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AIは“産業革命の10倍×10倍速”で来る——DeepMind CEOが語る次の勝負所

生成AIブームは「チャットボットの流行」では終わらない——。Google DeepMindのCEO、デミス・ハサビスは、この変化を「産業革命の10倍の規模で、10倍のスピード」と表現する。

この発言の背景には、(1)大規模モデルの“伸び”はまだ続いている、(2)ただし、現行のLLMだけでは“汎用知能”に届かない、(3)世界を理解する「ワールドモデル」が鍵になる——という現場感がある。本稿では、インタビューの要点を「投資家・ビジネス目線」で噛み砕く。


1. DeepMindはGoogleの「AIエンジンルーム」になった


DeepMindは、2010年にロンドンで創業し、2014年にGoogleが買収した。買収額は約4億ポンドと広く報じられている。

もともとは、“科学の難問”を解く研究色が強く、象徴的なのが囲碁AI「AlphaGo」とタンパク質構造予測「AlphaFold」だ。AlphaGoが、2016年に李世ドル九段に勝利したことは、ゲームAIの枠を超え「この手法で科学の難問にも挑める」という転換点になった。
そして、AlphaFoldは、タンパク質構造という長年の課題を大きく前進させ、創薬を含む幅広い研究に波及していく。

ポイントは、DeepMindが、単なる研究所ではなく、Google全体にAIを“拡散”させる中枢になったことだ。ハサビス自身「(Sundar Pichaiと)ほぼ毎日話す」と語り、モデルが出れば検索や各プロダクトに素早く載る“短い反復ループ”を強調している(=研究とプロダクトの距離が縮んだ)。

2. 「スケーリングは効いている」—でも“ギザギザ知能”は残る


インタビューで印象的なのは、スケーリング則(計算資源・データ・モデル規模を増やすほど性能が上がる)が「まだ効いている」としつつ、伸びが“以前ほど爆速ではない”現実も認めた点だ。
彼は、現行チャットボットを「jagged intelligences(ギザギザの知能)」と呼ぶ。ある領域では驚異的でも、聞き方を変えると急に脆くなり、一貫性や継続学習、長期計画、真に新しい仮説の創出が弱い。

2-1. “ノーベル級の新仮説”が出ない理由

彼の問題意識は明確だ。「既存の問いに答える」だけでなく、科学者のように「世界の仕組みについて新しい仮説を立て、頭の中で検証する」能力が不足している。だからこそ、LLMの延長に加えて「別のブレイクスルーが1〜2個必要」と見る。

3. 次の主役は「ワールドモデル」—LLMと“収束”する


ワールドモデルとは、テキストのうまさではなく、因果・物理・時間の理解に寄ったモデルだ。ハサビスは、LLM(基盤モデル)を中核にしつつ、ワールドモデル系の能力が加わって「技術が収束(convergence)する」未来像を語る。

DeepMindは、具体例として、インタラクティブ環境を生成するGenie系(Genie 2/3)や、動画生成モデルVeoを挙げている。これらは、「現実らしい世界を生成できるなら、逆に“理解”があるはず」という発想で、ロボティクスやエージェントの訓練にも繋がる。

示唆:検索・広告・業務支援の“言語AI”に、行動・計画・シミュレーションが合体すると、価値の中心は「会話」から「自律的にやり遂げる」へ移る。

4. ボトルネックは電力—しかしAIが“供給側”も押し上げる


AGIに近づくほど、計算資源は最終的にエネルギー制約に突き当たる。ハサビスは「AIがエネルギー問題を悪化させる」だけでなく、材料設計・新技術(核融合など)で解決にも寄与し得ると述べる。実際にDeepMindは、Commonwealth Fusion Systemsと提携し、核融合の制御・シミュレーション等にAIを使う計画を公表している。

同時に、モデル自体も蒸留などで“ワット当たり性能”を上げる(大モデルが小モデルを教え、現場は軽量版が回る)。ここは投資家目線だと、電力×半導体×モデル効率が、AI覇権の「資本戦」そのものになる。

5. 産業革命の10倍の“変革と摩擦”に備える


ハサビスは、AIを「人類史上、最も恩恵の大きい技術になり得る」と語る一方で、リスクを2つに整理する。
(1)悪用(bad actors)
(2)より自律的なエージェントが出てくる時の制御(ガードレール)
そして、理想は慎重な科学プロジェクトでも、現実には企業・国家の「レース」があるため、責任あるスピードを模索するしかない——という“現実主義”も滲む。

結論


「スケールはまだ効く。しかし“世界を理解する力”が足りない」。この診断が正しいなら、2026年以降の本命テーマは、チャットの改善ではなく、ワールドモデル×エージェント×省電力化の三位一体だ。ハサビスが言う「5〜10年」という射程が当たるかどうかは別として、企業戦略としては“産業革命級”の波に備えたほうが合理的だ。

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