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ジャック・ドーシーの理想:アルゴリズムの支配からの解放

アメリカの起業家ジャック・ドーシー(Jack Dorsey)は、SNSサービス「Twitter(現:X)」の共同創業者であり、後に決済サービスを中心としたテクノロジー企業「Block(旧Square)」を立ち上げた人物として広く知られています。本稿では、ノルウェー政府系ファンドCEOであるニコライ・タンゲン氏との対談内容をもとに、ドーシー氏が歩んできた道のりやSNS、起業、ビットコインをめぐる考え方などを解説します。専門的な話題も含みますが、読者の皆様がより理解しやすいように、具体的なエピソードや引用を交えながら構成します。


1. Twitter誕生の背景と成長


1-1. アイデアの原点

ジャック・ドーシー氏が「Twitter」を思いついた背景には、幼少期からの「地図」への関心があると語られています。地図上でタクシーや救急車の位置情報をリアルタイムに把握する“ディスパッチ・システム”を作り上げる中で、「今、街の人々がどこで何をしているのか」を視覚化したいという欲求が高まっていったそうです。

「都市の動きを見ていると、建物や車両は把握できるけれど、人々の行動と考えまでは直接見えてこない。それを知りたいという欲求がTwitterの出発点だったんです。」(ジャック・ドーシー)

1-2. ユーザーとの共創による進化

2006年に「Twitter」が立ち上がり、初期は携帯電話のSMSで気軽に近況を共有できるサービスとして広がりました。しかし、急速に利用者が増えるとユーザー同士が創発的に機能を生み出していきます。たとえば「@ユーザー名」で返信を行い、会話を視覚的につなげる方法や「#ハッシュタグ」で話題を分類する仕組み、さらに「RT(リツイート)」という再投稿の概念まで、ほとんどがユーザーによって自然発生的に生まれました。

「最初は、ただ“自分の近況を共有する”ツールでしたが、ユーザーからの“使い方の発明”によって、予想もしなかった速度で会話の広場へと進化していったんです。」(ジャック・ドーシー)

2. SNSと政治・社会への影響


2-1. オバマ大統領の就任演説をきっかけに

ドーシー氏は、「Twitter」が社会的に大きな存在感を持った瞬間として、バラク・オバマ大統領(当時)がホワイトハウスの記念すべき初期演説を行った際に、上院議員がその様子を“リアルタイムでツイート”したことを挙げています。テレビの生中継に加えて、同時にスマホに飛び込んでくる“生の声”は、国民と政治家との距離感を一気に縮めました。

「テレビで演説を見ていたら、同時に携帯がブザーして、上院議員が演説について投稿していた。抽象的になりがちな政治が急に身近に感じられた瞬間でした。」(ジャック・ドーシー)

2-2. コンテンツモデレーション(投稿管理)の在り方

SNSが、世界各国で政治的発言の舞台となり、情報の真偽や過激な投稿などの問題が表面化しました。ドーシー氏は「“自由な投稿”と“有害情報の拡散”のせめぎ合いは、企業が中央集権的にコントロールするだけでは解決が難しい」と語ります。ユーザーが自身でフィルタリングのルール(アルゴリズム)を選択できる仕組みが重要であり、企業が全てを一括管理するのではなく「SNS自体を一つの“プロトコル”として解放する」発想が不可欠だと示唆しています。

3. 収益化モデルと企業経営のジレンマ


3-1. 広告モデルへの傾倒とその課題

Twitterは、初期に急成長し、ベンチャーキャピタルからの資金調達や株式上場を経て、大規模な“広告モデル”に依存していきました。ドーシー氏によると、当時のインターネットサービスは、「無料アクセス+広告収益」が鉄板のように考えられていたため、Twitterも例外なくその道を選んだとのこと。しかし、それがユーザー体験やプラットフォームの成長に悪影響を及ぼす側面もあったと振り返っています。

「広告モデルを導入することで、どうしてもアルゴリズムが“ユーザー体験”よりも“広告インプレッションの最大化”を優先するようになりがちでした。」(ジャック・ドーシー)

3-2. SNSを、「プロトコル」として捉える試み

ドーシー氏は、「もしTwitterが、企業の完全所有物ではなく、メール(SMTP)やウェブ(HTTP)のように“共通プロトコル”として存在していれば、より柔軟でオープンなエコシステムを築けたのではないか」と指摘します。実際、彼自身が支援する分散型SNS「BlueSky」や、完全にオープンなコミュニティが作り上げつつある「Nostr」というプロトコルには、こうした理想が色濃く反映されています。

「プロトコルのレイヤーを企業が単独で支配しないことで、広告主や政府機関からの圧力にも左右されにくくなります。分散化こそが鍵です。」(ジャック・ドーシー)

