固定収入の黄金時代到来!高金利環境で機会を捉えるBlackRock流投資戦略
米国をはじめとする先進国での金利上昇を背景に、「固定収入の黄金時代(The Golden Age of Income)」と呼ぶべき環境が到来しています。本記事では、BlackRockの戦略型インカムオポチュニティーズ・ファンド(約410億ドル運用)共同運用責任者のRuss Brownback氏へのインタビューをもとに、現在の固定収入市場を読み解き、「リスクではなく機会を捉える」ための具体的投資戦略を、数字や引用を交えて解説します。
1. 固定収入の“黄金時代”とは何か
1-1. 黄金時代の定義と主要数値
Russ氏は冒頭で「we’re calling it the golden age of fixed income(固定収入の黄金時代と呼んでいる)」と宣言。実際、2025年4月末時点の30年物米国債利回りは、4.66%→5.08%へ急上昇し、数十年ぶりの高水準を記録しています。
「1980年代初頭には10年債で16%超、パンデミック時には0.60%へ低下した市場が、再び高利回り環境に戻った」とRuss氏
1-2. 債券市場の動揺と金・ビットコインの躍動
長期国債ETF(iShares 20+ Year Treasury Bond)は、1週間で約6%の下落を記録。Russ氏は、「この売りは米議会の財政協議が引き金」と分析しつつ、同時期にゴールドは上昇、ビットコインは約17%の急騰で一時11万ドル超をマークした点を指摘します。
「投資家は安全資産として国債を売り、ビットコインを買う――奇異に見えるが、収益追求の本能が映し出された動きだ」
さらに、McQuary氏のレポートを引用し、
「米財政赤字が削減されなくてもデフォルトは回避されるかもしれないが、赤字の大きさは債券供給の増加と将来的なインフレ圧力を示唆する」
として、「名目固定収入商品は高い利回りという形で投資家に報酬をもたらす」と捉え直す重要性を説いています。
2. 現行の金利環境での投資戦略
2-1. イールドカーブのフラット化を活かす
現在のイールドカーブは、短期〜長期で利回り差が縮小し、いわゆる「フラット化」状態。Russ氏は、「フロント〜ベリー(1〜10年)で厚みを取れば、長期債並みの利回りを確保しつつ、価格変動リスクを大幅に抑制できる」と説明します。
「高い利回りと低いボラティリティのバランスが、リスク調整後リターン(シャープレシオ)向上の鍵だ」
2-1-1. 過去からの移り変わり
1980年代:10年債16%超の時代、金利低下による価格上昇が債券投資の大きな追い風
2010年代〜パンデミック前:超低金利下で債券はヘッジ手段としての役割を強化
現在:利回りが高止まりする中、方向性ベットよりも利回り獲得(Carry Harvest)が主戦場に
2-2. キャリーブレイクイーブンの指標
Russ氏が重視する「キャリーブレイクイーブン」とは、
「1年間のキャリー(利息収入)で、どこまでの価格下落を吸収できるか」
を示す指標です。高利回り環境下では、フロント〜ベリーで得られるキャリーが1年以上かかる価格下落分を相殺するため、「固定収入を真のインカム源泉として評価すべき」と強調します。
3. クレジット市場の魅力
3-1. 投資適格債 vs BB級ハイイールド
投資適格債(IG):AAA〜BBB格付けが中心だが、テクニカルは既に底堅い
BB級ハイイールド(HY):指数構成比が20年前の35%→現在50%超へ増加し、
「高品質BB銘柄が増え、配当利回り6.5〜7%×長期ボラティリティ3%未満という最適リスク・リターンを実現」
コーポレートクレジットのファンダメンタルズに関しても「企業業績は概ね良好で、財務健全性も高い」と評価しています。
3-2. 証券化資産の多様性
エージェンシーMBS:政府保証付きで流動性が高く、名目スプレッドが割安
非エージェンシーMBS/CMBS/ABS/プライベート消費者ローン:
「イールドと分散効果を同時に享受できる」多彩な収益機会
モーゲージ市場は、ネガティブコンベックス(早期償還リスク)を織り込む必要がありますが、現在のプレミアム水準は十分と判断しています。
4. 債券と株式の最適ポートフォリオ構築
4-1. 60/40ポートフォリオの再定義
従来の「株式:リターン、債券:ヘッジ」モデルは、
「今年に入り株式と長期国債が同時下落する局面が複数回発生し、デュレーションのヘッジ機能が一部失われた」
として再考が必要に。「価格リスクではなく、キャッシュフローとしての収入源泉に注目」し、短期〜中期債+クレジット/証券化資産で安定収入を確保した上で、株式への成長投資を図るアロケーションを提案します。
4-2. 米国経済とAIの追い風
Russ氏は、「米国経済と株式市場に強気」とし、
「AIの生産性向上効果が今後5年間で企業収益率を押し上げる」
ことを挙げています。若年投資家へは、
「S&P500は、10年レンジで5,000~10,000と予想。100ポイントの上げ下げで慌てず、長期投資を優先せよ」
と助言しています。
5. 為替・ドルの考慮事項
5-1. ドルの基軸通貨としての地位
世界貿易の約75%がドル建て、
80%超の貿易金融もドル建て(BIS調査)、
という構造的優位性を保持。
「短期的なドル安はあっても、基軸通貨としての地位は数十年単位で変わらない」と断言します。為替リスクに過度に怯えるのではなく、主要資産の一部として冷静に組み込む姿勢が求められます。
本稿では、Russ Brownback氏へのインタビューをもとに、「固定収入の黄金時代」という高利回り環境をリスクではなく機会と捉え、以下のポイントを提示しました。
イールドカーブのフラット化をフロント〜ベリーで活用
キャリーブレイクイーブン指標で収入強度を数値化
ハイイールドBB級&証券化資産で収益と分散を両立
60/40ポートフォリオの再定義—ヘッジからインカム重視へ
米国経済とAIの成長期待を背景に株式と併用
ドル安・為替リスクは構造的優位性を踏まえて適度に許容
「極端なバイナリ思考(全債券 or 全他資産)」を避け、小刻みに分散された高利回り収入を確保することで、安定的かつ収益性の高いポートフォリオが実現します。これまで低金利環境で債券市場を敬遠していた投資家にとって、再評価・再参入の好機と言えるでしょう。

