冷静に思ったんです。
これ、海側に落ちてたら死んでたな、と。
波に飲まれて、星に気づく前に、終わってた。
コンクリートで、正解やったんですよ。
人生で初めてですよ、**「硬い地面でよかった」**って思ったの。
でね、これ与論島やからなんですよ。
東京で酔っ払って転んでみてくださいよ。
見えるの、ゲロと、自分の靴と、終電逃した絶望ですよ。
星なんか一個も見えへん。
与論島は、転んだ場所まで、絶景にしてくる。
献奉で酔わせて、防波堤から落として、星で黙らせる。
全部、島の作戦やったんちゃうか。
ちゃんと痛かったのに。
ちゃんとダサかったのに。
なのに「いい夜やったな」で終わらせてくる。
……まんまと、また行きたいと思ってる。
スターダックトニー
51歳。軽トラに宝箱を積んで、まだ旅の途中です。
旅の続き、スキ&フォローで見届けてもらえたら嬉しいです。
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