Meta、画像生成AI「Muse Image」公開 ― Instagram公開アカウントの写真利用に批判噴出
2026年7月7日、Metaは、新たな画像生成AI「Muse Image」を公開しました。同社のAI研究部門であるMeta Superintelligence Labsが開発した製品で、Meta AIアプリのほか、InstagramのストーリーズやWhatsAppでも利用可能になっています。しかし、発表直後から、公開アカウントの写真が本人の明確な同意なしにAI生成に利用される仕様をめぐって、ユーザーからの反発が広がっています。本稿では、TechCrunchをはじめとする複数の報道をもとに、Muse Imageの機能概要と、そこで浮かび上がった論点を整理します。
1. Muse Imageの基本機能
Muse Imageは、社内でMangoというコードネームで開発されていたモデルで、Meta AIアプリを通じて、無料で利用できるほか、Instagramストーリーズ、WhatsAppにも統合されています。テキストプロンプトによる画像生成に加え、既存写真の編集機能も備えており、Metaは、「歴史的建造物の前にいる自分の画像を作る、写真から通行人を消す、機能するQRコードを作る、といった使い方ができる」と説明しています。
用途としては、広告制作や、Facebook Marketplaceと連携したインテリアの試し置きシミュレーションなどが紹介されました。基本利用は、「日常的な作成」であれば無料とされていますが、一定の利用量を超えると同社のサブスクリプションプランへの加入が必要になります。また、Instagramストーリーズ向けには、Muse Imageを活用した30種類以上の新しいAIエフェクトも同時に展開されています。
2. 公開アカウントの写真利用をめぐる論点
2-1. @メンションによる他人の写真の利用
今回最も注目を集めたのが、Instagramの公開アカウントを@メンションすることで、その人物の写真をAI生成の参照素材として利用できる機能です。TechCrunchによれば、The Vergeがこの仕様の潜在的な問題点を指摘した後、あるX(旧Twitter)ユーザーは、「本人の明確な同意なしに実在のユーザーを生成画像に取り込むのは、いつ爆発してもおかしくないプライバシーの地雷だ」とコメントしています。
2-2. デフォルトでオプトインとなっている設計
複数の報道によれば、この機能は公開アカウントであればデフォルトで有効になっており、無効化するにはユーザー自身が設定を変更する必要があります。オプトアウトの手順は、Instagramのプロフィールから設定メニューに進み、「共有と再利用」の項目で投稿とリールに関する項目をオフにするというものです。ただし、既に生成済みの画像については、後からオプトアウトしても削除されない点も指摘されています。
Meta自身のポリシーページにも「あなたはMetaのAI機能を使って作成されたコンテンツについて通知を受けることはありません」との記載があり、本人が知らないうちに自分の顔を使った画像が生成される可能性がある点が懸念材料として挙げられています。
3. Meta Superintelligence Labsの位置づけ
Muse Imageは、Chief AI Officerを務めるAlexandr Wang氏が率いるMeta Superintelligence Labsにとって、4月に発表した言語モデル「Muse Spark」に続く2つ目の主要リリースとなります。同研究所は、OpenAIやGoogleといった競合とのAI開発競争でMetaの遅れを取り戻すために設立された組織と位置付けられています。
社内ベンチマークでは、Muse Imageは、Googleの「Nano Banana」を上回る一方、OpenAIの画像生成モデルにはやや及ばないとされています。生成された画像にはすべて目に見えない透かしが付与され、利用規約に違反するコンテンツを防ぐためのガードレールも組み込まれているとMetaは説明しています。
4. Metaのプライバシー対応をめぐる背景
Metaは、過去にも、2019年にケンブリッジ・アナリティカ問題を受けて当時としては過去最高額となる50億ドルの制裁金をFTCから科された経緯があります。今回のMuse Imageをめぐる懸念も、こうした過去の経緯が背景にあるとの指摘が報道の中で見られました。また、Metaは、社員の業務活動をAI訓練データとして収集する取り組みを一時実施していましたが、社内で機密情報が広く閲覧可能になるプライバシー上の問題が発生し、プログラムを一時停止したことも明らかになっています。
Metaは、今後、Muse ImageをFacebookやMessengerにも展開する計画を示しており、広告主向けにはAdvantage+を通じた活用も予定されています。また、動画生成モデル「Muse Video」も開発中であることが明らかにされました。
