2025.06.24 注目の海外スタートアップの資金調達5選
専門サービス領域に特化したAI・ブロックチェーンスタートアップの資金調達が相次ぎ、法務、ヘルスケア、防衛、金融インフラ、そして電気工学向けコラボレーションといった多様なニッチ市場で評価額が急上昇しています。本稿では、2025年6月に注目を集めたHarvey AI、Abridge、Onebrief、Digital Assetに加え、新たに電気工学チーム向けプラットフォームAllSpiceの資金調達動向をまとめ、調達額・評価額・資金使途・事業成長のポイントを具体例や引用を交えて解説します。
1. 法務AI分野の急成長:Harvey AIがシリーズEで3億ドル調達、評価額50億ドルに
Harvey AIは、法務業務自動化を支援するスタートアップで、2025年6月にシリーズEで3億ドルを調達し、評価額は50億ドルに到達しました。当ラウンドは、Kleiner PerkinsとCoatueが共同リードし、Conviction、Elad Gil、OpenAI Startup Fund、Sequoiaなど既存投資家も参加しました。わずか4カ月前にはSequoia主導のシリーズDで3億ドルを調達し、当時の評価額は30億ドルでした。
同社は340名の従業員を擁し、本資金で人員を倍増するとともに、税務会計など法務以外のプロフェッショナルサービス向け製品開発を加速させる計画です。2025年4月時点の年換算売上高は7500万ドルに達し、年初の5000万ドルから約50%増と急速に成長しています。
2. ヘルスケアAIの最前線:Abridgeが3億ドル調達、評価額53億ドル
Pittsburgh拠点のヘルスケアAIスタートアップAbridgeは、診療記録作成の自動化を提供し、2025年6月のラウンドで3億ドルを調達、評価額は53億ドルに達しました。ラウンドは、Andreessen Horowitz(A16z)がリードし、Khosla Venturesも参加しています。
同社は臨床ノートや医療会話の自動記録・文書化技術を展開し、150以上の大手医療システムと提携して臨床作業の効率化と収益サイクル改善に貢献しています。また、今年初めにはElad Gil主導で2.5億ドルを調達しており、昨年の1.5億ドル調達時の評価額8.5億ドルから大幅に拡大しました。
3. 防衛技術市場を牽引:OnebriefがシリーズC延長で2000万ドル調達、評価額11億ドル超
ホノルル拠点のディフェンステックスタートアップOnebriefは、軍事作戦計画の自動化プラットフォームを提供し、2025年6月にBattery Ventures主導のシリーズCエクステンションで2000万ドルを調達、評価額は11億ドルを突破しました。
このラウンドにより累計調達額は1.2億ドル超となり、AnthropicのClaudeを活用したAIモデルで世界最大規模の作戦計画の策定にも採用されています。
創業者でCEOのGrant Demaree氏は「運用利用率が約19,600%の成長を示した」と述べ、米軍大規模作戦での同社プラットフォームの不可欠性を強調しました。防衛技術分野へのVC投資は2024年に前年同期比33%増の310億ドルに達しており、本ラウンドはその好調さを反映しています。
4. 機関投資家が支持:Digital AssetがCanton Network拡大のため1.35億ドル調達
ブロックチェーンスタートアップDigital Assetは、公開型ブロックチェーン「Canton Network」の拡張を目指し、2025年6月に1.35億ドルを調達しました。調達ラウンドには、Goldman Sachs、Citadel Securities、BNP Paribas、IMC、Optiver、Virtu Financial、DTCCなど30社以上が参加し、Cantonのガバナンスに名を連ねています。
Canton Networkは、プライバシー設定が柔軟なLayer 1ネットワークで、債券、マネーマーケットファンド、コモディティなど数百億ドル規模の現実世界資産(RWA)のトークン化を推進しています。CEOのYuval Rooz氏は「これによりブロックチェーンの本来の可能性を機関規模で実現できる」とコメントしています。
5. 電気工学チーム向けコラボレーション:AllSpiceがシリーズAで1500万ドル調達
電気ハードウェア設計向けコラボレーションプラットフォームAllSpiceは、PCBファイルや電子CADファイル上でコメントやレビューが行えるツールを提供し、「電気工学版GitHub」として注目を浴びています 。CEOのValentina Ratner氏とCTOのKyle Dumont氏は、AmazonやiRobotでの業務経験から得たペインポイントを解決するため、2022年に製品をローンチし、Blue Origin、Bose、Tools for Humanityなど大手企業を顧客に獲得しました 。
2025年6月にRethink Impact主導で1500万ドルのシリーズAを実施し、L’attitude Ventures、Gingerbread Capital、DNX Venturesなど既存投資家も参加しました。調達資金はエンジニア採用と製品強化に充てられ、特にAIエージェント機能による設計検証とエラー検出ツールの開発に注力します。Ratner氏は「ハードウェアのミスはソフトウェア以上にコストが高く、業界に合った正確性が求められる」と述べ、クローズドベータで既存パートナーとともに精度検証を進めています。
以上、Harvey AI、Abridge、Onebrief、Digital Asset、AllSpiceの5社を取り上げました。各社は専門領域でのPoCを経て実運用で成果を示し、投資家の信頼を勝ち取ることで大型調達と急速な評価額向上を実現しています。今後も各社の動向と、それぞれの技術が生み出す業務効率化や新サービス創出に注目が集まるでしょう。
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