4. Block(旧Square)とビットコイン


4-1. Blockの概要

ドーシー氏は、Twitterの後、決済サービスSquareを創業しました。現在は、社名を「Block」に変更し、販売者向けの決済端末や個人間送金アプリ「Cash App」など、幅広い金融サービスを展開しています。

「元々Square(四角)という社名でしたが、ビジネス領域の拡大に伴い“立体化”=Block(ブロック)へと再定義しました。」(ジャック・ドーシー)

4-2. ビットコインがもたらす可能性

Blockにとってビットコインは、単なる投資対象ではなく「オープンな送金プロトコル」としてのポテンシャルが重視されています。国境や既存の金融システムによる制限を超えて、瞬時かつ低コストで価値を移動できるメリットは、SNSやEコマースなどのインターネット・サービス全般にイノベーションをもたらすと考えられています。

「ビットコインは、企業や国家がコントロールするのではなく、インターネットのように誰でも利用できる“オープン基盤”を提供してくれます。これが金融の未来に大きく寄与するでしょう。」(ジャック・ドーシー)

5. 起業家・ジャックドーシーの哲学


5-1. 観察と行動

ドーシー氏は、単に“アイデアを形にする”だけでなく、それを「継続・拡大させる」ために必要となる経営や資金調達、人事など、あらゆるスキルを後付けで学んできたと語っています。その根底には、「まずは徹底的に観察し、必要に応じて行動する」というシンプルな姿勢があります。

「人はすぐに行動しがちですが、本当は“観察”の時間を十分にとることが重要です。周りの状況をしっかり吸収してこそ、直感で動けるようになるのです。」(ジャック・ドーシー)

5-2. 日々の習慣:瞑想と1日1食

時間を有効に使い、自らを律するための方法として、瞑想や1日1食の食生活を実践していることでも有名です。

  • 瞑想:10日間のサイレントリトリートに毎年参加していた時期があり、「痛みや不安、外界からのノイズを客観的に見る力を養える」と語ります。

  • 1日1食:1日3食の慣習を見直し、実際に1食に減らすことで「食事に費やす時間を最低限に抑え、集中力も高まった。味覚を取り戻したようだ」と述べています。

5-3. 「学び方の学習」

さらに近年、ドーシー氏は、語学学習や物理(とくに量子力学)の勉強、プログラミングを並行して学びながら「自分が効率的に学ぶにはどうすればいいのか」を体系化しようと取り組んでいるといいます。複数の学習を同時進行させることで、それぞれに共通するパターンを見つけては反映し、さらなる習熟を目指しているとのことです。

「学習の方法論を構築するのが面白いんです。極端な方法を試してみることで、その先にしかない気づきがある。」(ジャック・ドーシー)

6. 今後のSNSとテクノロジーの行方


6-1. アルゴリズムの選択とエージェント化

SNSが発展する上でのキーワードとして、ドーシー氏は、「ユーザー自身がアルゴリズムを選択またはカスタマイズできる仕組み」を重視しています。投稿が膨大化し、生成AI(チャットボットや自動応答プログラム)も含めて多くの情報が混在するなか、自分が本当に求める情報だけを取得できる仕組みが重要になるというわけです。将来的には「エージェント」と呼ばれる自律的なプログラム同士がインターネット上で協調・交渉し合い、ユーザーの代わりに情報を集める時代が来ると見通します。

6-2. 分散型プロトコルの普及

Twitterのような1社が管理する巨大プラットフォームではなく、誰もがアクセスできる共通プロトコル上に複数のサービスが並立する形が理想とされています。BlueSkyやNostr、さらに他の分散型SNSプロジェクトが、こうしたビジョンを具現化しようとしている現状は今後も注目に値します。

「各国の規制が断片化し、会社による全体統制が難しくなるほどに、オープンプロトコルによる分散型モデルの意義が増してくるはずです。」(ジャック・ドーシー)

ジャック・ドーシー氏は、幼少期の興味からSNSの世界を切り拓き、その過程で分散型インターネットやビットコインの可能性に目を向けてきた起業家です。彼の思考は、常に「オープン性」、「ユーザーの主体性」、「学び続ける姿勢」という要素に支えられています。Twitterを通じて得た学びをもとに、Blockや分散型SNSの支援を行い、未来のテクノロジーインフラを模索し続けるその姿は、私たちに新たなイノベーションの方向性を示唆しているといえるでしょう。

「企業がコントロールしないオープンプロトコルを軸に、人々の創意工夫でサービスを育てていくことが、SNSや金融の真の可能性を開花させる道だと信じています。」(ジャック・ドーシー)

今後も、分散化やビットコインのようなオープンプロトコルがどのように社会に浸透し、私たちの暮らしやコミュニケーション、ビジネスを変えていくのか、一層注目が集まります。ドーシー氏の軌跡と思想は、その大きな変革の一端を担う貴重な手がかりといえるでしょう。


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